口腔粘膜は、舌、歯肉、頬、口唇、口蓋などを覆っている軟組織です。この粘膜に発生する病気を総称
して口腔粘膜疾患とよんでいます。口腔粘膜疾患は、口腔粘膜に限局して現れる病変の他に、皮膚疾患と
関連のある病変、内蔵疾患などの全身疾患の部分症状として現れる病変もあります。ウイルスや細菌など
の局所感染症、自己免疫疾患、薬物・金属アレルギー、色素沈着、白板症などの前癌病変、など非常に多
くの病変があり極めて多彩です。
病変の形態は、水疱、びらん、潰瘍を形成するものがあり、また赤、白、黒と様々な色を示します。これ
らの形態や色調は、時期により変化したり、混在したりする場合も多く診断を困難にしています。このため
診断には、いままでの病気の経過、発症状況、皮膚および全身状態との関連を知ることが重要です。必要に
応じて、血液検査や病変の一部を取って病理組織学検査を行ったりアレルギー検査を行うことがあります。
このように疾患特有の症状がとらえにくく、時には悪性腫瘍の初期症状や難治性疾患であったりすることも
あるので、口腔内に変化を見つけたら早目に歯科医に相談することをおすすめします。
これらの口腔粘膜疾患のうち当科でのケースの一部を紹介します。
白板症
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原因:原因は不明で、慢性の機械的刺激や喫煙などが 誘因とされています。 特徴:自覚症状はありません。白斑や、紅斑が混ざった もの、凹凸の、平坦なものなど、多彩です。癌化 するものもあります。 治療:当科では、外科的切除を多く行っています。 |
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扁平苔癬
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原因:原因は不明です。 特徴:白く細いレース状あるいは網目状を示すものが 多く紅斑、びらんを伴うものもあります。頬粘膜 に多く見られます。 治療:外用薬を主体とする対症療法を行っています。 |
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褥瘡性潰瘍
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原因:不適合な義歯や修復物などによる慢性的な外傷性刺激。 特徴:接触痛があります。長期に渡って放置すると癌化する こともあります。 治療:原因となった刺激の除去を行うと約7〜10日で治りま す。 |
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