SHIGA UNIVERSITY OF MEDICAL SCIENCE HOSPITAL

構造的心疾患(SHD)に対する
カテーテル治療 Catheter-based Treatment for Structural Heart Disease

滋賀医科大学医学部附属病院では、心臓の構造的な異常に対するカテーテル治療を積極的に行っています。 外科的手術に比べて体への負担が小さく、より安全な治療の選択肢を提供します。

構造的心疾患(SHD)とは

Structural Heart Disease

構造的心疾患(SHD)とは、心臓の弁や壁などの「構造」に異常がある疾患の総称です。 大動脈弁狭窄症や僧帽弁閉鎖不全症などの弁膜症、心房中隔欠損症や卵円孔開存などの先天性心疾患が含まれます。

これまで、SHDの治療には胸を大きく切開する外科的手術が必要でした。 近年、カテーテルを用いた低侵襲な治療法が急速に発展し、高齢の方や手術リスクの高い方にも治療の選択肢が広がっています。

カテーテル治療の特徴

足の付け根や首の血管から細い管(カテーテル)を挿入し、心臓まで到達させて治療を行います。 胸を開く必要がないため、体への負担が小さく、入院期間も短縮できます。

ハートチームによる治療方針決定

当院では循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医、看護師、臨床工学技士などの多職種が参加する「ハートチーム」で、 患者さん一人ひとりに最適な治療法を検討します。

当院で実施可能なSHD治療

  • TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)
  • M-TEER(経皮的僧帽弁接合不全修復術)
  • LAAO(経皮的左心耳閉鎖術)
  • ASD閉鎖術(心房中隔欠損閉鎖術)
  • PFO閉鎖術(卵円孔開存閉鎖術)
  • PTMC(経皮的僧帽弁交連裂開術)
ハートチームカンファレンスの様子
ハートチームカンファレンスの様子

治療一覧

当院で実施可能な6つのカテーテル治療

TAVI

経カテーテル的大動脈弁留置術 — Transcatheter Aortic Valve Implantation

大動脈弁狭窄症とは

心臓の出口にある大動脈弁が硬く狭くなり、血液がスムーズに送り出せなくなる病気です。 多くは加齢に伴う弁の変性(石灰=カルシウムの沈着など)が原因で起こります。 進行すると息切れ、胸痛、失神などの症状が現れ、放置すると生命に関わります。

大動脈弁狭窄症とは:心臓の弁の位置と、硬くなった大動脈弁、症状のイメージ

提供:エドワーズライフサイエンス

治療方法

大動脈弁狭窄症の治療には、大きく「薬物治療(保存的治療)」と「侵襲的治療(手術治療)」があります。

  • 薬物治療(保存的治療) — 息切れやむくみなどの症状を和らげる治療です。ただし、狭くなった弁そのものを治すことはできないため、重症の大動脈弁狭窄症では根本的な治療にはなりません。
  • 侵襲的治療(手術治療) — 弁そのものを人工弁に置き換える治療で、外科手術(SAVR)とカテーテル治療(TAVI)の2つがあります。

SAVR(外科的大動脈弁置換術)は、人工心肺を用いて心臓を止め、悪くなった弁を直接切除して人工弁に置き換える手術です。 胸の中央の骨を切開する胸骨正中切開のほか、より小さな切開(5〜7cm程度)で行うMICS(低侵襲心臓手術)で実施することもあります。

TAVI(経カテーテル的大動脈弁留置術)は、胸を切開せず、足の付け根などの血管からカテーテルで人工弁を心臓まで運び、狭くなった弁の位置で広げて留置する治療です。 鎮静・局所麻酔下(まれに全身麻酔)で行い、治療時間は約1〜2時間です。

どちらの治療が適しているかは、年齢・体力・解剖・併存疾患などをもとにハートチームで検討します。

大動脈弁狭窄症の進行と治療の流れ(診断→保存的治療→手術治療:TAVIまたはSAVR)

