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様々な痛み
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筋骨格系の痛み
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│関節痛1│
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関節痛2
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関節
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受容器
/
治療
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関節内注射法
IASP 2009-2010
Global Year Against Musculoskeletal Pain
→
Fact sheet
関節炎
変形性関節症
→
変形性膝関節症
関節リウマチ
痛風
掌蹠膿疱性関節骨炎
顎関節症
→
シャルコー関節
健常な人が無理な運動をしたときに感じる関節痛は、生理的な痛みである。---
防御反射
の副産物
関節
炎症
は関節外の炎症の3倍である。[
PubMed
-Cells Tissues Organs. 2001;169(3):238-47.]
関節に障害のある場合は、軟部組織損傷よりも、
CRPS
になりやすい?
[関節痛の機序]
線維関節包および靱帯付着部には、感覚神経の分布がある。
関節内圧の変化や非生理的な緊張、物理的相互関係の変化、炎症産物の刺激などにより関節痛を感じる。
関節は陰圧の反閉鎖腔であり、健常な関節には
ヒアルロン酸
と血漿成分からなる淡黄色粘稠な関節液が存在している。
関節内に炎症が起こると、滑膜増殖がおき、一定容積の中に新たな占拠物が出現するため、関節腔内圧が上昇する。滑膜の血管新生が浸出液が溜まる。増殖滑膜細胞による関節液産生が増加する。
滑膜細胞
の増殖と血管新生の割合が壊れ、滑膜増生の割合が大きくなる。結果的に炎症部位での虚血状体が起こる。狭くなった関節腔に関節液が貯留して関節内圧がより上昇する。関節の運動により内圧が数百mmHg程度の急激な上昇と下降を繰り返す。関節滑膜組織の毛細血管は虚血再還流障害を誘発し、関節破壊物質(マトリックスメタプロテアーゼ MMP、NO、タンパク)の産生を導く結果となる。
○関節炎 arthritis
←→
動物モデル
関節腔内の滑液、血漿の透析濾液に
滑膜細胞
の分泌液が加わったもので、炎症が発生すると、その形成が変わる。
関節腔は、腹膜腔や心膜腔などの体腔と違って、関節包を裏打ちする滑膜と関節腔の間に基底膜がない。そのため、物質の通過を妨げる防御壁を欠き、関節包の間質液と滑液が化学的組成の平衡を保っている。滑膜炎が発生して滑液内に出現した発痛物質は関節包の関節包の間質液に移行し、侵害受容器を刺激して痛みを生じる。
捻挫の場合、関節面の相対的関係は正常に保たれているが、関節包、靱帯などの関節支持組織が断裂し、圧痛、運動時痛、関節血腫がみられる。捻挫の瞬間、関節包や靱帯に分布する侵害受容器が外力による歪みに反応して痛みを生じる。この時の痛みは発痛物質と無関係である。しかし、十数秒を過ぎると、局所に現れた発痛物質、発痛増強物質の作用による痛みが加わる。そして、さらに遅れて、白血球の反応に伴う痛みが起こる。これら2種類の痛みは炎症の痛みである。
○変形性関節症 osteoarthritis:OA =degenerative joint disease
→
変形性膝関節症
/
動物モデル
関節の疼痛と機能低下を伴うが全身の
炎症
を伴わない疾患
加齢などによる関節軟骨の退行性変性を原因とする疾患
関節の磨耗・変性・増殖が混在する非炎症性の進行性疾患
四肢や脊椎の関節軟骨が摩耗して関節周囲に骨棘ができるので、関節 痛や機能障害、歩行障害を引き起こす。
関節軟骨の老化現象であり、加齢・代謝障害・循環障害・肥満・性ホルモンなどの影響を背景として、これに機械的影響が加わって出現する。
何らかの原因により、関節軟骨が変性をきたし、荷重による機械的な負荷や軟骨細胞から産生・分泌される軟骨破壊 酵素によって関節軟骨が磨耗する。 軟骨の破壊が進行すると軟骨下の骨板が露出してくる。その骨板は荷重の負荷により肥厚硬化あるいは骨壊死が出現し、さらに骨嚢胞が形成される。 一方では荷重の加わらない部分では骨軟骨の増殖が出現し、骨棘 osteophyte が形成される。
