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TOPICS~病気・治療法の解説~

ロコモティブ症候群  整形外科 今井 晋二

ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)

 ロコモティブシンドロームとは「運動器の障害」により「要介護になる」リスクの高い状態になることです。日本整形外科学会が、2007年(平成19年)に、新たに提唱しました。「ロコモ」の提唱には、「人間は運動器に支えられて生きている。運動器の健康には、医学的評価と対策が重要であるということを日々意識してほしい」とのメッセージが込められています。

運動器(locomotive organs)

 運動器とは、骨・関節・靱帯、脊椎・脊髄、筋肉・腱、末梢神経など、体を支え(支持)、動かす(運動・移動)役割をする器官の総称です。

ロコモの原因

 運動器の障害の原因には、大きく分けて、「運動器自体の疾患」と「加齢による運動器機能不全」があります。

(1)運動器自体の疾患(筋骨格運動器系)
 加齢に伴う、様々な運動器疾患。たとえば変形性関節症、骨粗鬆症に伴う円背(背中が丸くなる症状)、易骨折性(軽微な外傷による骨折)、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症など。あるいは関節リウマチなどでは、痛み、関節可動域制限、筋力低下、麻痺、骨折、痙性(自分の意思と関係なく体が勝手に動くこと)などにより、バランス能力、体力、移動能力の低下をきたします。変形性関節症と、骨粗鬆症に限っても、推計患者数は4700万人(男性2100万人、女性2600万人)とされています。ロコモはまさしく国民病といってよいでしょう。

(2)加齢による運動器機能不全
 加齢により、身体機能は衰えます。筋力や持久力、運動速度の低下、反応時間延長、巧緻性(手先の器用さ)低下、深部感覚(皮膚より深い部分の筋肉や腱などにある、手足や身体の位置・運動・抵抗・痛み・重さなどの感覚)低下、バランス能力低下などがあげられます。閉じこもりなどで、運動不足になると、筋力やバランス能力の低下などとともに「運動機能の低下」が起こり、容易に転倒しやすくなります。

「ロコモ」と「メタボ」

 ロコモは、メタボや認知症と並び、「健康寿命の短縮」、「寝たきりや要介護状態」の3大要因のひとつになっています。ご高齢の方は、加齢や運動不足に伴う身体機能の低下や運動器疾患による痛み、易骨折性など、多様な要因があいまって、いわば負の連鎖により、バランス能力、体力、移動能力の低下をきたし、ついには、立って歩く、衣服の着脱やトイレなど、最低限の日常生活動作(ADL)さえも自立して行えなくなり、「健康寿命の短縮」、閉じこもり、廃用症候群や、寝たきりなどの「要介護状態」になっていきます。

「要介護」とADL(Activities of Daily Living:日常生活動作)

 ADLのAはアクティビティー(activity)で動作、DLはデイリーリビング(daily living)で日常生活の意味。直訳すれば、「日常生活のいろいろな動作」です。例えば、寝起きや移動、トイレや入浴、食事、着替えなど、日常生活を送るのに「最低限必要な、日常的な動作」のことです。高齢者や障害者の身体能力、障害の程度をはかる重要な指標となっています。介護保険制度では、これらの動作一つ一つを、「できる、できない」で調査し、その結果をみて、その人に必要な介護レベルを決めています。「できない」ことが多いと要介護状態が高いと判定されます。「できない」が少なければ、日常生活動作が自立していて「通常の日常生活が送れる」と誤解される場合がありますが、この場合の「できる」はあくまで「日常生活を送るための最低限の動作」を指しています。

「ロコモ」と「要介護」

 「要支援・要介護」の原因の第一位は関節疾患や骨折・転倒などの運動器障害です。ロコモは放っておくと「運動器障害」として「要支援・要介護」へとつながる全身病なのです。

「ロコモティブ シンドローム」と「運動器不安定症」のちがい

 運動器不安定症は、「転倒リスクが高まった運動器疾患」といえます。具体的には、65歳以上であること、運動機能低下をきたす疾患(またはその既往症)が存在すること、日常生活自立度判定が、ランクJ(生活自立)またはA(準寝たきり)であること、運動機能評価テストの項目を満たすことが条件です。ロコモティブシンドロームは、より広い疾患概念です。「運動器の機能不全」のみならず、「要介護リスク」が高まった状態をさします。たとえば「階段を昇るのに手すりが必要である、支えなしには椅子から立ち上がれない、15分くらい続けて歩けない、転倒への不安が大きい、この1年間で転んだことがある、片足立ちで靴下がはけない、横断歩道を青信号で渡りきれない、家のなかでつまずいたり滑ったりする」場合などが含まれます。

ロコチェック

 

 高齢者のtotal healthの観点からは、幅広い対応策が必要です。年をとって、寝たきりや痴呆になって、要介護となることはできるだけ避けたいものです。これらの「健康寿命の延伸」、「生活機能低下の防止」には、予防、早期発見・早期治療が重要です。

 あなたがロコモティブシンドロームかどうか、チェックしてみましょう。左の7項目が目安とされています。これらの項目は、バランス能力や筋力、歩行能力や持久力をチェックするもので、1つでも当てはまればロコモの心配があると考えられます。整形外科医による正しい診断をお勧めします。