医学部学生教育システム

 

医学部学生へ

〜脳神経外科は、日常診療において、また人類にとって極めて重要な領域です。情熱と誇りを持って一緒にやりませんか。〜

 

脳神経外科教育システム

中枢神経系(脳、脊髄)は、ヒトがヒトであるために最も発達してきた重要な構造物です。医学の発展とともに多くの臓器の再生・移植や機能補助機器の開発が進んでいくことが期待されていますが、再生・移植医療や最新機器などの開発により個人が生後から身につけてきた記憶、知識、思考、言語、人格などを再度獲得させる、つまりヒトを再生させることができるまでの道のりは無限と思われます。脳神経外科では、中枢神経系に臨床、研究の両面から関与できること、外科的治療のみでなく外科的知識を持ちながら非外科的治療を扱うことができること、最先端の外科治療のエキスパートになれること、救急医療にたずさわれること、全身管理ができること、など多くの魅力があります。外科治療としては、純粋な外科治療である顕微鏡手術のほか、将来発展の余地が大きい血管内治療、定位放射線治療、内視鏡治療などにも直接関与することができます。脳ドック、予防医療、リハビリテーションなどで勤務したり、また、病院勤務を止めて開業を目指す場合でも、脳神経外科において獲得した知識や技術が大いに役立ちます。

当院の脳神経外科では平成204月より、教育システムが大きく変わりました。第1〜3学年において獲得した解剖学、生理学、薬理学、病理学などを基盤として、第4学年に「自主研修」を選択していただきます。自主研修では、臨床体験として、顕微鏡下での血管吻合術、血管内治療手技、神経内視鏡手技などに触れていただきます。基礎研究体験として、学内、学外において、神経細胞培養、動物モデル作成などの補助、臨床に基づいた解剖実習への参加をしていただきます。また、海外研修として、世界有数の研究室での短期滞在を行っています。第5学年の臨床実習カリキュラムにおいて12名の非常勤講師による臨床講義、症例検討、また、手術参加などを通して、臨床現場を体感していただきます。さらに、脳神経外科に興味がある方を対象としたアドバンスコース(第6学年6-7月)では、病棟での患者管理、実際の手術に参加していただき、基本手術手技の習得をしていただくとともに、血管を用いた顕微鏡下での吻合練習、手術アプローチに基づいた解剖実習コースへの参加、救急患者への対応を目指したISLSコースへの参加、基礎研究や臨床研究への参加などを行っていただきます。

血管吻合を含めた顕微鏡手術手技の練習は常時可能ですまた、年1回の臨床解剖実習、年数回のハンズオンセミナーなどを通して、脳神経外科手術手技を体験することができます。

 

中枢神経系の治療・手術手技、脳神経外科の終わることのない深遠な研究に興味のある方の積極的な参加を待っています。

 

脳神経外科に関する学年毎のタイムスケジュール

<医学部>

1回生 医学概論

 2回生 解剖実習

 3回生 神経系講義および定期試験

 4回生 自主研修(学内・学外)

      顕微鏡下での血管吻合術、血管内治療手技、神経内視鏡技術の体験      

神経細胞培養、動物モデル作成などの補助

臨床に基づいた解剖実習への参加

世界有数の研究室の短期滞在

 5回生 臨床実習

      症例検討、臨床における顕微鏡手術の世界を体験

 6回生 アドバンスコースへの参加

      脳神経外科における検査、手術、術後管理への直接参加、臨床解剖への参加

<初期研修>

 脳神経外科に関わらず、外科系志望の方は、救急部、麻酔科での研修は重要です。初期研修2年目では最低1ヶ月以上は脳神経外科を選択していただくと、初期から経験すべき症例数を増やすことができます。また、なるべく早く脳神経外科における管理方法、診療技術を習得していただいたほうが、早い時期から多岐にわたる技術を身につけることができます。入局は医学部卒業後のいずれのタイミングでも可能ですが、将来のキャリアパスを考えると、早ければ早いほうがよいと思います。脳神経外科への入局後は、原則として最低1年間は滋賀医科大学附属病院で研修していただき、臨床、研究への関わり方、論文の読み方、作成のしかた、疾患ではなく患者を診ることの重要性などを学んでいただきます。

