| ●口腔内の痛み |
[舌の痛み]
舌痛を訴える疾患
| 器質的変化を伴うもの | 器質的変化を伴わないもの |
- 炎症:ウイルス感染症、梅毒、結核、口腔カンジダ症、地図状舌、扁平苔癬、ニコチン性口内炎、白斑症、再発性アフタ、ベーチェット病、天疱瘡群
- 腫瘍:悪性腫瘍
- 外傷:褥瘡性潰瘍(不良補綴物、歯牙鋭縁など)、熱傷、放射線
- 刺激物による:アルコール、香料、洗口剤など
- 貧血:鉄欠乏性貧血、悪性腫瘍
- 口腔乾燥症:シェーングレン症候群、糖尿病、加齢、薬物性
|
- 神経痛:三叉神経痛、舌咽神経痛
- ガルバニズム
- 顎関節症の関連痛
- 扁桃疾患などの関連痛
- 狭心症などの関連痛
- 舌痛症
|
地図状舌 geographic tongue
- 主に舌背部の落屑性病変としてみられ、地図状の斑紋を生ずる疾患
- 舌背の一部に発生した灰白色の辺縁で縁どられた赤斑が不規則な病巣として広がる。
- 日によって病変の位置、形態が変わることが多いところから遊走輪、遊走疹などの別名もあります。
- 幼児にはしばしば見られ(15%にみられるとする報告もある)、成人では1ー2%の発生率と言われている。若い女性に多い。
- 原因は不明である。
- 自覚症状はほとんどなく、稀にしみると訴える事がある。
- 外傷性および炎症性疾患群に分類され、組織学的には、上皮角化層は好中球やリンパ球浸潤によりその多くが破壊され消失する。
- 多くは、上皮全層に渡る好中球、リンパ球浸潤を認め、上皮表層に十数個の好中球浸潤巣として微小膿瘍の形成が見られる。
- 上皮下結合組織には好中球、リンパ球、形質細胞などの炎症性細胞浸潤が認められる。
|
扁平苔癬(へんぺいたいせん) lichen planus
- 扁平紅色苔癬とも言われる。
- 皮膚と口腔粘膜における慢性の角化異常を伴う病変の1つ
- 角化亢進(錯角化、正角化)が見られ、棘細胞層の肥厚を伴う炎症性の角化病変である。
- 皮膚やに栗粒大の扁平なスミレ色の丘疹が多発する。
- 頬の内側にできることの多く、白と赤のレース状に見える。
- 口腔粘膜ではレース状や網目状の白斑として現れ,定型的なものは両側頬粘膜にみられる。明らかな原因はわかっていないが、細菌やウィルスによる感染、薬物、歯科用金属アレルギー、ストレスなどが考えられている。
- 病変は上皮下結合組織には帯状にリンパ球(killer T cell)が浸潤し,基底細胞は、融解から消失まで種々の程度に障害され、上皮と結合組織の境界が不明瞭となる。
- 上皮突起は不規則な鋸歯状となり,上皮表層は角化が亢進する。また、上皮細胞には、好酸性球状であるシバッテ小体(コロイド小体)などを認める。
- これらの組織像は遅延型過敏症や移植片対宿主病と類似している。
|
口腔カンジダ症 oral candidiasis
カンジダ Candida
- 真菌は下等な真核生物で核膜を有するが、光合成能が無く、多糖体性の細胞壁を有する。真菌は真性菌糸を形成しない酵母と真性菌糸を形成する糸状菌に分けられる。
- 酵母にはCandida spp.やCryptoccocus spp.などがあり、糸状菌にはAspergillus spp.、Trichophyton spp.、Rhizopus spp.などがある。
- 真菌症は、カンジダ症、クリプトコックス症、アスペルギルス症、ムーコル症などの深在性真菌症と白癬症などの表在性真菌症に分類される。 ←→抗真菌薬
- つまりカンジダとは、真菌の酵母である。
- カンジダはいたるところにいる真菌で、通常は害を与えることなく口腔、腸管、腟および皮膚に常在している。
- 湿度、熱が加わり局所および全身の防御機能が障害されて増殖に適した環境になると病原性を発揮する。
- 全てのカンジダ感染症の約70〜80%はCandida albicansが原因である。
- 感染しやすい部位は、口や腟の粘膜、性器と肛門周辺、わきの下、女性の乳房の下、腹のたるみなど
|
- 口腔カンジダ症は、口腔内に常在しているカンジダ(主にCandida albicans) による感染症
- 周囲の炎症症状を欠く淡雪状白苔を付着した偽膜性病変を特徴とする。
- 粘膜の糜爛浅い潰瘍も併発し難治性のことが多く、歯肉炎や他の上部消化器管カンジダ症の併発なども考えられる。
- 常在しているカンジダは通常の唾液の分泌液が十分であれば洗い流される。唾液(1日1.5l 分泌)の中にはラクトフェリン、リゾチーム、免疫グロブリンなどの、さまざまな抗菌物質が含まれるので、カンジダがいても症状を起こさない。
- ほとんどは新生児の時期に基礎疾患をもたない生理反応として生じる。
- ドライマウスなどで唾液の量が少ない場合には、物理的・機械的に刺激されることにより、さまざまな抗菌物質の量が減り、カンジダなども増殖して炎症を引き起こし、痛みを引き起こすことがある。
- 免疫不全やステロイド治療、抗生物質の不適切な長期使用、性行為感染症で生じることがある。
- 膠原病や花粉症、喘息などでステロイド性抗炎症薬を使用している場合にもカンジダ症が起こりやすい。
- 糖尿病の患者はカンジダに感染しやすいとされる。
- HIV感染症や血液疾患では免疫力低下のために口腔だけでなく咽頭・食道のカンジダ症も併発する。
- 診断は臨床像、ならびに病変から採取した擦過物を水酸化カリウム液で包埋した顕微鏡標本で酵母および仮性菌糸の有無を観察する。カンジダは遍在しているので、培養が陽性であっても通常意味をもたない。
- 治療にはフルコナゾールやミコナゾール(フロリードゲル®)などの抗真菌薬を処方する。
