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勢多だより

No. 10

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トピックス | 

Topics

すが、医学科と看護学科が同じ教室で学び、また課外

活動などを一緒に行うことは、将来チーム医療を協働

して進める上でも大いに役立つと信じています。

皆さんが医療人として活躍するためには、医師や看

護師の国家試験に合格しなければなりません。これら

の試験では、教室で学んだ基礎から臨床にわたる知識

だけでなく、臨床実習の現場で遭遇する患者さんの所

見や診断手技・看護技術などをきちんと理解している

かを問う問題が近年増えています。医学・看護学の学

習は積み上げが大切ですから、これから皆さんが学習

する一つ一つの科目を確実に習得し、決して途中で躓

くことがないように自らをコントロールしていただき

たいと思います。困難と感じることがあれば、すぐに

皆さんの仲間、担任の先生、学生課の職員などに相談

してください。

これまで主として勉学について申し上げましたが、

皆さんが大学で友人を作り、健康で楽しい学生生活を

送ることも重要です。本学ではクラブやサークルなど

の課外活動が盛んであり、浜松医科大学との定期的な

交流戦などもあります。学業の合間の余暇を見つけて、

ぜひ課外活動も楽しんでください。

皆さんは「リレー・フォー・ライフ」という言葉を

聞いたことがあるかもしれません。これは、がん患者

やその家族の方々を支援し、みんなでがん征圧を目指

すチャリティー活動です。これまで世界25カ国、約

6000カ所で開催され、日本でも50カ所近くに広まって

います。昨年の10月には「リレー・フォー・ライフ・

ジャパン 2016 滋賀医科大学」が、日本対がん協会の

主催、滋賀医科大学と環びわ湖大学・地域コンソーシ

アムの共催で、この滋賀医大キャンパスで開催されま

した。学生が主体となって行う「カレッジ・リレー」

としてのわが国初の開催でしたが、本学の学生ボラン

ティアの皆さんが中心となって大きな成功を収め、メ

ディアでも報道されました。今年はカレッジリレーの

2 回目として10月 8 日、 9 日の両日、再び本学構内で

開催されます。こうした活動に参加してがんサーバイ

バーや支援の方々と交流することは医科大学の学生に

とって意義が大きいと思います。

皆さん一人一人がこれからの大学生活で勉学とその

他の活動に全力を尽くし、 4 年後、 6 年後に迎える卒

業の日に真の達成感と充実感、そして大きい喜びを味

わっていただくことを願っています。

さて、大学院では、博士課程と修士課程へ併せて36

名の皆さんを迎えました。この中には、 5 名の外国人

の方もおられます。大学院の数年間は、自らの関心と

アイデアに基づいて自由に発想し、研究活動に集中で

きる貴重な時間であります。皆さんには、困難と思わ

れる研究テーマにも果敢に挑戦していただきたいと思

います。

滋賀医大では、アルツハイマー病を中心とした神経

難病研究、サルを用いた医学生物学的研究、非感染性

疾患(生活習慣病)を中心とした疫学研究、癌治療研

究などを重点研究の柱として推進すると共に、各研究

者の発想に基づく多様な研究を推進しています。大学

院時代は研究者としての素養と能力を磨く期間です

が、その中で研究者としての自覚と正しい研究倫理を

身につけてください。

最近、毎年のように日本人がノーベル賞を受賞し、

わが国の科学界の存在感が増しています。しかし、日

本の科学研究の現状は決して楽観できる状況にはあり

ません。科学雑誌Natureがこの 3 月23日に日本の科

学研究に関する特集号を出しました。その中で、日本

の科学研究が過去10年間に明らかに失速し、世界の科

学界でのリーダーとしての地位が危うくなっていると

警鐘が鳴らされています。世界の科学雑誌に掲載され

た論文の総数が過去10年間に全体で80%も増加したに

もかかわらず、日本からの論文数はわずか14%の伸び

にとどまっています。また、自然科学系のトップジャ

ーナルに掲載された論文が、中国などで大きく増加し

ている一方で、わが国からの論文は過去 5 年間で 8 %

以上減少していると指摘されています。別のデータで

は、上位10%のすぐれた論文に占める日本発の論文の

シェアが、過去10年間に基礎生命科学で 5 位から11位

に、臨床医学で 5 位から10位へと大きく後退しました。

こうしたことの原因はいろいろあると考えられます

が、研究の主力を担う国立大学への国の予算が過去10

年以上に渡って削減され、特に若い研究者のための安

定的なポストが減少したこと、目的志向型の短期の研

究費が増えて自由な発想で大きな研究テーマに取り組

むことが難しくなったことなどがあると思われます。

また、日本から外国へ留学する若者が減少しているの

も、気がかりな傾向であります。こうした状況を打破

するために、われわれ大学人は強い危機感を持って対

応に努力しています。皆さんには、パズルの穴埋めで

ないインパクトのある研究を心がけ、わが国の科学研

究の復権にも貢献していただくことを願っています。

本日、滋賀医科大学へ入学された皆さんの学生生

活、大学院生活が楽しく、そして充実したものになる

ことを心から祈念し、お祝いの言葉といたします。

平成29年 4 月 4 日