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TOPICS~病気・治療法の解説~

神経変性疾患のリハビリテーション  脳神経内科 金 一暁(きむ ひょう)

自分らしい人生を送るためのリハビリテーション

 神経変性疾患は、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症などを含む、いわゆる神経難病です。

 病理的には脳神経細胞への異常タンパク質の蓄積と神経細胞死を特徴とし、最近では再生医療が話題となっていますが、それぞれの疾患に対する対症的な治療薬は存在するものの、現在のところ、病気の進行を阻止したり、あるいは正常な状態に戻すような根本的な治療法は確立されていません。

 本学では臨床・研究部門において、このような神経難病の克服を目指す取り組みをしていますが、現状としては、患者さんが長期にわたり療養生活を送りながらも社会参加への機会を確保し、地域社会において尊厳を持って生きることができるように、神経難病の特性に応じて対応することが必要となります。

 その中で最も大切なことは、神経難病を患っている方々に寄り添って、自分らしい人生を送ってもらうための支援をしていくことであり、その中核となる医療行為にリハビリテーションは位置づけられると考えています。リハビリテーションにおける役割としては、専門的な知識により身体の動きを改善しながら二次的な問題を予防すること、生活の不便さを改善することなどが挙げられます。

神経難病の一般的なリハビリテーション

 一般的な神経難病へのリハビリテーションとしては、安静状態が長期に続くことによって起こる身体機能の障害である“廃用症候群”の改善を筋力トレーニングなどで図るとともに、移動手段として歩行器や杖、車椅子など、その時の状態に合わせた補助具を選定して、歩く訓練や車椅子の操作訓練を行ったりします。

 また、言語によるコミュニケーションが困難になった際に、身体機能に応じて文字盤やコミュニケーションエイドとよばれる装置などの代償手段を提供し使用訓練を行うなど、医療・福祉機器を利用した療養生活環境の構築を目指します。

 さらに、嚥下能力の低下による誤嚥予防のために、嚥下機能のチェックや食形態・食事方法を検討したり、息が苦しいなどの症状がある場合に呼吸理学療法を行ったりすることが挙げられます。

当院におけるリハビリテーションへの取り組み

 これらのほかに当院で行っている神経変性疾患のリハビリテーションへの取り組みの一部を紹介します。

①脊髄小脳変性症患者に対する集中リハビリテーション

 脊髄小脳変性症の小脳性失調症状に対して、4週間の入院で集中的にリハビリテーションを実施したところ、失調スコアの平均 1.7点の改善(自然経過では平均 0.8~2.1点/年の低下)が得られ、ADL(食事、排泄等)改善度と運動学習能力に正の相関がみられました。また、指導の下でホームエクササイズを取り入れたところ、1年後も効果の持続がみられました。

 

②筋萎縮性側索硬化症患者に対するSEMグローブを使用したリハビリテーション

 筋萎縮性側索硬化症の手指巧緻運動障害(箸が使いにくい、ボタンがかけにくいなど)に対して、SEM(セム)グローブ*を使用して作業療法のリハビリテーションを実施したところ、顕著な機能改善が認められました。今後はその改善効果を維持させるための課題を検討していくことが必要と思われます。

* SEM(セム)グローブ:手指機能障害のためのモーターアシスト付きグローブ

③認知症患者に対する日常生活に即したリハビリテーション

 高齢者のリハビリテーションは単なる機能回復訓練ではなく、心身に障害を持つ人々の全人間的復権を理念として、潜在する能力を最大限に発揮させて家庭や社会への参加を可能にし、その自立を促すものとする考えに沿って実施しています。

 また、「認知症の人に対するリハビリテーションについては、実際に生活する場面を念頭に置きつつ、有する認知機能等の能力をしっかりと見極め、これを最大限に活かしながら、ADL(食事、排泄等)や IADL(掃除、趣味活動、社会参加等)の日常の生活を自立し継続できるよう推進する」という方針のもと取り組んでいます。

④パーキンソン病リハビリテーションプログラム(TSPD)の導入(予定)

 パーキンソン病に対する理学療法効果は、介入内容別に筋力増強運動、バランス運動、全身運動、トレッドミル歩行、ホームプログラム・在宅運動療法、感覚刺激について推奨レベルが検討されていて、「パーキンソン病に対して理学療法は強く勧められる」と結論付けられています。しかし、その他の個別の運動療法については、純粋に筋力増強運動やバランス運動のみを実施した研究報告は少なく、どのような理学療法の内容がより効果的かに関しての明確な結論は今後の課題となっています。

 現在、独立行政法人国立病院機構相模原病院 長谷川一子先生がこれらの課題を検討し構築中の“パーキンソン病リハビリテーションプログラム(TSPD)”が公表されたなら、早期から導入してより効率的なリハビリテーションの提供を目指していく予定です。


 

●最後に

 神経難病の患者さんに医療を提供するにあたっては、患者さんのニーズを考えたうえでこのようなリハビリテーションのほか、多職種が連携して支援ネットワークを構築していく必要があり、当院脳神経内科ではその主導的役割を担っていきたいと考えています。