急性期脳梗塞の治療では、脳血管に詰まった血栓を溶かす薬剤アルテプラーゼ(t-PA)の静脈注射のほか、カテーテルを脳血管の中に入れて血栓を 取り除く血栓回収療法を行っています。
さらに、当院では脳梗塞の原因となる頸動脈狭窄症の治療を行うことで、再発予防にも力を入れています。手術で血管の内側にたまったプラーク(脂質や血液がまざった粥状の物質)をはがして取り除く内膜剥離術や、カテーテルを用いて血管内にステントを入れ、狭くなっている部分を広げるステント留置術によって再発を予防します。
脳の中にある血管が破れて出血した場合は脳出血、脳の表面の血管にできたコブ(動脈瘤)が破れ、くも膜の下に出血した場合はくも膜下出血と言います。くも膜下出血では、くも膜と脳のすき間に出血が広がることにより脳が圧迫され、激しい頭痛が生じます。重症の場合は、呼吸が困難になったり、けいれん発作を伴うこともあったりと、命に関わることもある大変恐ろしい病気です。
くも膜下出血の治療で大切なことは、発症後24時間以内に動脈瘤の再破裂を防ぐための治療を行うことです。当院では、脳動脈瘤クリッピング術(クリップで動脈瘤の根本を挟んで血液を遮断して再破裂を防ぐ)と、コイル塞栓術(カテーテルで動脈瘤にコイルを詰めて血液が流れ込まないようにする)という2通りの手術を行っています。
急性期脳梗塞や脳出血、くも膜下出血など、脳卒中を発症した患者さんには、1分でも早く適切な治療を行うことが必要になるため、当院ではSCU(脳卒中の治療のための集中治療室)を整備し、365日、24時間対応できる 体制を整えています。
脳腫瘍の治療では、脳の機能をできるだけ残しながら腫瘍を取り除く、覚醒下腫瘍摘出術を行っています。
特殊な麻酔方法で途中から覚醒した状態で手術を受けていただき、電気刺激で運動や感覚の機能を確認したり、実際に手足を動かしてもらったり、言葉を話してもらったりすることで、機能が保たれていることを確認しながら腫瘍を摘出します。
麻酔科医や他科の医療スタッフの協力を得て、安全に手術を行うことで、腫瘍を最大限取り除きつつ、手術後の後遺症のリスクをできる限り小さくすることができます。
顔面けいれんは、顔の片側のまぶたや頬などがピクピクとけいれんする病気で、自分の意思に反して顔が引きつることで仕事や生活に支障をきたしたり、精神的ストレスの原因となったりします。
三叉神経痛は、目の周りや鼻の横、唇の周囲、歯茎などに鋭い痛みが起こる病気で、食事が困難になるほど強い痛みが生じることもあります。
どちらも神経(顔面神経、三叉神経)に血管が接触することが原因となり起こる病気で、根本的に治療するためには、頭蓋内微小血管減圧術という手術を行います。頭蓋骨に小さな穴を開けてそこから手術用顕微鏡を入れ、神経に接触している血管を移動させることにより、ほとんどの患者さんで症状の改善が期待できます。
いずれの疾患の治療についても、当院では一人ひとりの患者さんの症状や背景などに配慮しながら、その患者さんにとって最適な医療を提供することを何よりも大切にしています。
そのためには、最新のガイドラインやエビデンス(ある治療法について効果があると言える証拠)を踏まえたう えで、「自分の家族にも同じ治療を行えるか」をつねに自問しながら治療上の判断を行っていく姿勢を、スタッフ全員で共有しています。