膝、股、手、脊椎など全身の様々な関節を侵し、関節の痛みや機能障害、歩行障害などの様々なやっかいな症状を引き起こすので、中・高年者の日常生活動作 ADLや生活の質 QOLの障害の最大の原因のひとつである。
主な症状は疼痛・可動域制限・変形・腫脹・関節周囲の筋萎縮などである。侵される関節は脊椎・股関節・膝関節・手関節が多い。
OAの有病率は年齢と共に増加し、70歳以上では、症状の軽いものを含めると30%近くがOAに罹っているという統計もある。
日本の患者数は700万人以上、70歳以上では約3割の人が発症していると推計され、中・高齢者の生活の質を損なう最大の要因の一つとなっている。年齢と共に増加する。
古典的にOAの病態の主体は軟骨変性と考えられてきたが、1990年代にな りOAは軟骨と骨のどちらの疾患か、つまり"chondrocentric"に対して"osteocentric"という議論が盛んになった。それについて以下の2説があるが未だ結論は出ていない。
参考
OAの病態に関する近年の知見の増加に伴い、OAは軟骨のみならず骨、滑膜、半月板、靱帯、筋肉、神経が疾患の発症から進行まで複雑に関与する全関節組織の疾患と考えられるようになってきている。
OA関節軟骨細胞は病態の初期に細胞外基質産生を一時的に増やすと同時にIL‑1(interleukin‑1)などの炎症性
サイトカイン
やMMPs(matrix metalloproteinases)およびADAMTS(a disintegrin and metalloproteinase with thrombospondin motifs)などの酵素を産生して自ら関節軟骨の破壊に関与する。細胞外基質の変性・消失による微小環境の変化によって中間層から深層の軟骨細胞は肥大軟骨細胞へと形質変化する。
これに伴って軟骨の最終分化に関連した分子であるVEGF(vascular endothelial growth factor)や
RUNX2
(runt‑related transcription factor 2)、MMP‑13などが産生される。軟骨細胞外基質は石灰化しtidemarkが上昇し軟骨は次第に菲薄になっていく。これらの変化と並行して軟骨下骨の硬化と骨梁のリモデリングが生じる。
米国リウマチ学会では、
アセトアミノフェン
を、軽度から中等度の変形性関節症患者への鎮痛薬の第1選択薬としている。
2011年2月23日付けで、
経皮吸収
型の
ブプレノルフィン
が認可された。
骨に対する治療薬がOAに対しても治療効果があるのではと考えられ、
ビスフォスフォネート
、
カルシトニン
、SERM(selective estrogen‑receptor modulator)などをOA治療薬候補として臨床試験が行われた。
OAの構造的変化を修飾する作用薬:disease modifying osteoarthritis drug:
DMOAD
変形性関節症の原因遺伝子が「
アスポリン
」であることを理化学研究所のチームが発見した。 参考
1
→
関節リウマチ
○痛風 gout
痛風は、尿酸塩の結晶が関節腔内に析出したために繰り返される急性関節炎発作を主な症状とする種々の疾患の総称である。
痛風の多くの場合、美食・飲食が引き起こす「生活習慣病」の1つとされている。
痛風は古くから王侯貴族の病気と言われている。痛風を患っていた偉人↓
アレキサンダー大王(BC356〜BC323)
モンゴルのフビライハン(1215〜1294)
詩人ダンテ(1265〜1321)
レオナルド・ダ・ビンチ(1452〜1519)
ヘンリー7世(1457〜1509)
芸術家ミケランジェロ(1475〜1564)
宗教改革のマルティン・ルター(1483〜1546)
ヘンリー8世(1491〜1549)
神聖ローマ帝国のカール5世(1500〜1558)
宗教改革のカルビン(1509〜1564)
フランス国王ルイ14世(1638〜1715)
フリ−ドリッヒ大王(1657〜1713)
詩人のミルトン(1608〜1674)
清教徒革命のクロムウェル(1626〜1712)
物理学者のアイザック・ニュートン(1642〜1727)
ベンジャミン・フランクリン
(1706〜1790)
哲学者の
カント
(1724〜1804)
ドイツの文豪ゲーテ(1749〜1832)
フランスの小説家スタンダール(1783〜1843)
進化論のダーウィン(1809〜1882)
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痛みと鎮痛の歴史年表
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痛み一般
-
痛風
Hippocrates
(
P
BC460〜BC377、「古代ギリシアの医聖」、エ−ゲ海コス島生まれ)は
BC5C
