診療内容紹介

肥満手術

TOPICS

・2013.10.11 肥満手術サイトの内容を一新しました。

・2013.09.03 IFSO2013(肥満外科学会)でも、私たちの研究が注目されました。現地のbariatric newsのダイジェスト版(web;http://www.bariatricnews.net/?q=news/111056/lsg-involved-glp-1-secretion-mechanism)

肥満外科治療とは



<肥満外科のご紹介>


 今や肥満は世界的な「流行病」であり、現在世界の成人で14億人とされる肥満人口は年々増加し、今後の20年で世界の成人人口の半数以上が肥満となる可能性があるとも言われています。我が国においても、肥満の指標であるBody mass index(BMI)25kg/㎡以上の肥満者の割合は、男性3割、女性2割にのぼります(厚生労働省の「国民健康・栄養調査」2013)。


さらに肥満は、糖尿病、高血圧、脂質代謝異常などの生活習慣病の誘因となり、いわゆるメタボリック症候群を含むさまざまな健康障害を来すことが知られていますが、日本人には内臓脂肪型肥満が多く、BMIが比較的低くてもメタボリック症候群を主とする肥満に関連する健康障害を起こしやすいことが、大きな問題となっています。
 肥満治療の基本は食事療法・運動療法などの内科的治療ですが、BMI≧35kg/㎡の高度肥満の患者さんでは、長期的にみると多くの患者さんで減量治療が成功しないことが多いのです。


このような患者さんのために行われる外科治療が近年注目されています。海外では肥満に対する外科的治療は、世界で年間40万件を超え積極的に行われていますが、日本では保険診療として承認されていないこともあり(正確には、一部の開腹下の肥満外科手術は保険適用ですが、現在ほとんどの肥満外科手術は患者さんのメリットを考慮して腹腔鏡下に行われています)、年間200件に満たないのが現状です(2012年現在)。2010年、日本で腹腔鏡下スリーブ状胃切除術が先進医療として承認され、当院では腹腔鏡下胃スリーブ状切除術が2011年1月より先進医療(427,000円)に承認されました。


<外科的治療の適応>


当院での肥満症に対する外科的治療の適応としては、原則的に以下の通りです。
1年以上の内科外来通院治療、1回以上の入院治療、糖尿病治療にもかかわらず減量しない、もしくはリバウンド された方で、
BMI35kg/m2以上 
の方です。        


*肥満に起因する合併症:
耐糖能障害(2型糖尿病・耐糖能異常)
脂質異常症
高血圧
高尿酸血症・痛風
冠動脈疾患:心筋梗塞・狭心症
脳梗塞:脳血栓症・一過性脳虚血発作
脂肪肝(非アルコール性脂肪性肝疾患)
月経異常、妊娠合併症(妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病等)
睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
整形外科的疾患:変形性関節症(膝・股関節)・変形性脊椎症・腰痛
肥満関連腎臓病
その他、さまざまな臓器の機能等、細かな条件があります。(詳しくは直接ご相談ください。)


<肥満外科的治療の種類>


外科的治療の手術術式はさまざまなものがあります。
世界的には次図の(vii)の胃バイパス術(Roux-en-Y gastric bypass)が標準的な手術術式です。しかし、近年シンプルな術式である袖状胃切除術(Sleeve gastrectomy, スリーブ状胃切除術)(次図(iii))が世界で注目され、施行件数が増大傾向にあります。それは胃バイパス術ほどではありませんが、減量効果があり、軽度であれば2型糖尿病等の一部の、肥満に起因する合併症を改善する効果も認められることがあるからです。また日本では世界的に見て胃癌の罹患率が高く、胃バイパス術を行うと術後胃の検査が難しくなるので胃バイパス術を施行しにくいという背景があります。
当院では2008年より減量手術である腹腔鏡下袖状胃切除術および腹腔鏡下胃バイパス術を施行しており、2010年に厚生労働省より腹腔鏡下袖状胃切除術が先進医療として認可されました。現在までに腹腔鏡下袖状胃切除術を28例施行しています(2013年9月現在)。