- トリアムシノロン(ケナログ®)などのステロイド性抗炎症薬は、カンジダを含む微生物のえさにり、症状がどんどん悪化するので、処方すべきではない。
|
○舌痛症 glossodynia
[舌痛症を起こす原因]
| 舌痛症 | 特発性舌痛症 idiopathic glossodynia |
- ビタミンB(B1、B2、B6)欠乏症
- 鉄欠乏性貧血(Plummer-Vinson症候群)
- 糖尿病
- 微量元素(亜鉛等)の欠乏
- 感染症(口腔カンジダ症等)
- 高血圧、低血圧、動脈硬化
- 薬剤の副作用
- 口腔乾燥
|
心理的(精神的)要因
- うつ病
- 心気症
- 妄想性障害:重大な病気(舌がんなど)にかかってると妄想が常に持続している。
- 心因性疼痛
|
- 患者さんの多くは女性で、年齢的には更年期を迎える40〜50代の方に多いのが特徴。
- 舌痛症の50%に自然治癒がみられる。
- これまでは精神的なもので心因性のものが占めていると考えられていたが、最近の研究ではドライマウスの因子も多く含んでいると考えられている。
[症状]
- 突発性の口腔内の疼痛、灼熱感
- 主に舌の先端や側面に、ヒリヒリしたり焼けるような痛みや違和感。
- 主訴:時に渋柿を口にしているような、充填物が苦い、釘を口に入れているよう等と表現される。
- 味覚異常などを併発している場合も約半数を占めている。
- 舌痛症を訴える患者に味覚欠損が確認され、熱に対する疼痛閾値が低下している。
- 舌尖部ないし舌前方1/3にtaste phantomsを伴う疼痛
- 触覚、温覚、冷覚に異常は認められない。
taste phantoms:舌痛症は幻感覚痛sensory phantomの一種 ←→幻影痛
↑舌痛症や口腔灼熱症を説明する考え
味覚系の障害:taste sensations in the absence of stimulation
- 舌前方2/3の味覚:鼓索神経(顔面神経)神経支配
- 舌の体性感覚(触覚、温痛覚):舌神経(三叉神経)支配
- 鼓索神経と舌神経は吻合している。
- 正常時には両者は機能的に相互に抑制し合っている。
- どちらかが傷害されて、機能低下が生じると、他方の感覚が亢進する。
- 舌神経の損傷により痛覚系が傷害されると、味覚系が過敏になる。
- 鼓索神経の損傷により味覚系が傷害されると、痛覚系が過敏になる。
- 鼓索神経がウイルス感染などによりが傷害されると、体性感覚系が抑制されなくなり、その結果として、舌神経領域の感覚が亢進し、痛みや触覚が亢進する???
- ウイルス感染が味覚系の障害の主原因である。鼓索神経は中耳を通るので、解剖学的に風邪等のウイルスに対して弱い。
- その他、外傷、ACE阻害薬などの薬剤が関連する。
- 摂食、飲水時には症状は緩和している。(←えーーー?味覚系は傷害されているのか?注意の転換?)
- 舌痛症の診断には局所麻酔を適応して疼痛が増悪するかを観察する→舌痛症であれば増悪する。
|
○口腔(内)灼熱症候群 Burning Mouth Syndrome:BMS 参考1/
2
- 口腔粘膜の「灼けるような」痛みに特徴付けられる慢性の疼痛症候群
- 舌に痛みを訴えることが多く、唇や口蓋などその他の口腔粘膜にも症状を呈することも知られている。
- 多くの因子が関わっていると考えられている。
- 多方面からの検討がされているにもかかわらず決定的な原因が現在でも不明な特発性(原因不明の)口腔顔面痛
- stomatodynia, oral dysaesthesia, glossodynia, glossopyrosis, and stomatopyrosisなどと呼ばれてきた。
The International Association for the Study of Pain:IASPの慢性疼痛分類
burning pain in the tongue or other oral mucous membrane associated with normal signs and laboratory findings lasting at least four to six months.(正常な兆候と検査所見にもかかわらず最低4〜6ヶ月続く、舌やその他の口腔粘膜の灼熱痛) |
国際頭痛分類第2版2004 (ICHD-II ) では、 13.18 中枢性顔面痛 Central causes of facial pain
13.18.5 口腔内灼熱症候群 Burning mouth syndrome
解説:内科的および歯科的原因を発見できない口腔内灼熱感である。
診断基準
A. 連日性かつほぼ終日にわたり持続する口腔内の痛み
B. 口腔粘膜の外観は正常である
C. 局所および全身疾患を否定できる
コメント:
痛みは舌に限られることもある(舌痛症[glossodynia])。
自覚的口内乾燥、異常感覚および味覚変化が関連症状としてみられることがある。 |
- Scala et al (2003) 検出できる局所的あるいは全身的寄与因子の有無によりBMSを分類した。 参考1
一次性BMS primary or idiopathic BMS
いかなる歯科的あるいは医科的原因も見いだせない |
| 二次性BMS secondary BMS
|
- BMSは舌痛症と同義語的に用いられていたが、最近BMSの病態としてニューロパシックペインの可能性も注目されている。taste phantoms↑
大久保昌和先生(日大松戸 口・顔・頭の痛み外来)の資料の一部>口腔顔面痛学会*
|