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TOPICS~病気・治療法の解説~

脳梗塞の急性期治療について  脳神経外科 辻 篤司

県内の発症件数は年間約2000例

 脳卒中とは脳血管に原因する疾患の総称で、大別すると脳梗塞(脳の血管が詰まる)、脳内出血(脳の微細な動脈から出血する)、くも膜下出血(脳動脈にできた脳動脈瘤と呼ばれるコブから出血する)に分類されます。

 脳卒中の中では脳梗塞の発症件数が最も多く、本学の脳卒中データセンターで実施された、滋賀県を対象とした疫学調査(調査年2011年)では、脳梗塞が1948例発生し、脳卒中全体の65.9%を占めることが明らかとなりました(図1)。

血栓を薬剤で溶かすt-PA静注療法

 近年、脳梗塞に対する急性期治療は著しい進歩を遂げています。一つはt-PA(アルテプラーゼ)と呼ばれる、血栓溶解能力を有する薬剤の静脈内投与による再開通療法があげられます。この治療は、運動麻痺や言語障害などの症状を発症した脳梗塞に対して、4時間30分以内に投与を開始することで、後遺障害を最小限にする可能性を1.5倍に改善させることができる治療方法です。

 『脳卒中ガイドライン2015』では、t-PAの静脈内投与は、発症から4時間30分時間以内で、治療可能な虚血性脳血管障害であることが慎重に判断された患者に対して、強く勧められる」とされています。

 しかし、この治療によって自立した生活を獲得できる可能性は、治療をうけた患者さんのおよそ30%に限られます。しかも投与時間の制限(発症から病院搬入まで3時間以内)のほか、血液検査所見(血小板数が少ない、血糖値が高いなど)や既往症(脳梗塞を発症する前の1~2カ月に、大きな病気を発症したり手術を受けりしていないか)によって、そもそもt-PA投与の対象とならない患者さんも多数存在し、前述の調査では108例(脳梗塞全体の5.5%)に投与されたのみでした。

血栓を機械的に回収する血栓回収療法

 細長い管(カテーテル)を血管の中に挿入して、脳血管の血栓を直接吸引したり、金属の筒のようなステントを用いて、機械的に回収する治療は血栓回収療法(図2)と呼ばれ、2015年にこの治療の有効性が明らかにされました。

 6時間以内に血栓回収療法を行うことで、図3における「0 まったく症状がない」から、「2 軽度の障害」(自分の身の回りのことは介助なしに行える)までに改善した患者さんは、26.5%⒜から46%⒝に増加し、死亡率などの安全性も問題なかったと報告されました(図3)。

 当院でもいち早くこの治療を取り入れ、現在まで良好な治療成績を残しています(図4)。

発症24時間以内なら有効な治療も

 発症から6時間以上経過した脳梗塞については、有効な治療方法は存在しないと考えられていました。しかし、2017年に、24時間以内にMRIなどの画像検査によって、脳血流の再開で救済可能な脳組織が存在することが確認できた場合であれば、迅速に血栓回収療法を行うことで予後が改善することが証明されました。

 この治療を24時間いつでも、必要とされる患者さんに提供するためには、高度に洗練された診断・治療のチームが必要です。

 当院では、救急部・脳神経内科・脳神経外科・放射線科によるチーム医療によって、対象となる患者さんに対して治療を提供しています。

「脳卒中?」と思ったら躊躇なく救急車を

  適切な治療を行うために、脳卒中が疑われた場合(図5)は、躊躇なく救急車を利用していただくことが大切です。当院では地域に密着した大学病院として、最新の治療法をさまざまに組み合わせた集学的治療を、広く県民の皆様に提供していきたいと考えています。