滋賀医大付属病院 脳神経外科 ものわすれ外来
ご自身やご家族が「どうも最近もの忘れが多くなってきた」など
こうした変化に思いあたる方は、「もの忘れ外来」を受診して下さい。
的確な検査、適切な治療によって機能低下を防ぐことができます。
隠れた病気を発見することもあります。
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原因別認知症の分類

病名 原因 症状 FTLD分類
アルツハイマー病 アミロイドβ
3,4リピートタウ
   
SD-NFT 3,4リピートタウ 高齢発症タウオパチー  
ピック病 3リピートタウ   FTLD-tau
嗜銀顆粒性認知症 4リピートタウ 高齢発症タウオパチー
進行性核上性麻痺 パーキンソン病+認知症
皮質基底核変性症
レビー小体型認知症 α-シヌクレイン  
FTLD-nonMND TDP-43 FTLD (FTD、PNFA、SD) FTLD-TDP
(4 types)  
FTLD-MND (ALS) ALS+FTLD
aFTLD-U,BIBD,NIFID FUS bvFTD、ALS+FTLD FTLD-FUS

SD-NFT: senile dementia of the NFT type (神経原線維変化型老年期認知症)、MND:motor neuron disease(運動ニューロン疾患)、aFTLD-U:atypical FTLD with ubiquitin-positive inclusion、BIBD:basophilic body disease(好塩基性封入体病)、NIFID:neuronal intermediate filament inclusion disease(神経細胞性中間径フィラメント封入体病)

アルツハイマー病

アルツハイマー病は、脳のアミロイドβの蓄積と神経原線維変化の両方が重なって引き起こされると考えられていますが、本当のところはまだ解明されていません。アルツハイマー病を発症する1%ぐらいに、優性遺伝する家族性アルツハイマー病の人々の存在が知られています。遺伝子の異常を詳しく調べると、そのほとんどがアミロイドβにかかわる遺伝子であることから、アルツハイマー病と脳のアミロイドβの蓄積には深くかかわりがあると考えられています。神経原線維変化の原因はタウ蛋白の神経細胞内の蓄積によると考えられています。アミロイドカスケード仮説では、アミロイドβの蓄積がアルツハイマー病発症の引き金になり神経細胞死の直接的な原因と思われる神経原線維変化を引き起こすとするもので、現在最も有力な仮説とされています。しかし最近の研究によると神経原線維変化は以前に考えられていたよりも早期から出現している可能性があり、アミロイドβと神経原線維変化がどのようにかかわるのか研究されている段階です。
典型的なアルツハイマー病の脳では、嗅内野や海馬などの側頭葉内側から神経細胞の変性が始まり、側頭葉外側、後部帯状回、頭頂葉と広がって行き、前頭葉の障害は後の方になります。人によっては側頭葉内側よりも頭頂葉などの大脳皮質の変性が強い場合もあることが知られています。これらの領域は、後頭葉を含めて外界からの情報を処理する領域になります。 アルツハイマー病の典型的な症状は経験記憶の障害です。財布や書類など大切なものであってもどこに置いたか思い出せない、しばらく前に言われたことや自分でしたことを忘れているため、何度も同じことを聞いたり言ったりします。患者さんと何気ない話をしているときは一見全く正常な会話に思えるのに、実はとりつくろっていて虚偽の話であったりします。薬の管理ができなくなってきたために家族に気づかれることもあります。外来診療でしばしばみられる所見に"振り向き"があります。何かを質問されても覚えていないので、家族の方を振り向いて代わりに答えてもらおうとします。これらの記憶の障害は海馬の機能障害を中心とした症状になります。
さらに症状が進行すると側頭葉外側や頭頂葉の障害へと進行します。特に頭頂葉の症状で目立つのは、場所がわからない、着衣ができない、時計を見ても時間がわからないなどの症状です。顔貌の認識も頭頂葉が関係していますので、顔を見ても誰だかわからなくなります。さらに進行して前頭葉まで及ぶと複雑な物事の遂行ができなくなり、やがてトイレの始末などができなくなります。

