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TOPICS~病気・治療法の解説~

心不全について 循環器内科 宮本 証

「心不全」とは?

 『心不全とは、心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気です。』これは、日本循環器学会・日本心不全学会が2017年に発表した「心不全の定義」です。この「心不全」という言葉は、厳密にはひとつの病気を指し示しているのではありません。心臓に何らかの異常があるために機能が低下し、息切れやむくみが起こった状態のことをまとめて「心不全」と呼びます。

高齢の患者さんにおける心不全について

 近年、社会の高齢化により心不全の患者さんが急増しています。これには、高齢化による高血圧や弁膜症の増加・生活習慣の欧米化に伴う虚血性心疾患(心筋梗塞や狭心症など)の増加が関係しています。ただ、心不全がさまざまな心臓の病気がたどる終末像であることを考えると、高齢化が進むにつれて心不全が増加していくことは、当然のことといえるのかもしれません。現在、心不全の患者さんは全国で120万人、2030年には130万人に達すると推計されています。がんの罹患患者さんの数が約100万人ですから、心不全の患者さんがいかに多いかが分かります。

 こういった状況をふまえて、2018年12月に「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(「脳卒中・循環器病対策基本法」)が成立しました。この法律は、「脳卒中や心不全などの予防」「急性期医療」「維持期のリハビリテーション」「医療及び福祉に係るサービスの提供」などを適切かつ滞りなくおこなうことで、人々の健康寿命を延ばし医療・介護費の負担軽減を図ることを目的としています。つまり、「心不全や脳卒中という病気を多くの人に知ってもらうことで、病気を予防し、たとえ病気になってしまったとしても早期治療やリハビリテーションを行うことで、できるだけ元気に過ごしてもらえるようにサポートしていこう」という法律です。

「日本の推定心不全患者数の推移」

出典:公益財団法人 日本心臓財団ホームページ

心不全の診断

 心臓の病気(心筋梗塞・狭心症・弁膜症・心筋症・不整脈など)や高血圧など、さまざまな病気が心不全の原因となります。ですから、その診断にはいろいろな検査が必要となります。主に行われる検査は、胸部レントゲン撮影・血液検査・心電図検査・心臓超音波検査などですが、必要に応じて冠動脈CT検査・心臓カテーテル検査・24時間心電図検査(ホルター心電図検査)を追加することがあります。心不全の原因となっている病気が分かれば、その病気を治療することで心不全を起こしにくくすることもできますから、心不全の原因疾患を明らかにすることには非常に重要な意義があります。

 

心不全の予後と管理について

 「予後」とは、その病気の経過に関する医学的な見通しのことです。一般的に心不全の予後は良くないとされており、重症化した心不全の予後は「がん」よりも悪いといわれています。また、心不全増悪による再入院も大きな問題となっています。心不全が急性増悪して入院を繰り返すたびに、全身の状態は少しずつ悪化していきます。たとえ心不全の状態が改善して退院できたとしても、入院前の心臓の状態にまで回復することは難しいといわれていますから、日頃から心不全の状態をしっかりコントロールして、入院を繰り返さないようにすることが重要となります。

 心不全増悪による再入院の主な原因としては、「塩分・水分制限の不徹底」「感染症」「治療薬服用の不徹底」「過労」などがあげられます。つまり、日々の生活の中で「塩分を控える」「水分を摂りすぎないようにする」「うがいや手洗いをする」「予防接種をうける」「お薬を飲み忘れないようにする」など、自己管理に努めること(セルフマネジメント)は、再入院を回避するだけでなく心不全の予後を改善することにもつながります。

 当院では、心不全患者さんのセルフマネジメントをお手伝いするために、多職種(ハートケアサポートチーム)が関わって、心不全の管理や生活上の注意点などを説明しています。その際、当院で作成した「心臓病手帳」などを使いながら、できるだけ個々の患者さんの状態にあわせた説明をするように心がけています。

 特に高齢の患者さんは、心臓以外にもさまざまな疾患を抱えておられる方も多く、患者さんによって生活環境や家族背景なども大きく異なります。患者さん本人だけでなく、患者さんのご家族や周囲の方々(往診医・訪問スタッフなど)にも生活上の注意点などを説明して、ご協力をお願いすることもあります。

「心不全における心機能の経過(イメージ)」

出典:公益財団法人 日本心臓財団ホームページ

 

心不全を早期に発見しましょう

 心不全の治療においては、できるだけ早期に診断し、早期から治療を開始することが重要です。ただ、高齢の患者さんの心不全では、症状がはっきりと現れないことも多いといわれています。今までできていたことができなくなったり、息切れがでてきたりしても、心不全を早期に発見しましょう。「年のせいかも…」と思い込み、放置されていることも少なくありません。

 今までできていたことができなくなってきた場合には、心不全の初期の症状であるかもしれません。簡単に「年のせい」で片付けずに、一度かかりつけ医の先生に相談してみて下さい。また、「短期間での急な体重増加」「理由なくむくみがでる」「風邪もひいていないのに咳が続く」といった症状も、心不全に関連していることがありますので、放置せずにかかりつけ医の先生に相談してみるとよいでしょう。

 

(参照) 公益財団法人日本心臓財団 ホームページ、『急性・慢性心不全診療ガイドライン』日本循環器学会/日本心不全学会