家庭医療学講座の紹介

はじめに

滋賀医科大学の学則が平成20年1月9日に改正され、医学部医学科臨床医学講座の一つとして家庭医療学講座が新設されました。講座の理念・使命・行動計画・展望について紹介いたします。


「家庭医療学講座」の理念

家庭医療学講座は、地域全体の広がりの中で、疾病臓器・患者の性別・年齢・その他医学的技能の専門性にとらわれず、患者の抱える問題の大部分に責任を持って対応し、保健・医療・福祉・介護の各分野と連携・協調し、個人のみならずその家族および生活する地域を視野に入れた全人的医療がくまなく提供されることを目指し、そのために必要な良質の医療人育成と質の高い研究を行う。


「家庭医療学講座」の使命

  1. 全人的医療に堪能な良質の家庭医を育成する。
  2. 人間性豊かで生涯学習する医療人を育て、支援する。
  3. 地域立脚型医学教育を推進する。
  4. 地域包括プライマリケアの充実を図る。
  5. 保健・医療・福祉が連携した統合的なチームケアを推進する。
  6. 保健・医療・福祉各職種の育成段階から共通の価値観を育てる。
  7. 一般市民の医療リテラシーの向上を促進する。
  8. 地域医療支援研究を推進する。
  9. 地域に最適な保健・医療・福祉・介護体系を提案する。
  10. 健康で豊かな地域社会のための健康管理・教育体制の実践的な研究拠点となる。

「家庭医療学講座」の行動計画

  1. 日本家庭医療学会の認定するプログラムを後期研修医に提供し、良質な家庭医を育成するとともに、体系的な教育システムを充実させる。
  2. 学内における全人的医療教育の柱となり、他の専門分野にない独自性を高める(心身医学、代替・補完医療、コミュニケーション学など)。
  3. プライマリケア・リフレッシャーコース等の開催により、地域の医師、看護師等医療従事者の再教育、生涯学習を支援する。
  4. 地域に密着したプライマリケア、家庭医療学および予防医学の教育・研究・研修の場を設定する。
  5. 医学部学生に低学年より、地域医療、家庭医療や予防医学について十分な興味をもたせる。
  6. 滋賀医科大学医療福祉教育研究センターを通して、地域保健・医療・福祉・介護に関わる多職種のための研修会や講習会を設定し、多職種間の緊密な連携を図る。
  7. 滋賀医科大学医療福祉教育研究センターにおいて、保健・医療・福祉各職種の育成段階から共通の価値観を育てる具体的な方略を検討する。
  8. 一般市民と地域保健・医療・福祉・介護関連従事者が共に集い、高齢化社会における医療保健体制のあり方を議論する場を設定する。
  9. 各種学会の学術集会やワークショップ等を通して、総合医・家庭医のあり方に関する調査・研究を行う。
  10. 客員教授の所属機関であるミシガン大学医学部家庭医療学科やパリ・アメリカ病院との交流(研究者や研修医の派遣など)を活発化する。

「家庭医療学講座」の展望

人口の高齢化に伴う要介護者の増加、生活習慣病の増加、疾病の多様化・複合化などを考えれば、へき地か都市部かを問わず、地域医療に求められる医師が、疾病の診療にとどまらず、家族や地域を視野に入れ、保健・福祉・介護あるいは行政にも明るい包括的な総合医(家庭医)であることは自明のことと思われます。従って、このような人材を育て、この領域の包括的な研究を行おうとする「家庭医療学講座」は現代社会において大いに貢献できると考えています。是非皆様のお力添えがいただければ大変ありがたいです。


教授紹介

滋賀医科大学医学部医学科 家庭医療学講座 教授の三ッ浪 健一(みつなみ けんいち)です。私の経歴は以下の通りです。


学歴・職歴

1973年9月
京都大学医学部卒業
1973年12月
京都大学医学部附属病院医員(研修医)
1975年6月
静岡県立中央病院医員として循環器科に勤務
1978年4月
滋賀医科大学医学部助手として内科学第一講座に勤務
1986年3月
滋賀医科大学医学博士学位授与
1987年9月
滋賀医科大学医学部附属病院講師として第一内科に勤務
1990年1月
滋賀医科大学医学部助教授として内科学第一講座に勤務
1998年3月
滋賀医科大学医学部附属病院教授として総合診療部に勤務
2008年1月
滋賀医科大学医学部教授として家庭医療学講座に勤務
滋賀医科大学医学部附属病院総合診療部長を併任、現在に至る

所属学会・評議員等

  • 日本内科学会(2007年度より評議員として現在に至る)
  • 日本循環器学会(2010年より評議員として現在に至る。2002年6月に近畿地方会第93回学術集会会長)
  • 日本総合診療医学会(2005年5月に第13回学術集会会長)
  • 日本プライマリ・ケア学会(2003年度より評議員として現在に至る)

メッセージ

私が総合診療や家庭医療の道に進もうと決心したのは、循環器内科の外来でたくさんのお年寄りを永年にわたってみせていただいている中でできあがった暖かい信頼関係からでした。臓器別専門医は患者さんの病歴におけるいくつかの要所において大変重要な役割を果たしますが、その方の一生にわたって信頼関係を保ちながらお付き合いし支援しようとすると、幅広い年齢や疾患に的確に対応できる診断力や臨床力に優れた総合医の能力が必要になります。この非選択的に対応できるという臨床能力は、機能的な意味でれっきとした専門性であり、この専門性は、訓練を始める時期が早ければ早いほど効率的に身につくものと考えられます。
総合医は、病院総合医にしろ、地域の総合医(家庭医)にしろ、医療崩壊を阻止する最善の切り札です。一人でも多くの方が総合医や家庭医を目指されることを期待しています。