提供:エドワーズライフサイエンス

TAVIとSAVRの比較

← 表は左右にスクロールできます →

TAVI(カテーテル)SAVR(外科手術)
傷の大きさ足の付け根などに数mm胸骨正中切開または小切開
麻酔経大腿アプローチでは多くは鎮静・局所麻酔
その他のアプローチでは全身麻酔
全身麻酔
人工心肺不要必要
治療時間1〜2時間3〜4時間
入院期間7〜10日2〜3週間
弁の耐久性※7〜10年15年以上
ペースメーカー植込みやや多い(5〜10%)3〜6%
適応全リスク患者低〜中リスク患者
TAVIが解剖学的に不適な患者

※弁の耐久性はあくまで目安です。まれに早期に再手術(再治療)が必要になる方もいらっしゃいます。

TAVIの治療イメージ(経大腿アプローチの場合)

TAVIの手順(経大腿アプローチ)

提供:エドワーズライフサイエンス

1. 鉛筆ほどの太さに折りたたまれた人工弁を装着したカテーテルを、太ももの付け根の1cm弱の小さな穴から大腿動脈に入れて、心臓まで運びます。

2. 人工弁が大動脈弁の位置に到達したら、人工弁を広げて留置します。

3. 人工弁を留置した後は、カテーテルを抜き取ります。

4. 人工弁は留置された直後から、患者さんの新たな弁として機能します。

TAVIの治療動画(バルーン拡張型弁)(提供:エドワーズライフサイエンス)

TAVIの治療動画(自己拡張型弁)(提供:日本メドトロニック)

当院でのTAVIの特色

滋賀県で最も豊富な治療経験 これまでに500例以上のTAVIを実施しており、県内で最も豊富な経験を有しています。
認可3弁すべてが使用可能 日本で認可されている3種類の人工弁をすべて使用でき、患者さんの解剖やリスクに合わせて使い分けています。
より詳しく 人工弁には「バルーン拡張型」と「自己拡張型」の2種類があります。
バルーン拡張型自己拡張型
人工弁の例バルーン拡張型の人工弁
自己拡張型の人工弁自己拡張型の人工弁(別タイプ)
広げ方バルーン(風船)で一気に広げて留置カテーテルのさやから少しずつ出しながら、
フレームがゆっくり自然に広がって留置
メリット手技時間が短い
術後のペースメーカーがやや少ない
留置中の位置調整・再収納が可能
小さな弁輪でも弁が大きく広がる
デメリット一度広げるとやり直せない
高度の石灰化では弁輪損傷に注意
ペースメーカー植込みがやや多い
※CTなどで評価した解剖(弁輪の大きさ・石灰化・冠動脈の位置・血管の状態)とリスクに基づき、ハートチームで最適な人工弁を選択します。
すべてのアプローチに対応 経大腿(TF)・経鎖骨下動脈(TSc)・経大動脈(TAo)・経頸動脈(TC)・経心尖(TA)のすべてのアプローチに対応し、血管や心臓の状態に応じて最適な経路を選択します。
より詳しく 約95%の患者さんは足の付け根からの経大腿(TF)アプローチで治療できます。血管が細い、蛇行が強い、動脈硬化が強いなどの理由でTFが難しい場合に、その他のアプローチを選択します。 TAVIの5つのアプローチ部位(TC・TSc・TAo・TA・TF)
多くは全身麻酔を用いずに治療 経大腿アプローチ(TF)の多くは全身麻酔を用いず、鎮静・局所麻酔で治療を行います(TF以外のアプローチでは全身麻酔で行います)。
より詳しく 全身麻酔 お薬で完全に眠った状態にし、口から気管に管を入れて(気管挿管)人工呼吸器で呼吸を管理しながら行う麻酔です。

