滋賀医科大学長



Ryuichi Kikkawa


E-mail: gakucho@belle.shiga-med.ac.jp


平成17年度のスタートにあたって
 −法人化1年の反省と2年目への展望−

平成17年4月1日

学長 吉川隆一(きっかわ りゅういち)


社会的にも大きな関心が寄せられて発足した国立大学の法人化でありましたが、法人化後の1年目を振り返ってみますと、改革に伴う様々な痛み、軋みが現れた1年であったと認識しております。法人化発足にあたっての平成16年4月付けの所信でも述べましたが、「スタートしてみないと分からない点が多くあるのではないか」との予測どおりでありました。しかし、予期せぬ事態が生じたことについては極めて遺憾に思っております。

<超勤問題について>
最初に、「業務内容の見直しと労務管理のあり方に関して」の痛みについてであります。法人化に際して最も重要視された課題の一つが「経営基盤の確立」であり、そのためには業務の効率化は避けて通れない事項であります。業務内容の見直しと改善が十分に進まない状態で、かつ労務管理の甘さが重なって、昨年労働基準監督署の調査を受け、更に本年に入って、調査結果に基づく勧告を受ける事態を招いたことに、深く反省している次第です。こうした事態を二度と招かないように、本年は業務内容の徹底した見直しと労務管理体制の確立を実施する予定です。病院については、4月から専任の副院長(経営・管理担当)として外部から京阪奈病院事務部長綿貫祝生(わたぬき いわお)氏を招聘し、外部からのかつ病院管理専門家としての目線で病院業務の見直しを進めてもらう方針であります。また、事務局については、現地採用職員からの課長登用などを含む事務組織の改組を進めると共に、新たに総務等担当理事として宇宙航空研究開発機構本部科学推進部長若林茂樹(わかばやし しげき)氏を迎えて、新たな風のもとで業務の効率化と労務管理の徹底を図りたいと思っております。

<経営基盤が確立された>
16年度当初予算の実質的削減も重なって生じた痛みではありましたが、教職員の方々の並々ならぬご努力により、16年度財務状況は大変良好な状態となることが、最近の分析結果から、明らかとなりました。法人化後の重要課題としていた「経営基盤の確立」がこの一年で達成される見通しとなり、学内外の多くの方々のご努力が報われる結果となるものと確信しております。16年度に得られた持続可能性のあるこの成果を是非17年度に生かしていきたいと計画しております。先ず、病院での診療要員を増やす計画を立てております。既に、看護部では定員を16名超える採用を行いました。薬剤部も3名程度増員すべく、募集を始めております。更に、医師についても増員を行いたいと思っており、現在実施案を病院長の下で作成中であります。こうした診療要員の増員は、現在の診療環境改善の一助になるものと考えており、しいては大学本来の使命である教育・研究活動を活性化させることにもつながってくると期待しております。同じく16年度に決定した病院の再開発計画は、17年度に始まる診療施設・設備面での改善を目的としており、本年度を人的・物的両面での改革元年と位置付けて改革の歩みを継続していく所存であります。

<教育研究活動の環境整備を目指す>
経営基盤の確立は診療面での改革を可能としただけでなく、大学における教育研究活動を活性化する資源をも生み出すことが可能になると考えております。先ず、内外の研究者用のスペースを拡充すべく「ベンチャーラボ」ないしは「インキュベーションセンター」の建設へ投資すること、学生のための福利厚生施設の整備等を計画しております。また、一定額の資源を直接的な研究助成枠拡充に活用することも可能となるのではないかと考えております。更に、「保育所」となる新たな建物の建設も可能であり、現在ワーキンググループを立ち上げて検討して頂いております。

<学長選考について>
次に、「学長選考に関して」の軋みについて触れておきたいと思います。法人化により学長選考の仕組みが大きく変わったわけですが、法人化後初めての、かつ一年目での学長選考であったことから、仕組みの変化が教職員に十分に理解されていなかったように思われます。意向聴取の投票結果と学長選考会議の出した結論が異なっていたことは、当事者の一人であった小生にとっても、変化の大きさをあらためて認識させられる事態でありました。国立大学法人法第12条には「学長の任命は国立大学法人の申し出に基づいて文部科学大臣が行う、この申し出は学長選考会議の選考により行うものとする」とあります。法人化を前にして本学においても慎重に審議を重ねた結果、この法案の趣旨を受け入れ、特に役員会からの独立性を確保した形で、学長選考会議の設置を機関決定した経緯があります。個人的には様々な思いがありますが、学長選考会議が出された結論を重く受け止め、次期学長候補者の指名を受諾し、本日文部科学大臣より学長の辞令を受け取りました。

<新年度に向けて>
本日より、3年の任期で再度学長を務めさせていただくことになりましたが、森田陸司医療等担当理事(病院長、副学長)、馬場忠雄教育等担当理事(副学長)、村山典久経営等担当理事にも引き続き勤めていただきます。昨年、開学30周年を祝った本学でありますが、30年間に培った土台の上に、新たな歩みを始める時期であると認識しております。本年の年頭所感で述べた如く、本学では未来の発展につながると思われるいくつかの「芽生え」が見られます。例えば、文科省の17年度特別教育研究経費への申請課題の中で、教育面では昨年に引き続き現代GPプロジェクト「産学連携によるプライマリ・ケア医学教育」が認められると共に、「医療人育成教育研究センター」、および「助産師コースの設置」への助成が新たに認められました。また、研究面では「人獣共通感染症に関する基礎研究連携事業」が新規プロジェクトとして認められると共に、16年度に認められた大型研究プロジェクトである「MR画像による生体内標的幹細胞の研究」(基盤S),「MR画像対応手術支援機器の開発」(科学技術振興機構研究助成)も2年目を迎えます。こうした活動が順調に成長していくよう学長として側面から支援する体制を整えていきたいと思っております。更に、病院再開発プロジェクトが本年度より5年計画で始動しますので、本計画が順調に進められよう全面的な支援体制を構築する方針であります。

学長職の難しさを強く自覚させられた法人化後の一年でしたが、多くの教訓が得られた貴重な一年でもありました。今後、多くの教職員の協力が得られるよう努めつつ中期目標・計画に掲げた改革を引き続き推進し、学内外の関係者と心を一つにした大学運営に当ってまいりたいと決意しております。
どうか引き続き、ご支援、ご協力をよろしくお願い申し上げます。


(学長専用メールアドレス:gakucho@belle.shiga-med.ac.jp)


年頭所感2005 −芽生え−(平成17年1月1日)

法人化を向かえて −改革へ前向きの挑戦を− (平成16年4月1日)

年頭所感2004 −未来への第一歩− (平成16年1月1日)

新年度(平成15年度)の初頭にあたって(平成15年4月16日)

年頭所感2003 −試練の年− (平成15年1月1日)

年頭所感2002 −競争と協調を目指して− (平成14年1月1日)

学長就任の挨拶(平成13年4月1日)