<当院における腹腔鏡下袖状胃切除術の成績>


肥満症に対する外科的治療で効果が出る最大の理由は、患者さんの生活環境や生活習慣を変えるからです。手術をしても、これらが変えられなければ、治療効果をあげることはできません。手術は生活環境や生活習慣を変えるきっかけに過ぎません。これらが変わらなければ体重は減らず、肥満に関連した合併症も改善しません。

生活環境や生活習慣を変えるために、当院の減量治療では、内科医、外科医、慢性疾患看護専門看護師、管理栄養士、臨床心理士、リエゾン精神看護専門看護師、内科及び外科病棟看護師等で構成される医療チームで治療を行っています。
この治療は、決してひとりの患者さんやひとりの医療従事者だけでできる治療ではありません。
また、手術して終了する治療ではなく、手術後も専門的な食事療法や生活改善、サプリメントの内服等の治療の継続が必要です。






下の表は当院で腹腔鏡下袖状胃切除術を受けられた方の体重、体重減少量、BMIの変化を示しています。





<肥満関連合併症の治療効果(2013年9月現在)>


2型糖尿病:
術前に2型糖尿病をお持ちであった方は15名でした。そのうち、手術後にインスリンや2型糖尿病に対する内服薬等が不要となり、血液検査も正常となった(=寛解した)方は9名(60.0%)でした。インスリン等の薬の量が減った(=改善した)方は、寛解した方と合わせて15名(100%)でした。


高血圧:
術前に高血圧をお持ちであった方は16名でした。そのうち、手術後に降圧薬が不要となり、血圧が正常となった(=治癒した)方は11名(68.8%)でした。降圧薬が減った(=改善した)方は、治癒した方と合わせると15名(93.8%)でした。


脂質異常症(高脂血症):
術前に脂質異常症をお持ちであった方は17名でした。そのうち、手術後に脂質異常症に対するお薬が不要となり、血液検査も正常となった(=治癒した)方は6名(35.3%)でした。脂質異常症に対するお薬が減ったり、値が改善した方は、治癒した方と合わせると10名(58.8%)でした。


ただし、以上の結果は今後手術件数の増加や、観察期間の延長等により変化しますので、治療成績が上がったり下がったりすることがあります。


<手術の合併症>
手術後、多くの方が、食欲が落ちたり、嘔気があったり、嘔吐をされたりというような消化器症状を経験されます。


またそれよりも大きく重大な合併症というものが手術にはあります。
手術の合併症は100%必ず起きるものではありません。しかし、手術という治療の性質上、起こりうるものです。合併症の頻度は決してゼロではありません。


合併症としては、術後出血、縫合不全、腹腔内膿瘍、消化管穿孔、膵液瘻、肝損傷、脾損傷、大血管損傷、胃管狭窄、敗血症、肺炎、ARDS、呼吸不全、肺動脈血栓塞栓症、心筋梗塞、心不全、ミオグロビン尿症、急性腎障害、急性腎不全、精神疾患の発症や悪化、既存疾患の悪化、栄養状態の悪化、経口摂取困難、やせ等があります。術後死亡例も世界では報告されています。


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肥満外科入院

肥満外科手術前後の管理について


<入院時の心構え>


肥満手術治療は前のページで述べたチームに加えて、患者様ご自身とご家族の協力が無ければ成り立ちません。手術前後には患者様自身の安全と、手術のメリットとデメリットを調査する目的で様々な検査が施行されます。詳細はチェックリストのリンクをご覧ください。


<治療に関する私たちの方針>


① 手術の目的:
リバウンドを起こしにくくして、食事・運動療法の効果を続くようにさせる事


下図のように、食事・運動療法のみによる肥満治療ではリバウンド率が高く長期的な体重減少効果や、心筋梗塞などによる寿命の短縮を十分に抑制できないことが海外から報告されています。ここで重要なことは、食事・運動療法による減量でも、糖尿病や膝関節痛の改善など様々なメリットが生まれる事と、集団で見るとリバウンドする方が多いですが、中には内科的治療のみで劇的に体重減少される方も存在するという事です。

