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TOPICS~病気・治療法の解説~

腹腔鏡の手術について  消化器外科  谷 眞至

腹腔鏡手術とは

 現在はエコー検査やCT、MRIなどの画像診断撮影装置が発達し、腹腔内(おなかの中)を観察しなくても非常に多くの情報を得ることができます。しかし、昔はそのような機械がなかったので、腹腔内を直接観察する機器として腹腔鏡は開発されました。

 1902年にドイツで犬の腹腔内を観察されたことが報告されています。また、観察のみに留まらず組織を採取し病理検査を行うことにも用いられるようになってきました。その後、診断装置の進歩や、経皮的肝生検(体外から針を刺して組織を採取する検査)の発達に伴い、検査として行われることは減ってきましたが、手術に使用できる鉗子や器具の開発に伴い、腹腔鏡を手術に応用できることがわかり、日本では1990年に胆のう摘出術が施行されました。胆のう摘出術は1992年には保険適用となり、腹腔鏡手術は広く全国に広まり、胆のうだけでなく多くの臓器の手術に応用されています。最近は「小さな創の手術」「内視鏡下手術」「鏡視下手術」「穴を開けて行う手術」などの名前で紹介されることもあります。

腹腔鏡手術の方法

 腹腔内は通常大きな空間はありません。そこで、腹腔内に炭酸ガスを入れお腹を膨らませます。これを気腹といいます。

 腹腔鏡手術は数か所に5から10mmの穴をあけ、そこからカメラ(腹腔鏡)と手術操作に使用する鉗子を挿入します。腹腔内の状態はカメラを通してテレビモニターに映して手術をします。最近は立体的に見える3Dの腹腔鏡が市販されるようになりましたが、一般的に普及している腹腔鏡は2D画像として描出されるため、前後方向の位置関係がわかるようになるためには若干の慣れが必要です。

 腹腔鏡手術は気腹により、はじめて手術に必要な空間が得られます。以前に手術を受けたことがある場合、その影響でお腹の中に癒着ができます。癒着は腸と腸や、腸とお腹の壁とがくっつく現象ですが、傷が治るために必要な現象です。ただ、癒着の程度は個人差があり、癒着が強い場合などは、気腹によって十分なスペースを確保することができず、腹腔鏡手術を断念することがあります。

腹腔鏡手術の長所

 腹腔鏡手術以前は開腹しなければお腹の臓器を操作することは不可能でしたが、腹腔鏡手術は数か所に5から10mmの穴をあけ、そこからカメラ(腹腔鏡)と手術操作に使用する鉗子を挿入し、手術を施行します。ですので、お腹の中でする操作は開腹手術とかわりません。

 しかし、1)術後の疼痛が少ない、2)手術の創が小さく目立たない、3)筋肉への負担が少なく、術後の回復が早い、4)入院期間が短期間ですみ、社会復帰が早まる、5)お腹の中が空気にさらされないため、術後の腸の動き出しが早くなり、食事を摂ることも早くできるようになる、などのメリットがあります。また、腹壁の創が開腹と比較して小さいことは、痛みが少ないだけでなく、サイトカインや増殖因子など生体への侵襲に伴う物質産生が抑制されることにより、手術の後遺症ともいえる癒着が減ります。さらに、サイトカインや増殖因子など生体への侵襲に伴う物質産生が抑制されることによりがんの再発防止が期待されていますが、このことに関しては科学的には解明されていません。

危険性を回避するための当院の取り組み

 医療は病気から回復し元気になっていただくために提供するものでありますが、同時に医療は患者さんにとって負担のあるものであり、残念ながら合併症などを併発することがあります。腹腔鏡であっても開腹であっても、腹腔内で行う処置は同じですので、日頃から精密な画像診断を行うことを心がけています。

 次に、腹腔鏡特有の操作方法やアプローチ方法があるので、シミュレーションやドライボックスと呼ばれる練習装置での修錬も怠らないようにしています。また、日本消化器外科学会では消化器外科専門医、日本内視鏡外科学会では技術認定医の資格制度が始まっており、若手医師にはそのような資格を取るよう指導・教育を行っています。

 腹腔鏡手術は大きく2つに分かれます。胃や大腸などの消化管の手術、肝臓や膵臓などの実質臓器と呼ばれる臓器の手術です。とくに、実質臓器は内部構造が見えない(これは腹腔鏡に限ったことではありません)ので、手術前に如何にシミュレーションするかが重要です。

メッセージ

 マスコミ等で腹腔鏡手術の事故の報道があったことは皆さんご存知のことと思います。腹腔鏡手術は危険である、研究的な治療であるなどの印象を持たれた方もいらっしゃるのではないでしょうか。しかし、腹腔鏡手術が患者さん一人一人に適応されるのか否かを謙虚に判断すれば、決して危険な手術ではありません。お腹の中で行う処置は腹腔鏡であっても開腹であっても同じです。

 最も大事なのは、腹腔鏡で手術をすることではなく、病気から元気に回復することです。経験豊富な外科医が腹腔鏡手術にメリットがあると判断すれば腹腔鏡手術を、腹腔鏡より開腹の方がメリットがあると判断すれば開腹手術というように、患者さん一人一人の病気の状態、身体の状態を把握しつつ判断することが、安全な医療につながると考えています。