鎮静・局所麻酔 足の付け根など治療する部分にだけ麻酔をかけて痛みを取り、あわせてお薬でうとうとと眠った状態にする方法です。人工呼吸器は使いません。体への負担が少なく、治療後の目覚めが早いのが特徴です。
透析患者さんへのTAVI 透析を受けている患者さんに対するTAVIも行っています。
Valve in Valveに対応 以前に心臓の手術で人工弁を入れた方や、TAVIを受けた方でも、年月とともに弁が傷んで働きが悪くなることがあります。その場合、古い弁の中に新しい弁を重ねて入れる「valve in valve」という治療により、もう一度胸を開く手術をせずに治せる可能性があります。
脳梗塞予防デバイスが使用可能 脳梗塞のリスクが高い患者さんには、治療中に石灰化のかけらなどが脳へ流れるのを捕捉する脳塞栓保護デバイスを使用し、脳梗塞の予防に努めています。
心エコーの専門チーム 経験豊富な心エコー専門医が在籍し、多様なエコーガイド法を用いて治療の安全性を高めています。

入院から退院までの流れ

← 左右にスクロールできます →

入院当日
入院
手術の1〜2日前に入院
術前検査(採血・心電図など)
手術当日
手術
TAVI施行(約1〜2時間)
術後はICU(集中治療室)で管理
術後1日目
ICU退室
一般病棟へ
歩行・リハビリ開始
術後5日目頃
各種検査
心エコーなどで
人工弁の状態を確認
その後
退院
外来フォローへ

※経過や治療内容により日程が前後することがあります。
※入院での検査が望ましいと考えられた方には、早めに入院していただくことや検査のための入院をしていただくことがあります。

退院後の外来通院

退院後は、術後1か月・3か月・1年を目安に外来を受診していただき、心エコーなどで人工弁の状態を確認します。 体調が安定していれば、ふだんの診療はかかりつけの先生と連携しながら行います。

起こりうる合併症

ペースメーカー植込み(5〜10%) 大動脈弁のすぐ近くには心臓の電気の通り道(刺激伝導系)が走っており、人工弁がこれを圧迫すると脈が遅くなり、ペースメーカーが必要になることがあります。
弁周囲逆流(中等症以上が5〜10%) 石灰化のでこぼこと人工弁の間にわずかなすき間が残り、そこから血液が漏れることがあります。多くは軽度で経過観察が可能です。
人工弁の移動(1〜2%) 留置した人工弁が予定の位置からずれてしまうことがまれにあり、追加の処置や手術が必要になることがあります。
心筋梗塞(1〜2%) 人工弁や押しのけられた石灰化が、心臓を栄養する冠動脈の入口をふさいでしまうことがまれにあります。
脳卒中(1〜2%) 石灰化した弁をカテーテルや人工弁で押し広げる際、石灰化のかけらや血栓が血流に乗って脳の血管に詰まることがあります。
心タンポナーデ(1〜2%) ガイドワイヤーやカテーテルが心臓の壁を傷つけると、心臓の周囲に血液がたまり心臓を圧迫することがあります。
血管損傷・出血(5〜10%) 人工弁を運ぶカテーテルは比較的太いため、動脈硬化で細く・もろくなった血管では、通過の際に血管が裂けたり出血したりすることがあります。
急性腎障害(1〜2%) 治療で使用する造影剤や、手技中の血圧低下により、腎臓への血流や負担が変化することがあります。もともと腎機能が低下している方では注意が必要です。

各項目にカーソルを合わせる(タップする)と、詳しい説明が表示されます。

担当医師

術者(循環器内科)
浅田 紘平
浅田 紘平
循環器内科
澤山 裕一
澤山 裕一
循環器内科
写真
準備中
植村 裕樹
循環器内科
吉田 大輝
吉田 大輝
循環器内科
中田 啓哉
中田 啓哉
循環器内科
術者(心臓血管外科)
髙島 範之
髙島 範之
心臓血管外科
鉢呂 康平
鉢呂 康平
心臓血管外科
三輪 駿太
三輪 駿太
心臓血管外科
垣内 泰生
垣内 泰生
心臓血管外科
画像担当(心エコー)
林 篤志
林 篤志
循環器内科
岡本 寛樹
岡本 寛樹
循環器内科

