教室沿革

滋賀医科大学皮膚科学講座は昭和53年に開講しました。教室開講時の初代教授は渡邊昌平教授(〜平成3年)であり、助教授は上原正巳先生、その後講師として廣永正紀先生が加わり、講座の草創期を担いました。研究面では渡辺教授の皮膚真菌症と上原助教授のアトピー性皮膚炎が二本柱となり、特に真菌症に関しては廣永正紀講師、田中壮一講師、望月隆助手(現・金沢医科大学皮膚科学教授)らと共に病原真菌の交配試験に基づく白癬菌の再分類について精力的な研究がなされました。

 

当時は現在の専門医制度が確立される前後の時期であり、大学は医師というより研究者の自覚が強い時代でした。皮膚真菌症が研究テーマだったため、一般診療として行われる培養検査のみでは確定診断が困難である特殊な皮膚真菌症が疑われた症例は当科に紹介されてくることが多く、そのような症例は入院のうえ病理検査と病原真菌の詳細な培養検査、同定によって診断を確定し、適確な治療を行っていました。

 

 

平成3年に上原正巳先生が第二代教授に就任(〜平成15年)されてからはアトピー性皮膚炎が教室の中心テーマとなり、杉浦久嗣講師・佐々木一夫助手・植西敏浩助手(平成17年より講師)らと共に臨床的研究および基礎的研究が行われ、数々の悪化要因を実際の症例を綿密に検証することにより明らかにするなど、多くの優れた業績をあげました。平成4年に段野貴一郎助教授を迎えてからは、光免疫学の研究と尋常性乾癬の病態に関する研究も行われました。

 

また、この時代は専門医制度が確立しサブスペシャリティが喧伝された時代でした。研究テーマであるアトピー性皮膚炎は外来診療が中心であったこともあり、非常に多く患者が全国から来院されました。重症例に関しては入院加療を行い、症状を改善させると共に増悪因子を検索し、短期間で寛解に導きました。また、マスコミによるステロイドバッシング等によりアトピー性皮膚炎に関する情報が混乱する中で、治療や生活指導に関して正しい情報を記したパンフレットを作成し、多くの患者を啓発し且つ不適切な治療により重症化したアトピー性皮膚炎の患者を軽快に導きました。段野貴一郎助教授の専門分野である尋常性乾癬についても、重症例は光線治療など特殊治療を行うことができる当院に紹介され、十分な入院加療により全身の大半が鱗屑に覆われるような重症例をも改善に導いてきました。

 

 

平成16年に第三代皮膚科教授として田中俊宏教授が就任(〜現在)してからは、田中教授の専門分野である水疱症の研究に加え、時代のニーズに応じた幅広い診療分野に関して多種多様の研究を行っています。平成20年に中西元講師(平成23年より准教授)を迎えてからは臨床研究として遺伝子診断を行っており、先天性表皮水疱症などの遺伝性疾患の診断や、悪性腫瘍の1つである隆起性皮膚線維肉腫のCOL1A1-PDGFB融合遺伝子の発現を検索して皮膚線維腫との鑑別診断や切除マージンの評価に活用しています。さらに現在は中西健史准教授の創傷ケア、藤本徳毅講師の皮膚免疫など多彩な分野における臨床・基礎研究が行われています。

 

田中教授が赴任された頃は大学の独立法人化に併せて採算性が求められるようになり、また地域貢献が求められる時代でした。そのため高齢化社会を迎え増えつつある皮膚悪性腫瘍を含めた外科的治療を拡充し、滋賀県の皮膚悪性腫瘍診療の中心的存在として診療を行っています。また、皮疹の見極めが重要な役割を果たす膠原病や、中毒性表皮壊死症などの重症疾患、そのほか稀少疾患を含め幅広い診療を行い、滋賀県の皮膚科診療をよりレベルアップさせています。更に、美容皮膚科としての診療も拡充しており、一般のエステサロンとは一線を画した科学的根拠・エビデンスに基づく美容診療を行っています。

 

 

新臨床研修医制度が導入されて以降、各大学とも人材の確保が困難になったことから滋賀県全体の地域医療が皮膚科医の不足をきたす状態となっているため、悪性腫瘍を含めた重症を中心に様々な疾患が当科に集中していますが、それらを一手に引き受けて滋賀県の地域医療の要として社会に貢献しています。

 

(2016.1.1)