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TOPICS~病気・治療法の解説~

胃ろうのお話 栄養治療部 佐々木 雅也

口からの食事に代わる人工栄養法

 口から食事ができなくなった時に必要な栄養を摂取する人工栄養法には、『経鼻経管栄養』『胃ろうからの経腸栄養』『静脈栄養法』などがあります。

 消化管の機能が保たれている患者さんには、鼻から入れた細いチューブを通して胃へ栄養を入れる経鼻経管栄養か、胃や腸にチューブやカテーテルから直接必要な栄養を注入する胃ろうからの経腸栄養が行われます。経鼻経管栄養は容易な方法で、入院中などに一時的に行われることも多く、口から食事ができるようになればすぐにやめることができます。一方で、鼻からチューブが入っていることで常に不快感が伴い、認知症やせん妄状態の患者さんなどは自分で引き抜いてしまう恐れもあります。
  腸などの消化管の機能が低下した場合に行われる静脈栄養法には、上肢などの静脈から点滴で注入する『末梢静脈栄養』と、心臓付近の太い静脈から高濃度の栄養を投与する『中心静脈栄養』があります。しかし、カテーテルによる感染症や合併症を起こしやすいため、専門的な管理が必要です。また在宅では、介護者の負担が大きくなります。

 

胃ろうの特徴とメリット・デメリット

 内視鏡的な胃ろうの造設は、疾患によって口からものが食べられない子どものために、アメリカで開発されたことから始まりました。内視鏡的に胃ろうを造ることをPEG(ペグ)といいます。内視鏡を使ってお腹から胃に通じる小さな穴を開けて、胃の中にカテーテルを通す方法です。

 胃の中に入れる部分にはバルーン型とバンパー型、お腹の外に出る部分はボタン型とチューブ型の、それぞれ2種類ずつあり、患者さんの状態などを考慮してどれを使うかを決定します。
内視鏡的な手術が必要になりますが、手術時間は、わずか15分程度です。経鼻経管栄養に比べて患者さんの苦痛が少なく、胃ろうを行っていても口から食事を摂ることができるため、口から食べるリハビリテーションや言語訓練が行いやすいというメリットがあり ます。
さらに、誤嚥の危険性が少なくなるだけでなく、免疫細胞が多く存在する腸などの消化器官の働きをそのまま維持できるのも胃ろう栄養の特徴です。また、胃ろうの手術箇所は衣服で隠れるので目立たず、そのまま入浴も可能です。経鼻経管栄養法や静脈栄養法と比べると介護者の負担が少ないこと、誤ってチューブを抜く恐れや感染を起こすリスクが低いこともメリットです。
デメリットは、皮膚トラブルを防止するため、穴を開けた部分のスキンケアが必要となること、また長期使用可能なバンパー型の場合でも、半年に一度くらいの間隔でカテーテルの交換が必要となることです。

 

半固形状流動食やミキサー食にも対応

 胃ろう栄養の対象になるのは、筋力の衰えや病気の影響で食べ物を噛んで飲み込む嚥下機能が低下した患者さんや、意識障害のある患者さん、あるいは頭頚部の腫瘍によって食べ物が通過しない患者さんです。当院では、口の中の癌や咽頭癌、喉頭癌、食道癌、胃癌等による通過障害、あるいは脳卒中や筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病などの神経難病のために、胃ろうを造設される患者さんが多くおられます。(参考:当院での「内視鏡的胃ろう造設術件数の推移」)

 胃ろう用の栄養剤・流動食には様々な種類があり、患者さんの状態に応じて選択することができます。日本で胃ろう用に開発された半固形状流動食は、粘度が高いことが特徴で、細いチューブから時間をかけて注入する液体の栄養剤より注入時間が短くてすみ、介護者の負担を軽減することができます。
さらに、誤嚥性肺炎の原因となる逆流などのリスクを下げるだけでなく、液状の栄養剤に比べて生理的な消化管運動が生じるので、血糖のコントロールもよくなります。

 また、ご自宅で調理されたものをミキサー食にして注入することも可能で、主治医とご相談のうえ、ご家族と同じ食事をとっていただくこともできます。

国際規格の誤接続防止コネクタへの移行について

 経管栄養と点滴などの接続コネクタの誤接続を防止するため、欧米で新しい国際規格(ISO80369)の導入が始まりました。日本でも、旧規格製品から新規格製品への随時移行が始まり、当院では2020年11月24日から新規格製品に随時移行を始めました。(現在、厚生労働省において、旧規格製品の出荷中止を2022年11月まで延長する方向で調整中です。)

 新規格製品と旧規格製品はコネクタの形状が異なるため、コネクタの形状が異なるため、相互に接続することができなくなります。しかし、すべての医療機関や施設、在宅療養で使用されている患者さんが新規格製品への切替えを終了するまで一定期間を要することから、新旧規格製品を接続するためには変換コネクタを用いて対応することになります。  

 

最後に

 胃ろうに関して批判的な意見をお持ちの方もおられますが、食べられなくなった時の選択肢の一つとしてメリット、デメリットをよく理解して導入を検討いただくことが大切です。
口から食事をして必要な水分と栄養を摂取するのが、本来の理想的な形です。胃ろうを造設しても、食べるための筋力が衰えないためのリハビリテーションや口腔ケアをきちんと続けながら、栄養状態の改善や体力の回復を目指していただきたいと考えています。