よくある質問

治療中や治療後に痛みはありますか?
多くの方は鎮静・局所麻酔で治療を受けていただき、治療中はうとうとした状態で痛みをほとんど感じません。治療後は足の付け根の傷に軽い痛みや違和感が出ることがありますが、通常は数日で落ち着きます。
治療後、どのくらいで日常生活に戻れますか?
多くの方は退院後1〜2週間で通常の生活に戻れます。重い物を持つ、激しい運動をするなどは、外来で主治医と相談しながら段階的に再開してください。
人工弁はどのくらいもちますか?
TAVIの人工弁の耐久性は7〜10年程度と報告されています。退院後も定期的な心エコーで弁の状態を確認します。将来弁が劣化した場合には、弁の中に新しい弁を留置する再治療(TAVI in TAVI)などの選択肢があります。
治療後に飲む薬はありますか?
血栓予防のため、抗血小板薬などの抗血栓薬を内服していただきます。薬の種類や期間は、患者さんの状態(心房細動の有無など)に応じて調整します。
年齢が若くてもTAVIを受けられますか?
若い方でも受けられる場合があります。ただし、TAVIの人工弁の耐久性は7〜10年程度のため、比較的お若い方には長持ちする外科手術(SAVR)が標準的です。年齢・持病・弁や血管の状態などをもとに、ハートチームで最適な治療を検討します。
MRI検査は受けられますか?
受けられます。TAVIの人工弁はMRI対応で、条件を満たせば治療直後からMRI検査が可能です。検査の際は、人工弁が入っていることを医療機関にお伝えください。
費用はどのくらいかかりますか?
TAVIは健康保険が適用されます。高額療養費制度により、自己負担額は所得に応じた上限までとなります。負担額は人によって異なりますが、TAVIの適応となる方では4〜6万円程度になる方が多いです。詳しくは当院の医事課・ソーシャルワーカーにご相談ください。
より詳しく 高額療養費制度によるTAVIのひと月の自己負担額(概算)
70歳以上の方
所得区分ひと月の自己負担
現役並み所得III(年収約1,160万円〜)約31万円
現役並み所得II(年収約770万〜1,160万円)約22万円
現役並み所得I(年収約370万〜770万円)約14万円
一般(年収約156万〜370万円)約5.8万円
住民税非課税の方約1.5〜2.5万円
※当院の実際の医療費(診療報酬点数の平均値)から概算した金額で、入院期間や治療内容により変動します。食事代・差額ベッド代などは別途かかります。

M-TEER

経皮的僧帽弁接合不全修復術 — Mitral Transcatheter Edge-to-Edge Repair

僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流症, MR)とは

僧帽弁は、心臓の左心房と左心室の間にある「逆流防止の扉」の役割をもつ弁です。 肺で酸素を受け取った血液は左心房から左心室へ流れ、左心室が収縮して全身へ送り出されます。 このとき僧帽弁がしっかり閉じることで、血液が左心房へ逆戻りするのを防いでいます。

この僧帽弁がうまく閉じなくなり、血液が左心房へ逆流してしまう病気が僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流症)です。 弁の変性(器質性)や心臓の拡大や機能低下(機能性)が原因となります。 息切れ、動悸、むくみなどの心不全症状が現れます。

正常の僧帽弁

正常の僧帽弁

器質性MR

器質性MR

機能性MR

機能性MR

提供:アボットメディカルジャパン

治療方法

僧帽弁閉鎖不全症の治療には、大きく「薬物治療(保存的治療)」と「侵襲的治療(手術治療)」があります。

  • 薬物治療(保存的治療) — 息切れやむくみなどの症状を和らげ、心臓の負担を減らす治療です。ただし、弁の逆流そのものを治すことはできません。
  • 侵襲的治療(手術治療) — 弁の逆流を治す治療で、外科手術とカテーテル治療(M-TEER)の2つがあります。

外科的僧帽弁手術は、人工心肺を用いて心臓を止め、ご自身の弁を修復する僧帽弁形成術や、人工弁に置き換える僧帽弁置換術を行う手術です。 胸の中央の骨を切開する胸骨正中切開のほか、より小さな切開(5〜7cm程度)で行うMICS(低侵襲心臓手術)で実施することもあります。