神経系は大きく運動系と知覚系に分類されますが、アルツハイマー病においては知覚系大脳皮質の障害が目立つことになります。一方、前頭側頭型認知症では前頭葉と側頭葉前1/3の領域の障害が主体で、運動系大脳皮質の障害と言えます。人の前頭葉は、歩行の調節や眼球運動、言語表出にかかわっていますが、さらには複雑な計画、目標への遂行、想像や空想といったさらに特殊な"運動系"機能をしていると言えます。料理(計画、遂行)や散歩などは前頭葉の刺激によいと言われています。
画像 心理検査で面白い検査にアイオワ・ギャンブリング課題(IGT)というのがあります。普通は失敗をもとに堅実なお金のかけかたを学習するのですが、前頭葉底部の障害があるとハイリスク・ハイリターン(high risk・high return)にこだわり最終的には損をしてしまうことが多いようです。前頭葉は短期的な計画ではなく、長期的、包括的な利益を得るための意志・行動決定に重要な役割を担っています。見込めます。

レビー小体型認知症

私が認知症とかかわり始めた30年前には、「パーキンソン病と認知症は別の疾患」と考えられていました。私は当時としてはめずらしいMR装置を用いてMRS(magnetic resonance spectroscopy)という検査で脳関連の研究していました。興味深いことに脳の神経細胞にはNAA(N-acetylaspartate)という特殊な物質があり、MRSでNAAを測定することにより認知症の患者さんではNAAの低下があることを見つけていました。京大のA先生との共同研究でパーキンソン病の患者さんの中でアルツハイマー病と同じようにNAAの低下を示している患者さんがいること見つけて発表しましたが、当時はレビー症体型認知症の存在は知られておらず、否定的な意見や無視されることが多かったことを記憶しております。今ではレビー小体型認知症とパーキンソン病は同じ原因である可能性が高いと考えられていますが、まだ判らないことも数多くあります。レビー小体型認知症は、1995年にイギリスで開催された第一回国際ワークショップで1つの疾患として提唱され、臨床医にも広く知られるようになりました。

1912年にDr. Lewy (1885-1950)がパーキンソン病の患者の脳で神経細胞内に高頻度に出現する小体を報告したのが始まりで、彼の名前を冠してLewy body (レビー小体)と呼ばれるようになりました。レビー小体にはα-シヌクレインが多く含まれており、これが神経細胞内でタンパク重合を起こして沈着していると考えられています。この小体が出現している神経細胞は元気がなく、突起の数も少なくなっていることが知られていますが、その原因はまだ明らかではありません。その後パーキンソン病で出現するレビー小体が認知症の患者さんでも認められることがわかりますが、これには小坂先生らの研究が大きく貢献しています。現在では、レビー小体型認知症はパーキンソン病と合わせてレビー小体病(Lewy body disease)として扱われるようになってきています。レビー小体病は、脳幹型(45%)、辺縁型(移行型)(25%)、新皮質型(30%)に分けられ、脳幹型がいわゆるパーキンソン病に相当しますが、これらの3タイプは完全に分けられるものではなく、病気の進行具合や患者さんによって境界領域のタイプが存在します。レビー小体病の患者さんの脳にはアルツハイマー病の特徴を示す病理所見がしばしば混在しており、特に新皮質型ではアルツハイマー病のBraak state III-IVが高頻度に認められ、臨床的にも症状はアルツハイマー病に似ています。

レビー小体型認知症の患者さんは、アルツハイマー病の患者さんと比べて海馬の萎縮が軽微であることが多く、心理検査でもアルツハイマー病とは異なるパターンを示すことがしばしばあります。
画像 右図は本院の外来で実施されたウェクスラーメモリースケール改訂版(WMSR)の指標値を抜粋しています。アルツハイマー病では遅延再生の値が低く、注意・集中力が比較的保たれていることが多いのですが、レビー小体型認知症の患者さんすべての指標が全体に低くなっています(右下、赤ワクの症例)。若いときからの便秘症を訴えることが多く、明らかなパーキンソン症状がなくても肘の関節の抵抗に左右差がしばしばみられます。最近は、DaT scanやMIBGといったSPECT検査があり、診断も正確になってきています。
画像Dat SPECTの一般的所見

パーキンソン症状を示す変性疾患

    病理 パーキンソン症状 MIBG H/M) Dat scan MRI
PD パーキンソン病 Lewy ++ ** ** 異常なし
DLB レビー小体型認知症 Lewy ++ ** ** 側頭葉内側の萎縮
MSA C:オリーブ橋小脳萎縮症 小脳型 + ** ** 小脳萎縮
hot cross bun sign
被殻外側辺縁のT2 high
P:線状体黒質変性症 PD型 ++
Shy-Drager syndrome 自律神経 +
PSP 進行性核上性麻痺 4R-tau + * ** humming bird sign
CBD 大脳皮質基底核変性症 4R-tau + * ** 前頭-頭頂萎縮(非対称)
AD アルツハイマー病 Aβ3,4R-tau - * * 側頭葉内側の萎縮