② 術前管理の方針
安全第一


十分な減量が無ければ、手術が難しくなります。このため、外来で減量を始めて頂き、入院時に目標体重に到達していない場合は、手術の延期や入院自体をキャンセルさせていただく場合があります。入院後も術後に向けて、運動療法・食事療法をしっかりしていただきます。
十分な効果と安全性を調査するために検査が入ります。


③ 術後管理の方針
脱水の予防、血栓症の予防
術後数カ月は、今までのようなスピードで食べ物や飲み物が飲めません。新しい自分に合った食習慣を着けて頂きます。飲水が1.5L未満、尿量が800ml未満であれば退院を見合わせる事があります。


<手術の長期的な合併症>


手術により体重コントロールが容易になり、糖尿病・高血圧・関節痛などの合併症が改善されることが多い一方、長期的にいくつかの問題を生じる可能性が報告されています。
① 栄養失調:ビタミンやミネラル、タンパクの不足を補うためにサプリメントを使用いただきます。


② 胆石症:30%程度に生じると言われています。
③ 体型:痩せた後、余分な皮膚が残る場合があります。
④ 精神的不安定:食べる事はストレス解消にもつながる事から、食べれないことによる精神的不安定が生じる事があります。


私たちの治療方針のエッセンスを挙げさせていただきました。
手術に至るまでに、ご本人とご家族が治療の内容をよく理解して、協力して治療を進めていくことが重要です。


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手術を受けられる方へ(受診から手術まで、手術の心構え)



<受診から手術までの流れ>




手術が決まるまでに、手術の適応があるか、手術や手術後の管理に対応できるかを、複数のスタッフと面接していただいて、決定していきます。
手術をすることが決まってからは、多くの検査と減量のための栄養指導などがあります。手術までにできるだけ体重を減らしていただきます。また、禁煙が必要です。手術までに体重が減らせない、または、禁煙ができないと手術が受けられません。手術を安全に行うための最低条件だと考えて下さい。


<減量手術を受ける心構え>
「地道な努力なくして、健康なからだは手に入らない」
・手術を受ける皆さんは、通常のダイエットでは痩せる事が困難で、最終手段として手術に臨むことになります。
・手術をしたら、楽に痩せられて、体が健康になるという、簡単なものではありません。
・手術後は食べることができない、吐き気がする、胸やけが続く、つかえて苦しいなどの症状が続くことがあります。その時期を乗り越えなくてはなりません。
・食べられなくなっても我慢できる、食べられるようになっても自分の食べたいものではなく栄養を考えたものを選べるということも必要です。
・脱水にならないよう、最大限努力して水分を摂取したり、飲めなければ近くの医院で点滴を受けるなどの対処が必要です。
・体調管理を今以上におこなって、健康な体を手に入れましょう。


<手術前の減量>


安全に手術を実施するために肝臓についている脂肪を中心に、内臓脂肪を減らしていく必要があります。手術前の入院までに体重を5%減らします。体重を記録し、受診ごとに持参してください。
 減量がはじまってからは、どか食いは厳禁です。減量手術を受けるからといって「最後の晩餐」や飲み会への参加で羽目をはずしてたくさん食べるということはしないでください。入院時に体重増加していた場合は手術を延期いたします。


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患者支援体制



 安全に手術ができるために、手術後の効果が最大限発揮され、より健康になれるために、当院では、減量手術に関わるスタッフがチームを組み、皆様の支援をおこなっております。
 チームは、医師(内科医師、外科医師、精神科医師、麻酔科医師、集中治療部医師、ほか多くの医師)、看護師(慢性疾患看護専門看護師、リエゾン精神看護専門看護師、糖尿病看護認定看護師、外来看護師、病棟看護師、手術部看護師、集中治療部看護師)、栄養士、臨床心理士、理学療法士、メディカルソーシャルワーカーなど多くの職種がおり、必要に合わせて皆様の支援を行っています。