M-TEER(経皮的僧帽弁接合不全修復術)は、胸を切開せず、足の付け根の静脈からカテーテルを進め、閉じきらない弁をクリップでつまんで逆流を減らす治療です。 全身麻酔下に経食道心エコーガイドで行います。治療時間は約2〜3時間です。外科手術が困難な患者さんにも適応できます。

どちらの治療が適しているかは、年齢・体力・弁の状態・併存疾患などをもとにハートチームで検討します。

M-TEERと外科的僧帽弁手術の比較

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M-TEER(カテーテル)外科的僧帽弁手術
傷の大きさ足の付け根に数mm胸骨正中切開または小切開
人工心肺不要必要
入院期間7〜10日2〜3週間
逆流の改善度軽度〜中等度まで軽減根治的に修復可能
再治療の可能性あり(1〜5%)低い
適応機能性MR
手術リスクの高い器質性MR
手術可能な患者
(主に器質性MR)

※MR:僧帽弁閉鎖不全症(僧帽弁逆流)

M-TEERの治療イメージ

M-TEER手順1

1. 足の付け根の静脈からカテーテルを挿入し、心房中隔を越えてガイドワイヤーを左心房へ進めます。

▶
M-TEER手順2

2. ガイドカテーテルを通してクリップを左心房へ進め、僧帽弁の逆流部位の真上に位置を合わせます。

▶
M-TEER手順3左心房側から見た弁口

3. クリップで僧帽弁の前尖と後尖をつかんで留置します。左心房側から見ると弁口が2つに分かれた形になり(小写真)、エコーで逆流の減少を確認します。

▶
M-TEER手順4

4. カテーテルを抜去し、クリップのみを心臓の中に留置して治療は終了です。

提供:アボットメディカルジャパン

M-TEERの治療動画(提供:アボットメディカルジャパン)

入院から退院までの流れ

← 左右にスクロールできます →

入院当日
入院
手術の1〜2日前に入院
術前検査(採血・心電図など)
手術当日
手術
M-TEER施行(約2〜3時間)
術後はICU(集中治療室)で管理
術後1日目
ICU退室
一般病棟へ
歩行開始
術後5日目頃
各種検査
心エコーなどで
クリップの状態を確認
その後
退院
外来フォローへ

※入院での検査が望ましいと考えられた方には、早めに入院していただくことや検査のための入院をしていただくことがあります。

退院後の外来通院

退院後は、術後1か月・6か月・1年を目安に外来を受診していただき、心エコーでクリップの状態と逆流の程度を確認します。 心不全のお薬の調整も外来で行います。ふだんの診療はかかりつけの先生と連携しながら行います。

起こりうる合併症

クリップの脱落(部分的な把持不全)(1〜2%) 弁の組織がもろい場合や逆流の範囲が広い場合、クリップでつかんだ弁の一部が外れることがあります。
僧帽弁狭窄(まれ) クリップで弁をつまむと弁の開く面積が少し狭くなります。もともと弁口が小さい方では、狭くなりすぎることがあります。治療中にエコーで確認しながら調整します。
医原性心房中隔欠損症(閉鎖術を要するのは約1%) カテーテルを通すために心房中隔に開けた穴が残ることがあります。多くは自然に小さくなり問題になりませんが、心臓に負担がかかる場合には閉鎖術を行うことがあります。
食道潰瘍(まれ) 治療のガイドに用いる経食道心エコーのプローブ(管)により、食道の粘膜が傷つくことがまれにあります。
脳卒中(1%未満) 手技中にカテーテルの周囲にできた血栓などが血流に乗って脳の血管に流れることがまれにあります。
心タンポナーデ・心嚢液貯留(1%未満) カテーテルを左心房へ進める際に心房中隔に針で小さな穴を開けます(心房中隔穿刺)。その際に心臓の壁を傷つけると、心臓の周囲に血液がたまり心臓を圧迫することがあります。
血管損傷・出血(大出血は1%未満) 比較的太いカテーテルを静脈に挿入するため、穿刺部位から出血したり、血のかたまり(血腫)ができたりすることがあります。