レビー小体型認知症の特徴を以下にまとめました

  • パーキンソン病を伴う認知症
  • 平均発症年齢は60歳、約10年で死亡
  • 大脳皮質や海馬の萎縮は軽度
  • 注意や明晰性の変動が中核
    MMSEは比較的高い値    
    視覚性の幻視(具体的)    
    レム睡眠行動障害(大声、配偶者を殴る)
  • 向精神病薬でパーキンソニズム悪化、意識障害をきたしやすい。
  • 記銘力低下より記憶の再生障害が目立つ(海馬ではなく前頭葉由来の記憶障害
  • 認知機能の低下は、注意障害、構成障害、視空間障害などの前頭葉、頭頂葉の機能障害。問題解決能力の低下も目立つ。
  • 認知機能障害に顕著な変動がある。
  • 初期にはうつ病と誤診されることが多い(うつ病の頻度が高い)。

レビー小体型認知症の幻視、錯視、妄想の特徴

  • 典型的な幻視は、人物、小動物、虫が多い   
    「ベッドの脇に孫が座っていた」   
    「虫(蛇)が壁を這っていた」
  • 錯視   
    カーテンが洋服や人に見える
  • 妄想   
    「(既に死亡している)親戚が部屋にいた」
    幻視であることをある程度自覚していることが多い
    夕方や夜間など覚醒レベルが低下しているときが多い

レビー小体型認知症の主な治療薬

  1. 認知障害:ChEIs (ドネペシル他)
  2. 幻視•行動異常   
    a) ChEIs
    b) 抑肝散   
    c)非定型抗精神病薬(セロクエル、ジプレキサ、リスパダール)
  3. アパシー:ChEIs
  4. うつ症状:ChEIs, SSRI (パキシル)、SNRI(トレドミン)
  5. レム睡眠行動障害(RBD):リボトリール、メラトニン、ChEIs
  6. パーキンソン症状:L-Dopa
レビー小体型認知症におけるChEIsは、ADよりも認知機能改善効果は高く、精神症状、行動異常、幻覚、睡眠障害にも有効。向精神薬やメマンチンでは副作用が出やすいと言われています。

前頭側頭型認知症(前頭側頭葉変性症)

アルツハイマー病が知覚系大脳皮質の病変を主体とするのに対し、運動系大脳皮質病変を主体とする非アルツハイマー型の変性性認知症疾患を包括的に捉えた疾患群の病名で、Pick病のようにタウの変性が主体となるものや、TDP-43が関係しているものが知られています。さらにTDP-43が関係しているものは、運動障害を伴うもの(FTLD-MND)と伴わないもの(FTLD-nonMND)に分けられます。タウの変性が原因となるものは、3リピートタウの変性が主体であるPick病、4リピートタウの変性が主体である疾患群(皮質基底核変性症、進行性核上性麻痺、嗜銀顆粒性認知症)、両方のタイプのタウの変性が混在する神経原線維変化型認知症に分類されます。ちなみにアルツハイマー病におけるタウの病変は両方のタイプのタウの変性になり、神経原線維変化型認知症の症状はアルツハイマー病と似ています。
前頭側頭型認知症の症状の特徴は前頭葉の機能障害を主体としたもので、病初期にあっても本人には全く病識がありません。ほとんどが65歳以下とアルツハイマー病よりも若い時期に発症し、記憶の障害は目立ちません。前頭側頭型認知症の原因はタウの変性によるものとTDP-43蛋白が関係するものに分けられますが、臨床診断する上でこれらの原因別分類は難しいことが多いため、症状によって(障害されている部位によって)行動障害型認知症(bv-FTD)と原発性進行性失語症(PPA)に分類され、PPAはさらに意味性認知症(SD)、進行性非流暢性失語症(PNFA)に分類され、これらをまとめて前頭側頭葉変性症と呼ぶ場合もあります。
画像

行動障害型認知症(bvFTD)の症状

自発性の低下:前頭葉の内側障害の症状と考えられ、じっとしているかと思うと常同的な行動を示すことがあり、抑うつ感や悲哀、不安感は目立ちません。寝てばかりいるので声をかけても、「何か食べる?」「知らん」、「散歩する?」「知らん」と何も考えずに即答することがしばしばあります。
常同行動:同じ言葉を意味もなく繰り返す、同じところを同じ時間に周遊する、など日常の行動のパターンにバリエーションがなくなってきます。ささいな事にこだわる傾向があります。同じものを異常なほど繰り返して食べる、食欲が不自然に旺盛になることもあります。前頭葉底面の障害と考えられています。