に、歩行が困難になる病として記載していた 。
西欧ではpodagra(ギリシャ語のpous=foot, agra=attackの複合語)と呼ばれていた。
中世ヨーロッパでは、腐った体液の「しずく」によって痛風が起こると考えられていた。
「gout」は、ラテン語での「1滴」を意味する「gutta」に由来する。
痛風を一つの疾患単位として確立したのは、
Thomas Sydenham
(
P
1624〜1689, 英国での医学の先駆者)で、彼は自分の罹患している痛風の症状を詳細に記載した(
17C
)。
ドイツ人から招かれて東京医学校の教師として来日し、宮内庁の御用掛を勤めた
Erwin von Baelz
(
P
1849〜1913)は、
明治9年
に「日本には痛風がない」と結論を下していた。しかし明治以後は日本でも痛風が出現した。
1960年代の大島良雄による臨床報告では、痛風患者全体の35%は会社役員であった。
1982年に西岡久寿樹らが行った調査によると、同じ東京で痛風患者全体に占める会社役員の割合が3.5%に減少している。生活が豊かになり、痛風患者の裾野も拡がったようだ。
[症状]
一般に痛風の激痛発作は、
プリン体
や脂肪に富む食事の摂取、飲酒、宴会、遠足、過労、打撲、外傷、手術、ストレスなどが誘因になって、ある日突然現れる。
痛風発作は、足の親指の付け根が赤く腫れあがって、熱感を帯び、激痛になる場合が多い。
骨折よりも強い痛みである。
腫れる部位は親指関節に限らず、肘の関節や側背、手首の関節なども痛む。関節ではないアキレス腱が痛む場合もある。
発作が出ると痛みのため2〜3日は歩けなくなるのが普通で、1週間ぐらい経つと徐々に症状は治まる。
痛みは就寝後や朝に始まることが多い。
初めての痛風発作の約70%は、片足の第1中足指関節に起こる。他の関節に起こる時でも、初めての発作は、どこか1カ所の関節に集中し、2つ以上の関節が同時に侵されることは稀である。
高尿酸血症が続くと、数ヶ月ないし1〜2年で再び同様の発作が起こる。これを繰り返しているうちに、慢性関節炎発作期に入り、いつでもどこかの関節が痛むようになる。
進行する尿酸塩結晶の集合体である痛風結節 tophus が主に、関節内、時には耳介・肘・腎臓などに生じ、関節の変形、腎障害、尿管結石などが起こる。
痛風患者の95〜99%が、「40から50代の男性」である。
以前は、中高年がかかる贅沢病、美食病と言われていたが、最近は若年化が進んでいて、20代や30代でも起こる。
痛風は、尿酸値が子供の時から次第に高くなってピークに達し、高尿酸結晶の状態が5-10年維持されて初めて発症する。ただし女性は、卵胞ホルモン(
エストロゲン
)が尿酸排泄を促進するので、閉経前の尿酸値が低い。閉経前の女性の痛風の多くは、家族性痛風か、利尿剤を飲み続ける薬剤性痛風で、いずれも尿酸排泄の障害によるものである。
[分類]
痛風
┳原発性痛風
┗続発性痛風---化学療法や
サイアザイド系利尿薬
の投与などによる
合成亢進型
尿酸排泄低下型
混同型
HGPRT完全欠損症, Lesch-Nyhan症候群
HGPRT部分欠損症、Kelly-Seegmiller症候群
APRT異常症 adenosine phosphoribosyltransferase deficiency
PRPP合成酵素亢進症
ADA欠損症
1型糖原病
慢性腎不全
[病因]
プリン体
代謝低下により、尿酸一ナトリウム塩又は尿酸が過飽和の状態で結晶として析出し、それが組織に沈着する。
痛風になりやすいのは、
高プリン食
摂取者、アルコ−ル過飲者にみられ、高脂血症、肥満、積極的性格と関連が深いとされている。
アルコールはその分解過程でATPを消費してAMPを産生するが、これがIMPの増加につながる。
先天性酵素異常。遺伝の証明される例が20%位との報告もある。
白血病??
思春期以前では男女差がない。女性ホルモンが尿酸の排泄を促進するので、思春期以後の女性には少ない。
[急性痛風の機序]
血液中の尿酸値は、7mg/dl以下が正常値で、それ以上が高尿酸血症と呼ばれる。血液中に尿酸が高い状体が続いていて、それが顕在化したのが痛風。
血液中に尿酸の濃度が高くなって、尿酸ナトリウムの針状結晶が関節中に析出する。尿酸ナトリウムは関節中では異物とにみなされるので、白血球が排除しようとして結晶を取り込み、融解する酵素を出すので、周囲組織の急性炎症が起こると考えられる。
血液中に尿酸の濃度が高くなると、関節腔には、
滑膜
と関節腔の間に基底膜がないため、毛細血管を通過して、滑膜に漏れた尿酸塩が関節腔に移行して、尿酸ナトリウムの針状結晶が関節中に析出する。尿酸ナトリウムは関節中では異物とにみなされるので、これを多核白血球が貪触し、周囲組織の急性炎症を生じる。
