滋賀脳卒中・循環器病登録研究
(SSHR: Shiga Stroke and Heart attack Registry)とは
日本はさらなる超高齢化社会に向かって進んでいます。その中で、高齢者を中心に増加が予測される、心筋梗塞、大動脈疾患、脳卒中に対する診療の重要性が再認識されています。ご本人の健康が損なわれるだけでなく、介護負担の増大や医療費の増加が懸念されるからです。
国の政策としても、平成30年12月には、「健康寿命の延伸等を図るための脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」(脳卒中・循環器病対策基本法)が可決・成立し、関連学会での活動も推進されつつあります。
滋賀県では、平成24~25年度の地域医療再生計画(三次医療圏)として「脳卒中診療連携体制整備事業」が開始され、平成28年からは脳卒中対策推進事業として、
1)滋賀脳卒中データセンター設置により、滋賀県の脳卒中に関する医療データを収集・解析し、
2)医療者向け研修会や県民に向けた啓発活動を行い、
3)新たな医療施策を提言するための基盤整備
を行ってまいりました。これは滋賀医科大学脳神経外科の野崎和彦先生のイニシアチブにより遂行されてきました。
この事業を発展させる形で、平成29年度からは3年計画で国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)からの委託のもと、滋賀県からも補助金を受けながら、滋賀県内で脳卒中、虚血性心疾患及び大血管疾患(以下、脳卒中を含む循環器疾患)の発症及び予後に関する登録研究を行っております。脳血管疾患だけでなく、循環器内科医や心臓血管外科医も加わり活動の範囲を拡大したわけです。脳神経部分をカバーする「滋賀脳卒中ネット」が、循環器疾患領域を加えた「滋賀脳卒中・循環器病登録研究(SSHR)」へ発展したのです。
本事業は県内で脳卒中を含む循環器疾患がどの程度発生しているのか、発症後どのような経過をたどっているのか、またその関連要因が何かを明らかにし、滋賀県における医療連携体制の評価及び改善のための基礎資料として活用することを目的にしております。同時に、県民の皆さまに情報を公開し、疾患予防や治療に役立てることも目的としています。
本研究の結果は滋賀県の脳卒中を含む循環器疾患の実態を明らかにし様々な医療施策の基礎となるデータですので、県民の皆様の御協力を宜しく御願い申し上げます。
滋賀医科大学 内科学講座 循環器内科 中川義久
なぜ今、心臓病が問題なのか?
心臓病は現在のところ増加傾向にあり癌に次いで日本人の死亡原因の第二位となっています。あなたの周りにも心臓病の人が少なくないと思います。心不全で呼吸困難におちいったり、狭心症の発作で胸痛に襲われたり、心筋梗塞のために救急車で病院にかつぎこまれたなどと聞くこともあると思います。また現在すでに心臓病と診断され治療をうけておられる患者さんも多いと思います。心臓病は怖い恐ろしい病気だというイメージがありますが、けっしてそうではありません。正しく理解し、適切な処置や治療をうけ、さらに予防策を講じてゆけば良い効果が期待できます。むやみに怖がる必要はありません。
欧米化した食事の内容、ストレス、睡眠不足、運動不足、喫煙、これらのことが心臓を痛め付けています。たいへん残念ですが心臓病の患者さんは増え続けています。生活習慣の変化が心臓に負担をかけているのです。 このホームページの心疾患のコーナーでは、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を中心に、心臓の働き、診断法、治療法、その危険因子などをわかりやすく解説しています。このページを見ていただくことにより心臓病に対する過度の不安が取り除かれ、また現在、健康な方々も今後にわたり心臓病と無縁でいられるように活用していただければ幸いです。
心臓はがんばっている
心臓は人間の体を維持し、生きていくために大変重要な役割を果たしています。この心臓は収縮と拡張という規則正しい運動を繰り返し、血液を全身に送り出しています。この血液によって全身の臓器は酸素や栄養分を受け取ることができるのです。もちろん、心臓は休むことなく働き続けています。普通心臓から送り出される血液の量は1分間に5リットルくらいです。一度収縮すると約60ミリリットルの血液が送り出されます。1分間に60回~80回収縮します。1日に心臓が打つ回数は約十万回、1年にすると約四千万回も働いています。このように心臓は大変に過酷な働きを続けています。
人が生きている限り心臓は休むことはできません。このように心臓は過酷な働きを休むことなく続けているわけですから心臓に気を配った生活が大切です。皆さん心臓をいたわっていますか。
心臓を養う冠動脈
心臓が休みなく働くためにも心臓の筋肉自身が栄養と酸素を必要とします。この心臓の筋肉を「心筋」と言います。心筋に栄養と酸素を送る血管を冠動脈と言います。冠動脈は右冠動脈と左冠動脈の二本があります。しかし左冠動脈はすぐに前下降枝と回旋枝と呼ばれる二本に大きく分かれます。このため右冠動脈の1本と左冠動脈の大きく分かれた二本、これを合わせて冠動脈は三本あると普通言われています。冠動脈は残念ながら非常に動脈硬化が起こりやすいと言われています。