非ヒト霊長類モデルにおけるH5N6高病原性鳥インフルエンザウイルスに対するノイラミニダーゼ阻害薬の有効性
Efficacy of neuraminidase inhibitors against H5N6 highly pathogenic avian influenza virus in a non-human primate model.
季節性インフルエンザ(N1とN2)と異なるノイラミニダーゼをもつH5N6高病原性鳥インフルエンザウイルスは2013年に初めて発見され、中国では鳥からヒトに感染し、重症肺炎を起こすことが報告さています。この亜型のウイルスは、人では68.4%の高い致死率を示します。また、多くの国で家禽と野鳥に検出され、世界的に鳥から人への感染が懸念されています。さらに人類では流行したことがないため、人はH5N6亜型ウイルスに対して免疫を有さず、ヒトの間に感染するような変異を獲得した場合に大流行となる可能性があります。H5N6亜型のウイルスに対して、現在使用可能な抗ウイルス薬が効くのかがまだ明らかではなありません。そこで私たちは人間に遺伝的に近いカニクイザルに日本で黒鳥から分離されたウイルスを感染させ、ウイルスの病原性と抗ウイルス薬の有効性について研究しました。
実験ではサルにH5N6ウイルスを感染させて、翌日から感染後5日目まで毎日生理食塩水、オセルタミビル、ペラミビル、アマンタジンを投与しました(上図)。
【結果】
投薬治療群では、鼻内のウイルス量が生理食塩水群と比べて低いので、 3つの薬は ウイルスを抑制する効果があると考えられました。オセルタミビルとペラミビルの治療グループでは ウイルスが早くに検出されなくなりましたが、アマンタジン治療群ではウイルスが検出され、効果が低いことが分かります(下図)。
【結論】
H5N6ウイルスに対して、既存のノイラミニダーゼ阻害薬(オセルタミビルとペラミビル)が有効であることが確認されました。2020年から2021年にはH5N8亜型ウイルスが日本国内だけではなく、世界中の鳥類で確認されているので、季節性インフルエンザウイルスと異なるノイラミニダーゼをもつウイルスに対する治療薬の研究を継続する必要があると考えられます。
