○細菌検査室って何するところ?

 

 みなさんが病院に掛かられる時は、様々な体の不調を感じるときです。特に、何らかの病原菌による感染が疑われる(咳が出る、下痢であるなど)場合、原因となる微生物を特定し、その菌に対してどのような薬(抗生物質)が効くのかを調べるのが、私たち細菌検査室の仕事です。細菌検査には、患者さんから採取された検体(喀痰・便など)が必要です。通常、検査の結果が分かるまで3〜7日必要です。しかし、すぐに検査の結果を調べなければならない感染症(インフルエンザや細菌性髄膜炎など)には、特殊な検査キットを用いて迅速に結果を報告しています。

      

  滋賀医科大学附属病院細菌検査室で行っている特殊検査

 

当院では、以下の感染迅速検査を行っています。

 

インフルエンザA/Bウィルス抗原検査、尿中肺炎球菌・レジオネラ菌抗原検査

Clostridium difficle toxinA/B検査、便中ロタ・アデノウィルス抗原検査

Vero toxin1/2検出検査(ELISA法)

A群溶血レンサ球菌抗原検査、咽頭アデノウィルス抗原検査、RSウィルス抗原検査

髄液ラテックス凝集検査(N.meningitis,H.influenzae ,S.pneumoniae, E.coli

HSV-1/2蛍光染色法による顕微鏡検査

 

○細菌検査の流れ

 

 細菌検査室では、患者さんの症状により担当の医師の判断で採取された各種検体について、スライドガラスへ塗沫し、グラム染色標本、又は生鮮標本を作製して顕微鏡で観察します。

グラム染色とは、検体の中にいる細菌を青紫色・赤紫色に染め分けることが出来る特殊な染色法です。染色された菌体の特徴から「ある程度」の菌名が推測出来る場合もあります。また、白血球やその他の細胞の有無、染まった白血球の鮮明さ、貪食像などから、急性の炎症所見があるのか、その炎症に菌が関係しているのかなど、色々な情報を得ることが出来ます。以上のことより、グラム染色による顕微鏡検査は、少しでも早く患者さんの苦痛を取り除くことにつながる、大切な検査なのです。

 次に、細菌・真菌の培養検査を行います。各種検体により、培養に使う寒天培地が異なります。また担当の医師より得られた情報をもとに、培地の組み合わせをアレンジして、より確実に原因菌の特定が出来るように工夫しています。分離される菌種により、発育までに時間差があります。

 

 培地へ発育してきた菌について、臨床的に意義があるもの(炎症の起炎菌である可能性があるもの)について同定(菌名の確認)・感受性(抗生物質の有効性)検査を行います。滋賀医大病院では、主に同定・感受性自動判定機器を使用しています。この機器により判定された菌名・薬剤感受性に矛盾がないかを確認後、最終報告を担当の医師へ行います。これが細菌検査の流れです。

 

○その他の検査

 

 結核が疑われる場合、抗酸菌(結核菌群・非結核菌群)検査を行います。提出された検体を前処理した上で、スライドガラス上に塗抹しチール・ネールゼン染色をします。その標本を顕微鏡で見て抗酸菌の有無を調べます。菌が見えた場合、すぐに担当の医師へ連絡し、患者さんの症状により至急でPCR検査(遺伝子検査)を行っています。残った検体は抗酸菌用の培養ボトルに入れて、約60日培養をします。

その他に細菌検査室では、血漿・血清を用いた血液中のβ-D-グルカン、エンドトキシン、プロカルシトニンといった敗血症診断に欠かせない検査や、アスペルギルス抗原検査、クリプトコッカス・ネオフォルマンス抗原検査、カンジダ抗原検査も行っています。