遂行機能障害:料理などメニューを考えて、買い物をして、作る順番やタイミングを考えて調理するといった複合的な行動が完遂できなくなります。ある行為を続けて行うことができず、根気がないようにも見えます。

問題行動:周りのことを気にせず自分の思うがままに行動します。周囲の人の気持ちは一切意に介さず、共感することもありません。注意されると激しく怒ります。ルールは無視して、万引きなどの反社会的な行動をしても反省するそぶりは示しません。このような症状は、家族に精神的にも大きな負担がかかるため、地域社会でのケアが必要になります。

意味性認知症(SD)の症状

意味記憶(semantic memory)は体験記憶と異なり、自分とは直接関わりはないが概念的知識として記憶していることをさします。見たもの(特定の景色や相貌)や聞いたもの(特定の言葉)を解釈して概念化する作業には前頭葉が必要ですが、側頭葉の先端部は前頭葉におけるこれらの作業にかかわっていると考えられています。このため側頭葉の先端部が障害されると、物事の法則や概念などの記憶(知識)が障害されます。語の意味(概念)が障害されている状態は語義失語と呼ばれ、理解を伴わない書き取りや復唱は可能で、語性錯語はあるが流暢に話すことは問題なくできます。語義失語は左(優位半球)の側頭葉先端部の障害で起きやすく、右の場合は視覚的情報の意味や概念の障害が主体となります。
具体的には以下のような症状として認められます。

物品呼称の障害(語想起障害)
単語理解の障害
物事の言語的な解釈の障害(語義失語)
 対象物に対する知識の障害
 有名人や友人、たまにしか会わない親戚の顔が認識できない
 金閣寺やスカイツリーを見ても何であるか認知できない
 表層性失読・失書

進行性非流暢性失語症(PNFD)の症状
構音にかかわる一次運動野からその高次の発語にかかわる前頭前野(運動性運動中枢、Broca's area)の障害(従って優位半球側)によって出現します。症状としては、
自発語の減少(言葉が出にくいと訴えることが多い)
流暢に話すことができず、努力性
外国語、片言しゃべり
失構音

Logopenic型原発性進行性失語 (lvPPA)の症状

優位半球頭頂葉の障害によるため、FTLDの範疇には入りませんが、PPAに分類されています。基礎疾患ははADのことが多いようですが、タウの病変やTDPの病変でも起こります。"logopenic"とは語="logo"と少ない="penic"の意味で、自発語および呼称における単語想起障害があり、超皮質性失語症と異なり復唱障害も認められるようです。Brocaのような文法の誤りや言い違えはありません。

PPAの臨床診断基準

I.非流暢/失文法型 PPA の臨床的診断
 次の 2 つの中核症状のうち少なくとも1つが認められる
  1. 発話における失文法
  2. 一貫性に乏しい音の誤りと歪みを伴う努力性でたどたどしい発話(発語失行)
 次の特徴のうち少なくとも 2つが認められる
  1. 複雑な文章は理解できない
  2. 単語の理解は保たれている
  3. 対象物の知識は保たれている

II.意味型 PPA の臨床的診断
 次の2つの中核症状が認められる
  1. 呼称障害 (目の前に提示された品物の名前が思い出せない)
  2. 単語の理解障害
 次の特徴のうち少なくとも3つが認められる
  1. 対象物の知識の障害(本人にとってあまり馴染みのないものにおいて)
  2. 表層性失読(正しく読めないが、全く違うわけではない)
  3. 復唱は保たれている。
  4. 発話(文法,発話運動面)は保たれている

III."logopenic"型 PPA の臨床的診断
 次の2つの中核症状が認められる
  1. 自発話および呼称における単語想起障害
  2. 文・句の復唱障害
 次の特徴のうち少なくとも3つが認められる
  1. 自発話および呼称における発話の音韻論的誤り(音韻性錯誤) テレビ-テビレ、メガネ-メガレ
  2. 単語理解と対象物の知識は保たれている
  3. 発話の運動面(motor speech)は保たれている
  4. 明らかな文法の障害はない

