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TOPICS~病気・治療法の解説~

学際的痛み治療センターについて  ペインクリニック科 福井 聖

慢性の痛みについて

 痛みは様々な要因で発生し、痛みが長く続くと身体の機能だけでなく、心理面、社会面への影響も出てきます。また、身体的要因に加えて、心理的要素や社会的要素が加われば、治療を難しくするといわれています(図1)。そのため、慢性の痛みに対しては、いろいろな角度から診察して治療方針を考える方がよいといわれています。

 慢性の痛みは、精神的な苦悩を伴い、生活の質を損なうことになります。仕事への復帰が困難になるなど、医療経済的な面にも影響を及ぼし、社会的に大きな損失の原因にもなっています。日本では高齢化社会が急速に進んでおり、今後痛み治療が医療において重要な位置を占めると考えられています。

 現在、国民の約20%が何らかの慢性的な痛みを抱え、休職などによる経済的損失は年間1兆8000億円超とも試算されています。国策として、痛みの診療システムの確立に取り組み、医療のレベルを上げていく認識が高まり、欧米諸国では、各領域の専門家が集まって診断・治療を行う学際的痛み治療センターが各地域に配置され、費用対効果、経済への効果も含めて、その有用性が証明されています。

学際的痛み治療センターとは

 痛み治療のエキスパートが、痛みの身体的、心理的、社会的な相互関係を多方面から評価し、各専門医学領域と連携して、カンファレンスを行い、患者さん一人一人に適した治療を選択するといった集学的なアプローチを行っていくことを目的としており、総合的に体と心の痛みを緩和して、生活の質(QOL)を向上することを目指しています(図2)。

 平成23年度から始まった、厚生労働省の「慢性の痛み対策研究事業」の指定研究では、滋賀医大病院を含めた全国11大学病院を拠点に、慢性痛の治療に対して、診療科を横断した学際的な痛み治療センターを構築することが求められています。この指定研究は厚生労働省の諮問により平成22年にまとめられた指針『今後の慢性の痛み対策について』に基づくもので、欧米先進諸国と比べて遅れている日本の痛みの医療の状況を改善することを目的としています。拠点病院を中心に設立された痛みセンター協議会でも、慢性の痛みの課題を整理し、対応策を協議しています。滋賀医大病院としても、質の高い医療の提供として、「痛みの緩和」医療を推進しています。

 具体的には、麻酔科、ペインクリニック科、整形外科、リハビリテーション科などの医師や臨床心理士、理学療法士などメディカルスタッフと共に慢性痛医療チームを作り、定期的に開催されるカンファレンスを通じて密接に協力しつつ「痛み治療センター」による診療を機能させていきます。

学際的痛み治療センターでの治療

 滋賀医大病院でも、麻酔科医、ペインクリニック医、整形外科医、脊椎外科医、リハビリテーション医、産業衛生医、基礎医科学者、看護師、理学療法士、臨床心理士など多職種が連携して診察し、カンファレンスで治療方針を考える「痛みの学際的カンファレンス」を行っています。この治療方針を参考に、今までの外来担当医が、理学療法士、臨床心理士などと連携しながら診療を引き続き行っています(図2)。

 痛みの診断と治療には問診票はとても重要な意味を持ちます。最初に、大変多くの問診票をお渡ししますが、診察のため、また、今後どの程度効果があるかを確認するために是非とも必要なものですので、大変お手数をおかけしますが、ご協力のほどお願いいたします。

 痛み治療センターでは、慢性の腰痛、頚肩腕痛、帯状疱疹後神経痛など各種神経痛、手術後の痛み、また原因がはっきりしない痛み、慢性的な痛み全般を治療対象にしています。

 慢性の痛みの治療目標は、生活の質(QOL)、日常生活動作(ADL)を向上することです。理学療法士による理学療法、臨床心理士による心理療法を加えたチーム医療を行うことで、健康寿命を延ばすことや社会復帰することへのサポートを行っています。

理学療法士による運動療法

 痛みにはさまざまな原因となる組織があります。筋肉だったり、関節だったり、筋膜だったり神経だったり…。長年の生活習慣や痛みによって、気づいていない身体の癖、不良動作、不良な姿勢が日常の中で繰り返されることにより、筋肉の硬さや弱さのバランスを崩し、筋肉、関節に負担をかけ、さらなる痛みの原因となっているといった患者さんが多く認められます。

 そのような患者さんには、丁寧な身体評価によってその原因を特定し、安全かつ効果的な運動療法で、日常生活での体の使い方、正しい動き、姿勢を習得し、異常な動作パターンを改善する必要があります。また、ご家庭で行うことのできる予防にも重点を置いた運動療法の指導も行っています。

 このような運動療法では、自分でどのようにすれば悩みの元が改善されるのか配慮できるようになります。また、このようなアプローチは、患者さんが自信を取り戻すことにもつながるといったことが、わかってきました。

臨床心理士による認知行動療法

 慢性の痛みは、身体的要因、心理的要因、社会的要因が複雑に絡み合っていますが、そのなかでも「痛むから動かしたくない」といった心理的要因が大きなウェートを占めています。また、全ての患者さんが、現在の治療で完全に痛みから解放されるわけではありません。我々スタッフの願いは、痛みはあっても、患者さんが「やりたい」と思うことを少しでもできるようになることです。患者さんに活き活きと豊かな生活を送ってもらうことのサポートを行っています。

 平成26年からは、疼痛教室(こころとからだのストレッチ)を開催して、痛みと心と体のしくみを理解していただくことを始める予定です。教室を通じて心理的要因を改善し、患者さんのQOL向上を図っていくことが重要と考えています。

 痛みがあっても困らない、生きがいのある生活。これこそが私たちのめざす最終的なゴールです。