第10回分子神経科学研究センター主催セミナーを開催しました。


日 時 : 平成23年1月18日(火)18:00~19:00
場 所 : 滋賀医大 バイオメディカルイノベーションセンター 1Fセミナー室

演 題 : 認知症専門クリニックと専門病院の役割分担を考える
                   ― もの忘れクリニックの11年の活動から ー
講 師 : 藤本直規(守山市 藤本クリニック)

滋賀県立成人病センターで、日本初ともいえる「もの忘れチェック外来」を開設、独立後に開設した藤本クリニックで、「認知症になったことはあきらめるが、これからの人生はあきらめない」と決めた人々と真正面から向き合い、「認知症医療」と「根拠のあるケア」に、精力的に取り組んでおられます。



藤本 直規先生によるセミナー

遠山 育夫教授による藤本先生の紹介

セミナーの様子

左から堀江教授、藤本先生、遠山教授、大川特任教授

【抄録】
 臨床現場で認知症患者、家族、かかりつけ医などが訴える最も多い悩みは「診断」出来る専門医が少ないことと、その存在が周知されていないことである。
また、診断後の本人と家族に対する「告知」と「経過と予後の説明」では、適切な治療とケアの環境、家族の支援を提供すれば、認知症患者と家族は尊厳を保ちながら暮らせることを信念を持って伝える必要がある。
治療では、軽度認知症患者やMCIに対する「心理的サポート」とBPSDに対する指導および薬物治療を行なう。家族に対しては、中核症状への理解と対応を指導したり、心理的サポートといった「家族支援」も専門医の役割である。また、身体疾患の治療を担うかかりつけ医や一般病院の医師に対して情報提供する「医療•医療連携」を行なう。
さらに、介護保険制度の紹介、担当者会議への出席、地域包括支援センターへの協力、成年後見制度の紹介、ケアマネジャー、ケアスタッフなどや家族会との連携、啓発活動などを行なうことが望まれる。
専門医が活動する医療機関の違いによって、これらの「地域活動」を行なうことが困難でも、多職種との連携を行なうことで、少なくとも、診断後のことにはあまり関わらないという状況をつくらないことは可能である。
 本発表では、もの忘れクリニックである藤本クリニック11年の活動の紹介をすることで、若年から高齢者まで、軽度から重度までの、認知患者と家族に対して必要な治療とケアについて紹介するとともに、認知症専門クリニックと専門病院の役割分担を考えてみたい。