• ホーム
  • 外来のご案内
  • 入院のご案内
  • 診療科一覧
  • 病院のご案内
  • 相談窓口
  • 医療機関の方へ

TOPICS~病気・治療法の解説~

ロボット手術ってどんな手術?  泌尿器科 吉田 哲也

ロボット手術ってロボットがするの?

 現代の生活においてロボットは欠かせない技術となっています。工場などで稼働しているロボットがありますが、これらは基本的には外部情報の入力があってそれにあった動きを実現するものといえるでしょう。身近なものとしてはロボット掃除機があります。ロボット掃除機には種々のセンサーがあり、掃除をする空間の広さや形状、障害物の状態、ほこりやごみの散らかり具合などの情報を収集します。その情報をもとにして内蔵された人工知能が瞬時に分析し、あらかじめ設定された動作パターンから最適な方法が選択されて自律的に掃除をします。

 それでは『ロボット手術』と聞いて皆さんはどのような手術を想像されるでしょうか。実はロボットが全自動で最初から最後まで手術を行ってくれるというわけではありません。現段階ではダヴィンチ・サージカルシステム(以下「ダヴィンチ」といいます)という手術を支援する機器を用いた『ロボット支援手術』が適切な表現です。

手術の様子(vol79)

3種の機器(vol79)

ロボット手術の特徴

 手術は開腹手術から腹腔鏡手術、そしてロボット手術へと進歩しつつあります。開腹手術の欠点である患者さんに大きな傷を作る点を克服したものが腹腔鏡手術、その欠点である手術器具の操作性の不自由さを克服したものがロボット手術といえます。手術支援ロボットである「ダヴィンチ」は米国のインテュイティブ・サージカル社が開発し、欧米で先行して医療機器として認可され、1997年より海外の手術の現場で使われています。日本では2009年に医療機器として国の薬事承認(=医療機器としての使用を厚生労働大臣が許可すること)を受けています。

 「ダヴィンチ」は術者の指先となる鉗子(かんし)やメスを装着する3本のロボットアームと、1本の3D内視鏡カメラを備えた「ペイシェントカート」、術者が3D内視鏡カメラで捉えた患者さんのお腹の中を立体画像として見ることができ、ロボットアームを 自在に操る「サージョンコンソール」、手術助手や医療スタッフ用の補助モニターと手術に必要な電気機器を装備した「ビジョンカート」の3つの機械で構成されています。車に例えるとサージョンコンソールは運転席、ペイシェントカートはエンジンとタイヤ、ビジョンカートは後部座席用のモニターと言えるでしょう。

 ロボット手術は「ダヴィンチ」のロボットアームを入れるためにおなかに径約1㎝の孔が3-4か所、手術を補助する助手(これは人間です)が使用する孔が1-2か所必要です。二酸化炭素ガスでお腹の中を膨らませて空間を作り手術を行います。3D内視鏡カメラで「三次元の立体的な画像」をモニターで見ながら、手ぶれ防止機能と自由に曲がる多関節鉗子(曲げ伸ばし可能な関節部分を付けた、臓器をつかんだり引っ張ったりするための手術器具)を使うことで、複雑で細かな手術手技を行うことができます。従来の開放手術に比べて傷が小さいため患者さんに優しい手術になりますし、リアルな画像と高度な操作性により腹腔鏡手術では困難とされる手技も行うことが可能です。これらが「ダヴィンチ」によるロボット手術の最大のメリットです。

ダヴィンチイラスト(vol79)

ロボット手術の現状

 現在の保険診療で「ダヴィンチ」を使えるロボット手術は前立腺がんと腎臓がん(部分切除)の2つしかありません。ともに泌尿器科領域の手術です。2016年9月現在で胃がん、咽頭がん、子宮頸がんについて先進医療が行われており将来的に導入される可能性があります。

 滋賀医科大学においても2013年5月から約150例のロボット支援腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術を、2014年1月から約50例のロボット支援腹腔鏡下腎悪性腫瘍手術を行っています。これまで大きな合併症はなく全例においてロボット手術だけで手術を終えています。術後の経過も良好で出血量や癌制御率、入院期間などの手術成績もこれまでの開腹手術や腹腔鏡手術と同等かそれ以上の成果を挙げています。

 前立腺がんにおいてはより進行した状況においても根治を目指すべく、前立腺の拡大切除や拡大リンパ節郭清術を行い癌制御率の向上につながる工夫をしています。腎臓がんにおいては高精度の機能がより複雑で細かな手技を可能とし「ダヴィンチ」の特徴が存分に発揮されます。存在位置や大きさのため従来は腎臓をすべて摘除する腎全摘術を余儀なくされた腫瘍に対しても腎部分切除が可能となり、患者さんの腎臓を温存できることが多くなりました。このようにロボット手術は開腹手術と腹腔鏡手術の問題点を克服した優れた手術といえます。

多関節(vol79)

ロボット手術のこれから

 ロボット手術は従来の手術と比較して低侵襲性、機能性を飛躍的に向上させるものです。将来的に他の手術にも導入されることは間違いありません。しかし克服すべき課題があります。

 最大の問題点としては、かなりの高コストがロボット手術にはかかるという点です。「ダヴィンチ」の本体価格に加え、10回使用限定の手術器具、機器維持費用が必要となります。患者さんに対してのより優れた医療の提供と安全は重要ですが、今後も進んでいく超高齢化社会を考えると医療費の問題も考えなければならず、何でもかんでもロボット手術というのは現実的ではありません。ただ将来的に費用面をはじめとした現時点における様々な問題点を克服した新機器が登場し、多くの患者さんがその恩恵にあずかる日が来ることを望んでいます。

笑顔(vol79)

TOPICS バックナンバー