さらに、
Hageman因子
や補体の
カリクレイン・キニン系
の活性化、さらに活性酸素や各種の
サイトカイン
を分泌し、より強い炎症を励起してくる。
このため関節が腫脹し、激烈な痛みとなる。放置すると、疼痛の寛解と炎症の消退に数週間を要する。
急性痛風が慢性化すると、尿酸の結晶が痛風結節となり、関節内に沈着し、関節組織を破壊して、変形や拘縮をもたらし、持続痛に移行する。
痛風治療のための利尿剤により、体内に溜まっていた尿酸が一期に膀胱や尿管に排泄される時に、尿が強い酸性になっていると、尿酸の結晶が析出し、一時的に痛風がまた起こったり、尿路結石が起こることもある。
結晶は、関節だけではなく体中至る所に溜まり、痛風結節は皮下組織や腎臓にもできて、腎臓障害や尿路結節を起こす。
[痛みの治療]
NSAIDs
の内服、座薬でほとんど痛みは治まる。
NSAIDsで効果が不十分なときには、
ステロイド性抗炎症薬
の内服や点滴
[痛風の治療]
尿酸値を下げる高尿酸血症(血液中の尿酸値が7mg/dl超)を是正し、腎臓障害や腎臓結石を治療する。
痛風発作を起こす人は、尿酸の排泄が低下している場合が多いので、尿酸の排泄を促す利尿剤ベンズブロマロン(商品名ユリノーム)、ブロベネンド(ベネンド)などや、尿酸の生成を阻害するアロブリノール(ザイロリックなど)が処方される。
利尿薬による痛風が繰り返されないように、尿をアルカリ化する薬を併用する。あるいは、水分とアルカリ性食品を多くとるようにする。
コルヒチン
(ユリ科のイヌサフランの種子や球根に含まれるトロポロンアルカロイド)は、好中球が血管外に出るのを妨げるので、何世紀も使われきたが、近年あまり使われなくなった。痛風発作の予兆期や、発作のごく初期であればコルヒチンの服用は有効。発作がひどくなると大量に飲まないと効かないが、肝臓障害や脱毛などの副作用がある。発作がひどくなればコルヒチンはのまないほうがよいとされている。
生活改善が重要!肥満を解消し、アルコール多飲をやめ、運動をする。
食事療法の基本:プリン体 purine baseの多い食物を避ける。
プリン体を多く含む食品 ←→
プリン体
肉、レバー、イワシ、アルコール、果実、珍味(いわゆる酒のつまみ)の制限。これらの食物はプリン体を多く含み、尿酸の産生を増加させる。
食物を煮るとプリン体が溶け出すので、ゆでたり煮たりしてから調理に使う。だし汁はプリン体を多く含むので飲まない。鰹節のうまみのもとになるイノシン酸や椎茸のうまみの成分であるグアニン酸もプリン体である。
肉類を加工した食物(ハム、ソーセージ)は、製造過程でプリン体が水に溶けて抜けるので比較的安全。魚を加工したかまぼこやちくわは制限しなくても良い。
牛乳、チーズ、卵などはプリン体の少ない食品である。
大量のアルコールも痛風の敵である。アルコールは尿酸の酸性を高めるだけではなく、尿中への尿酸排泄も妨げる。ビールは他のアルコール飲料に比べるとかなり多量のプリン体を含んでいるので特に良くない。この点で少量の焼酎はビール、日本酒よりも安全である。特に酒に強いヒトは注意が必要である。酒に強いヒトはアルデヒド脱水素酵素の活性が高いので、高尿酸血症になりやすい。
○掌蹠膿疱性関節骨炎
pustulotic arthro-osteitis: PAO 参考
1
2005年1月、奈美悦子さんが告白した病気:「掌蹠膿疱症性骨関節炎」
2004年1月 手掌と足蹠に水疱が出現→掌蹠膿疱症と診断された。
↓
2004年2月 左鎖骨の下に痛みが出現し、息が出来なくなることがあり、さらに背中、首、関節、腰と痛みが移動。
↓
2004年3月 痛みで震えがくるように。その痛みは「
ナイフを刺してグルグル回すような
」すさまじいもので、「
拷問みたいだった
」という。
掌蹠膿疱症
pustulosis palmaris et plantaris,PPP
掌蹠膿疱性関節骨炎
pustulotic arthro-osteitis,PAO
手掌、足蹠に対称性に、紅暈を伴う多数の小水疱、膿疱を発生する皮膚疾患
米粒大の無菌性膿疱または水泡が出現し、数日以内に鱗屑を残して軽快するもの。
掌蹠膿疱症の《関節症状》
PPP の約 10%に骨、関節炎を伴い、中でも胸肋鎖骨間骨化症が多く、鎖骨、第1肋骨の腫脹、膨隆、圧痛、熱感、発赤を生じる。
1/3の症例に仙腸関節炎が合併する。
発病初期には、肋鎖骨靭帯への圧力を減じるために、無意識に鎖骨を挙上位(「いかり肩」の姿勢)に保とうとして、肩こりが生じる。
その他に、手指の MP 、PIP 、手、膝関節炎がある。
[原因 ]
慢性扁桃炎などの病巣感染ー扁桃摘出術により寛解
ビオチン(=ビタミンH 脂肪酸やコレステロールの代謝により、エネルギーを産生)の欠乏により免疫力の低下
Pain Relief