<後期研修>

大学および研修病院、関連病院において、各施設の専門性や救急疾患への対応などを考慮しながら、脳・脊髄血管障害、脳・脊髄腫瘍、脊椎脊髄疾患、小児疾患、外傷、機能外科などを勉強していただき、血管内手術、内視鏡手術、定位放射線療法などの手技を広く習得していただきます。

脳神経外科学会が定める研修プログラムに則り、卒後6年間で必要な症例を経験していただき、卒後7年目の夏に脳神経外科専門医試験を受けていただきます。のちは、さらに専門性を高める臨床経験を積んでいただくか、大学院受験をしていただきます。症例を重ねて、脳血管内治療、神経内視鏡、脊髄外科などの専門医を取得することができます。国内留学、海外留学も積極的に推奨しています。

 

1週間の大学病院病棟スケジュール>

月曜日 8:00          病棟カンファレンス

16:00          術前カンファレンス

 火曜日               血管内治療・手術

 水曜日 午後          手術

 木曜日 7:30          病棟カンファレンス 

手術

 金曜日               血管内治療

      14:00 術後カンファレンス

     16:00 抄読会・院生カンファレンス

 

〜技術習得の道〜

 脳神経外科における技術習得には、基本的技術と専門性の高い技術があり、各先生方の進む道により内容やタイムスケジュールが変わります。原則として、各技術が上級者の直接介助なく達成できることを目安とします。顕微鏡手術に関する技術は、スタート時期が若ければ若いほど上達します。技術習得のためには、手術器具を手元においておき、何時でも触れるようにしておくこと、顕微鏡、カテーテル、内視鏡などの機器の扱いに慣れておくことが大事です。当科では学生の時から脳神経外科手術に触れることができるような環境作りを行っています。いつから手術ができるかではなく、修練を積めば専門医取得の時(卒後6年目)には血管吻合術や脳動脈瘤のクリッピングまで行うことが可能です。

<入局後1-2年間>

      脳神経外科疾患の病態の把握、診断ができ、治療方針を示すことができ、各疾患の術前術後管理ができる。

      症例検討を行い、研究会や学会での発表、論文作成をすることができる。

      全身管理と呼吸循環管理に必要な手技(気管切開、中心静脈ルート確保、呼吸器管理、蘇生、全身麻酔、腰椎穿刺など)ができる。

      脳神経外科に特有な検査(脳血管撮影、脊髄造影など)ができる。

      シャント術、穿頭術(慢性硬膜下出血、定位的生検術など)ができる。

<入局後34年間>

      基本開頭、脳内血腫除去術ができる。

      血管内手術補助、内視鏡手術の直接補助ができる。

<入局後56年>

      椎弓切除術、頭蓋底に及ぶ開頭術ができる。

      脳表の小さな腫瘍性病変を摘出することができる。

      脳表での血管吻合を行うことができる。

      脳溝やシルビウス裂などを開き脳深部へ到達することができる。

      上級者の直接指導のもと脳動脈瘤のクリッピングを行うことができる。

 

また、脳神経外科では外科的治療は勿論のこと、薬物治療、リハビリテーション、脳ドック、予防医学など非外科的領域にも大きく関与しています。将来に病院勤務から離れることを考えている場合、また結婚や出産を考える女性の場合でも、多くの選択肢が可能となります少しでも興味のある方は、何時でも相談してください。

 

脳神経外科学講座

教授 野崎 和彦

TEL: 077-548-2257(携帯090-7871-8739

E-mail: noz@belle.shiga-med.ac.jp


   解剖実習の様子   
                                 
                                    解剖実習の様子


   

                           EVEを用いた血管内治療の実習


   

                               脳血管内手術実習の様子