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減量手術を成功させるためにー精神的支援



手術は身体に行う治療ですが、減量手術による
身体の変化、生活の仕方の変化に伴って心も影響
を受けます。この変化に上手に対処していくことが、
成功の秘訣とも言えます。
心理士と精神看護専門看護師が、治療経過の把握、
対処のアドバイスなど支援いたします。


<予想されるストレス>


 これまでどのような方法でストレスを解消していましたか?
減量手術後には「食べる」「飲む」楽しみを持ちにくくなり、
食事会などの場でも周囲と同じように食べたり飲んだりできず
戸惑うことが起きます。

<このような時には手助けを求めましょう>


 ・手術前には予測していなかった自分の変化や周囲の態度にどう対処したらいいかわからない。
 ・「食べる」「飲む」以外のストレス発散方法が探せず、困っている。
 ・手術前には経験したことのないイライラ、憂うつ、不安、不眠などのために生活に支障がでている。
 ・手術をしたら解決すると思っていた問題が解決せず悩んでいる。
 ・手術をきっかけに生活環境や職場を変えたために相談できる人がいない。


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術前後の食事療法と栄養管理・運動療法



<術前の食事療法>


手術は外科医が万全を尽くしおこなっていますが、高度肥満患者さまの手術は経験豊富な医師が担当しても非常に難しいと言われています。そのため、術前に減量し、内臓脂肪を減量することが非常に重要とされています。


 手術をうける患者さまは、すでにさまざまなダイエットをおこなってきたと思いますが、減量する基本は、下記の通りです。


腹八分目を意識する(特に夕食)


ゆっくり、よく噛んで食べる


緑黄色野菜を増やす


食物繊維の多いものを増やす(きのこ・海草)


間食やジュースを控える


油っこい料理や肉類を控える


めん類+ごはんなどの偏った食事にも注意


深夜のどか食いに注意


しかし、通常のダイエットで減量することが困難な場合には、フォーミュラ食の導入を行います。
フォーミュラ食は、蛋白、各種ビタミン、微量元素を総合的に補うことができ、減量時の補助食として用いることができます。1日1食をフォーミュラ食に置き換える(下図)ことで、摂取エネルギーが低下し、減量することが可能となります。
術前の減量が成功しなければ、手術を受けることはできません。初診時の体重の5%を減量することが手術を受ける“条件“となります。



<術後の食事療法>


手術が終わると胃のサイズは、110-170ccとバナナ程度に小さく変化します。しかし!普段通りに食べてしまうと吐き気や嘔吐など体調の変化があります。また、それだけでなく、胃は伸縮するために普通に食べてしまうと6-9ヶ月間で元の量を食べることが可能となってしまいます。そのため、術後の食事は段階食とする必要があります。


・はじめは、大さじ2~3杯で満足感を得ることが
できます。その状態を出来るだけ保持するために、
腹八分目に食べる事。時間をかけて、無理な伸縮
を胃に与えない事が重要です。
術後は、赤ちゃんの離乳食のような食事とフォーミュラ食を併用していただ
きます。
・糖分の多いものは控える事(ジュース、アイス、あめ、菓子など)
・揚げ物や脂肪分を制限

・水分は脱水予防のため、日に1.5-2リットルは飲みましょう。
・食事が少ないため、サプリメントの併用が必要となります。


<運動療法>


・長期間体重を落とすためには、運動が重要です!
術後6週間は、歩行が最も有用です。6-8週間以降は、さらに強度を高めてい
きましょう。


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はじめて受診される方へ



<受診方法>


現在受診中の病院から当院の患者支援センター(地域連携係)に紹介状をFAXしていだきます。紹介状にて手術適応を確認させていただいた上で、予約をお取りし、紹介元医療機関へお返事をさせていただきます。
 初回は糖尿病内分泌内科で診察をいたします。初回日は原則水曜日となっております。必ず予約をおとりください。


<お問い合わせ>


 受診予約以外の手術に関するお問い合わせは、糖尿病内科外来にてお受けしております。下記にお電話をいただくと、後日担当者より折り返しお電話をさせていただいております。
 糖尿病内分泌内科外来直通電話 077-548-2547


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