色覚異常の人がどのように見ているのかというのは、 色が感覚量であるので、なかなか理解することは難しいのですが、
どの型の色覚異常にも共通していえることは、色の区別が正常の人と比べると少し苦手だということです。 色覚異常の人の錐体は大まかな分類では2種類ですから、
ある2つの色を区別するのに、主に3番目の錐体がはたらいているような場合、そういう色の組み合わせは同じか、非常によく似た色に見えるのです。
つまり正常者には区別できる色が異常者には区別できない場合があるということです。 その結果として、似ている色の組み合わせが正常者とは違ってきます。たとえば、赤、オレンジ、黄緑、
青緑という4種の色を考えてみますと、 正常者には当然赤とオレンジ、黄緑と青緑が似た色の組み合わせになるのですが、
異常者には赤と青緑、オレンジと黄緑という組み合わせが互いによく似て見えることになります。
色の呼び名について、赤や緑を他の色に取り違えるのなら、 逆の色名をおぼえておけばよいと思われますが、色覚異常の場合は色の区別ができず、
そのために取り違えるのですから、色の呼び名の問題ではありません。たとえば、緑色を茶色に間違えることがよくありますが、緑がいつも茶色に見えるのではなく、
形や明るさ、色の面積など周囲の状況によって、ある時は茶色に、ある時は緑色に、 また別の時は灰色に見えたりするというわけです。
灰色と赤、灰色と緑を区別させる検査をしますと、1型色覚では緑は区別できますが、赤と灰色が大変まぎらわしく区別しにくく、 逆に灰色と緑色との区別のつきにくいのが2型色覚です。赤や緑が灰色っぽく見えるだけではなく、逆に灰色が赤や緑に見える場合もあるようです。しかしこのような見え方から1型と2型を区別することは実際上は不可能です。また、2色覚(
2色型色覚)と異常3色覚(異常3色型色覚)との区別も、 このような色の見え方による検査では間違ってしまいます。正しい診断には アノマロスコ−プという少し特殊な検査をしなければなりません。
赤と緑は互いに対極にある色として感じていますが,そのためにはL錐体とM錐体の両方の働きが必要です。この一方が働かないと赤み,緑みを感じなくなるか大変弱く感じることになります。ですからたとえば黄+赤であるオレンジ色と黄+緑の黄緑色が同じか大変良く似た色と感じるのです。明るさ,鮮やかさが同じ程度で緑,赤の違いで区別している2色は大変似ていることになります。赤と緑,オレンジと黄緑,深緑と茶,青と紫,ピンクと白,緑と灰色,濃い赤と黒,ピンクと水色などなどですね。
1型色覚の人は赤を少し暗く感じており、 2型色覚の人は緑を灰色っぽく感じています。
色覚異常の方が間違いやすい色の組み合わせをサンプルとしてお示しできるとよいのですが、微妙なところは異常者の方の協力がないと正しいものができません。
従来から色覚異常の方がどのように見えているのかをテーマとしての研究があり、その成果(シミュレーション)が報告されています。しかし今まではこのページに貼り付けて使えるようなものはなかったのです。
リンク先として紹介してあります「ぱすてる」の掲示板に画像ソフトで使う色覚異常の見え方をシミュレートするソフト(フィルタ)が紹介されていました。早速ダウンロード(フリーソフトです)して、よく色誤認例として言われる場面に使ってみました。以下にその画像を示します。ただこのソフト(Vischek)は2色覚(2色型色覚)のシミュレーションで、色覚異常の過半数を占める異常3色覚(異常3色型色覚)ではこのように極端には見えていないと思います。また2色覚の人が実際このように見えているのかということはなかなか難しい話ですが、元画像とフィルタで変換した画像の区別が2色覚の人にとって大変難しいものになっているとしたら、大体このように見ていると考えてよいのでしょう。またディスプレイにより色が違うという問題もあり、簡単ではありませんが、この画像を見られた2色覚の方、何かコメントを頂きますとありがたいと思います(syamade@bell.shiga-med.ac.jp まで)。
では画像を貼り付けます。左から元画像、1型2色覚、2型2色覚のシミュレーションです。 色誤認の場面としてはもっといろいろあると思いますが、とりあえず手持ちの画像を使いました。順次追加、訂正して行きます。
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