滋賀医科大学附属病院では、2005年より限局性前立腺癌に対する密封小線源(I-125)の永久挿入療法(以下シード治療もしくは小線源治療と略す)をおこなっています。近年は北海道から沖縄まで全国から多数の患者さんが当院の小線源治療をもとめて来院されています。

このように当院の小線源治療は全国の患者さんとご家族から高い支持を受けているのみならず、全国から多くの医師や治療チームが小線源治療を学ぶために当院を来訪されています。
このため2015年1月からは前立腺癌小線源治療学講座をたちあげ、放射線科と協力して国内屈指のハイヴォリュームセンタとして年間140例ほどの治療ができるように努力しています。

米国において小線源治療は前立腺癌に対する放射線療法として確立され、既に20年以上を経過し、限局性前立腺癌の一般的な治療法として広く行われていますが、われわれはすでに900例を超える患者さんに、この治療を行っています。その経験を通して、小線源療法は高い経験と技術を持っておこなえば、体への負担が軽いばかりでなく、安全かつ有効性のきわめて高い治療法であることを実感しています。

前立腺癌の治療でもっとも大切なことは最初の治療で確実に再発なく完治させることです。なぜなら、初回治療で再発した前立腺がん患者さんは再発後、救済療法を受けたとしても 多くの場合、再発 再再発という道をたどるからであります。われわれの多数の治療経験や海外のデータから小線源治療は適切に他の治療と組み合わせることにより、おとなしい癌 (低リスク前立腺がん)あるいは、悪性度の高い癌 (中間リスク前立腺がんや高リスク前立腺がん)のいずれであっても非常に高い根治率(非再発率)が得られることがわかっています。ここでは小線源療法の内容と滋賀医大でおこなっている治療の特徴について説明いたします。



前立腺癌小線源治療の歴史

小線源療法とは小さな放射性物質を治療する局所に挿入して行う放射線治療を意味します。英語ではブラキセラピー(brachytherapy)と呼ばれていますが、ブラキ(brachy)とは「近接した」という意味で放射線源と照射目標が短いことからこのように呼ばれています。日本でも古くから、舌癌や婦人科の癌に対してラジウム、セシウム、金などの放射性物質を用いた小線源療法が行われてきました。

1970年代にアメリカで前立腺癌に対する(I-125)を密封した小線源(シード線源)を前立腺の中に挿入して照射を行う組織内放射線療法が開始されましたが、当時の方法は下腹部を切開し直視下に線源を留置して行う方法であり、線源を目算で挿入していたため線源分布が不均一となり、効果が不十分で広く普及するには至りませんでした。

超音波画像により正確にシード線源を挿入

その後、直腸に超音波端子を挿入する前立腺用の経直腸エコーが開発され、前立腺の超音波画像が鮮明に得られるようになりました。これにより超音波画像を見ながら会陰部(肛門と陰嚢の間の股の部位)から前立腺内に針を刺して、そこからシード線源を挿入することが出来るようになりました。皮膚切開を必要とせず、しかも前立腺に正確に線源を留置することができるようになって治療成績が飛躍的に向上したため、1990年代になってI-125を用いた小線源療法は年々増加の傾向をたどっています。近年の米国では 年間50,000人を超える人がこの治療を受けており、前立腺全摘除術を受ける人とほぼ同数になっています。

リアルタイム術中計画法により、安全に高い放射線エネルギーを照射

ことに2004年以降、ニューヨークマウントサイナイ医科大学を中心に開発されたリアルタイムによる術中計画法により、きわめて高い精度で線源が前立腺に配置できるようになりました。これにより、非常に高い放射線エネルギーが、安全に照射できるようになりきわめて高い治癒率が得られるようになっています。滋賀医科大学でもマウントサイナイ医科大学のネルソン・ストーン教授にこれまで3度来院いただいたのち、このリアルタイム術中計画法を発展させて独自の治療プログラムを開発し、難治性の前立腺癌症例を含め多数の患者さんの治療をおこなっています。

リアルタイムによる術中計画法による超音波画像と、治療後のX線フィルム