医療費助成対象疾病

行動障害型認知症(bv-FTD)、意味性認知症(SD)は、2015年7月から医療費助成対象疾病・神経難病に指定され、PSPやCBDと同様に特定疾患の申請ができることになりました。ただしどちらもグレード3以上、行動障害型認知症の場合は対人関係に問題がある場合、意味性認知症の場合はコミュニケーションが中等度以上に障害されている場合になります。

bv-FTD
 0:社会的に適切な行動を行える
 1:態度、共感、行為の適切さに最低限だが明らかな変化
 2:行動、態度、共感、行為の適切さにおいて、軽度ではあるが明らかな変化
 3:対人関係や相互のやり取りに相当な影響を及ぼす中等度の行動変化
 4:対人相互関係が総て一方向性である高度の障害

SD
 0:正常発語、正常理解
 1:最低限だが明らかな喚語障害。通常会話では、理解は正常
 2:しばしば生じる発語を大きく阻害するほどではない程度の軽度の喚語障害、軽度の理解障害
 3:コミュニケーションを阻害する中等度の喚語障害、通常会話における中等度の理解障害
 4:高度の喚語障害、言語表出障害、理解障害により実質的にコミュニケーションが不能

ある時期には非常に顕著な幻覚(幻視・幻聴)症状がみられる事です。PDやDLBのようなレビー関連症候群と違うのは、前頭葉特有の脱抑制症状が加わっているためかなり激しく訴えるという点です。ただこれらの症例ではChEI、クエチアピンが併用されていても、まったく幻覚や脱抑制症状は抑えられていませんでした。どうやらFTDはDLBとちがってChEI+非定型抗精神薬が奏功しにくいようです。臨床的FTDに共通しているのは、ChEIの2種類で幻覚や脱抑制症状が悪化しやすいということと、抗精神薬が非常に効きにくいという事です。

FTLD-TDPの分類

国際
分類
Sampathu
分類
Mackenzie
分類
主な臨床病型 皮質病理
主なTDP-43陽性構造
遺伝子異常
A Type 1 Type 1 PNFA, bvFTD NCI、short DN, 2層優位  GRN
TARDBP
B Type 3 Type 3 MND with FTD, bvFTD NCI、全層
C9orf72
C Type 1 Type 2 SD, bvFTD long DN, 2層優位  
D Type 4 Type 4 Familial IBMPFD  short DN,レンズ型NII, 全層 VCP
bvFTD:behavioral variant frontotemporal dementia、MND:motor neuron disease(運動ニューロン疾患)、PNFA:progressive non-fluent aphasia(進行性非流暢性失語)、SD:semantic dementia(意味性認知症)、IBMPFD:inclusion body myopathy associated with Paget's disease of bone and/or frontotemporal dementia(骨ページェット病と前頭側頭型認知症をともなう封入体筋炎)、NCI: neuronal cytoplasmic inclusion(神経細胞質内封入体)、DN:dystrophic neurites(変性神経突起)
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嗜銀顆粒性認知症(argyrophilic grain disease; AGD)

アルツハイマー病と似た症状を示すため鑑別は困難なことがありますが、アルツハイマー病よりも高齢発症で、怒りっぽいといった情動障害や性格変化が目立ち、健忘症状は軽度なままで経過することが多いようです。扁桃体、迂回回(ambient gyrus; uncusの前部)、前部海馬や嗅内野といった側頭葉内側の萎縮は前方部に限局し、左右差を伴う傾向があると言われています。

Stage I: Argyrophilic grains are observed in the ambient gyrus, the anterior, CA1 of hippocampus, the anterior entorhinal area, and the amygdala.
Stage II: AGs are more apparent in the medial temporal pole, in the posterior subiculum, and the entorhinal and transentorhinal cortex. Stage III: AGs involve the anterior cingulate gyrus, septum, accumbens, gyri recti, insular cortex, and hypothalamus in addition to the medial temporal lobe.
画像
文献xより引用(一部改変)

神経原線維変化型老年期認知症(Senile dementia of the NFT type; SD-NFT)

アルツハイマー病よりも高齢発症(80〜90歳)のことが多く、病理では海馬傍回と海馬(CA1>CA2)の神経原線維変化が主体で、新皮質のNFTや萎縮、アミロイドβの沈着(老人斑)は目立ちません。症状は初期のアルツハイマー病と同じですが進行はゆっくりで、側頭葉外側や頭頂葉まで症状の進行はありません。アルツハイマー病では、NFTを伴うタウオパチーが側頭葉内側を中心に起きていて、それがなんらかの理由でアミロイドβの沈着と相俟って側頭-頭頂葉まで変性が進行していくのに対し、SD-NFTは触媒となるアミロイドβの沈着がないためにアルツハイマー病になり損ねたようにも見えます。
もの忘れ、認知症でお悩みの方や、ご家族でご心配されている方がいましたら、ぜひご相談ください。