Q1 顎関節症とはどの様な病気でしょうか?
顎の関節は耳の前にあり、頭蓋骨の一部の下顎窩と呼ばれる“くぼみ”の中に下顎頭(下顎骨の最上端部)の突起が入り込んでいます。下顎窩と下顎頭の間には関節円板というクッションのような構造物があり、これが顎の運動時に発生する下顎窩と下顎頭の摩擦をなくす働きをしています。かみ合わせや顎運動のストレスによってこの関節円板に支障が発生すると、顎の運動時に関節内に摩擦が生じて、顎関節の痛み、雑音、口があけられないなどの障害を引き起こします。
Q2診療に当たってはどの様な検査が必要でしょうか?
当科では問診・触診を十分に行った上で、エックス線写真撮影を受けていただきます。
エックス線写真では関節円板の具体的な情報が得られませんので、必要に応じて
MRI検査(予約検査)を受けていただきます。
口を開けた状態でMRI撮像
Q3どの様な治療法があるのでしょうか?
1.薬物療法
鎮痛剤や筋肉のこりをほぐす薬を処方します。
2.生活指導
食事の形態や顎のマッサージ法などを指導します。
3.スプリント療法
夜間のみ装着するマウスピースを作製します。これは寝ている間に顎関節にかみ合わせによってストレスが かかることを防止するためのものです。
4.関節腔洗浄
1.2.3.の治療法においても、顎の痛みや口の開き方が改善しない時は、関節円板の入っている関節腔を生理食塩水で洗浄したり、薬物を注入して症状の改善を図ります。この治療法は写真にあるように注射針を使用しますが、メスを用いないために顔に傷は残りません。
関節腔洗浄の様子
Q4顎関節症の治療の成功率は?
治療期間の長短はありますが、ほとんどの症状は初期治療(薬物治療・生活指導・スプリント療法)で解決することが多いです。口が開かなかったり、顎の痛みが著しい場合は、速やかに関節洗浄療法を受けていただくことをお勧めします。この治療法による当科設定の治療効果判定基準では、約80%の症例で症状の改善を認めています。(平成14年〜平成16年当科資料より)。
この疾患は治療を開始する時期が重要です。治療開始時期が遅れると、本来得られるべき治療結果を得ることが困難となってきます。思い当たる症状がある方はお早めにご相談下さい。