歯科領域で見られる炎症のはじまりの多くは、齲蝕<むし歯>です。むし歯は歯質が、
口腔内に常在する細菌に侵されることによって出来ます。はじめは歯の表面だけですが、
放置すると段々深部まで進行し、歯髄<歯の神経>までも侵され、膿瘍<うみ>が形成
され、激しい痛みを伴います。これを歯髄炎といいます。侵された歯髄が壊死すると、
歯の痛みが治まることもありますが、これを更に放置すると、歯根や歯槽骨<歯を支える骨>
にまで感染が及び、うみが溜まります。

左の写真は歯に穴を開けたところ、
うみが溢れ出している様子です。
右の写真の様に、歯の中の清掃をす
る必要があります。
この処置を行わずに更に放置
すると、歯槽骨の外側の頬の
粘膜にまでうみが溜まり、右
の写真の様に顔が腫れてきま
す。

ここまで進行すると痛みだけでなく、発熱や全身の倦怠感、口臭、首のリンパ節の腫れなどの症状
を伴うことが多いです。当科ではこの段階まで進行した患者さんが、たくさん来院されます。
この場合、口腔内あるいは口腔外に切開し、うみを排出させ、出口が塞がらないように、ドレーン
を留置します。更に感染を抑えるために数日間 抗生物質の点滴を行います。
    
口腔内の切開 口腔外の切開 切開後ドレーンが留置されました
                      
このような事態に陥らないよう、歯の痛みを感じたら、早めに歯科医院へ行きましょう。