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担当医師

術者
浅田 紘平
浅田 紘平
循環器内科
澤山 裕一
澤山 裕一
循環器内科
写真
準備中
植村 裕樹
循環器内科
画像担当(心エコー)
林 篤志
林 篤志
循環器内科
岡本 寛樹
岡本 寛樹
循環器内科

よくある質問

治療中や治療後に痛みはありますか?
全身麻酔で行うため、治療中に痛みは感じません。治療後は足の付け根の穿刺部に軽い痛みや違和感が出ることがありますが、通常は数日で落ち着きます。また、治療中に経食道心エコーの管を口から入れるため、治療後にのどの痛みや違和感が出ることがありますが、通常は数日で落ち着きます。
治療後、どのくらいで日常生活に戻れますか?
多くの方は退院後1〜2週間で通常の生活に戻れます。重い物を持つ、激しい運動をするなどは、外来で主治医と相談しながら段階的に再開してください。
治療後に飲む薬はありますか?
血栓予防のため、抗血栓薬を内服していただきます。心不全のお薬は引き続き内服が必要です。
逆流が残った場合はどうなりますか?
軽度の逆流が残ることは珍しくなく、多くは経過観察で問題ありません。逆流が強く残る場合には、クリップの追加や他の治療をハートチームで検討します。
MRI検査は受けられますか?
受けられます。クリップはMRI対応で、条件を満たせばMRI検査が可能です。検査の際は、クリップが入っていることを医療機関にお伝えください。
費用はどのくらいかかりますか?
M-TEERは健康保険が適用されます。高額療養費制度により、自己負担額は所得に応じた上限までとなります。詳しくは当院の医事課・ソーシャルワーカーにご相談ください。
より詳しく 高額療養費制度によるM-TEERのひと月の自己負担額(概算)
70歳以上の方
所得区分ひと月の自己負担
現役並み所得III(年収約1,160万円〜)約29万円
現役並み所得II(年収約770万〜1,160万円)約21万円
現役並み所得I(年収約370万〜770万円)約12万円
一般(年収約156万〜370万円)約5.8万円
住民税非課税の方約1.5〜2.5万円
69歳以下の方
所得区分ひと月の自己負担
ア(年収約1,160万円〜)約29万円
イ(年収約770万〜1,160万円)約21万円
ウ(年収約370万〜770万円)約12万円
エ(年収〜約370万円)約5.8万円
オ(住民税非課税の方)約3.5万円
※当院の実際の医療費(診療報酬点数の平均値)から概算した金額で、入院期間や治療内容により変動します。食事代・差額ベッド代などは別途かかります。

LAAO

経皮的左心耳閉鎖術 — Left Atrial Appendage Occlusion

なぜ左心耳を閉鎖するのか

心房細動の患者さんでは、心臓内(特に左心耳)に血栓ができやすく、それが脳に飛ぶと脳梗塞を引き起こします。 通常は抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)で予防しますが、出血リスクが高い患者さんには内服が困難な場合があります。 左心耳を閉鎖することで、血栓の形成を防ぎ、抗凝固薬を中止できる可能性があります。

出血リスクが高く抗凝固薬の継続が難しい方に加えて、抗凝固薬を内服していたにもかかわらず脳梗塞を発症した方も治療の対象になります。

治療方法

心房細動による脳梗塞の予防には、大きく「薬物治療(保存的治療)」と「侵襲的治療(手術治療)」があります。

  • 薬物治療(保存的治療) — 抗凝固薬(血液をサラサラにする薬)で血栓を予防するのが標準的な治療です。
  • 侵襲的治療(手術治療) — 血栓のできやすい左心耳そのものを閉じる治療で、カテーテルによる左心耳閉鎖術(LAAO)などがあります。

LAAO(経皮的左心耳閉鎖術)は、胸を切開せず、足の付け根の静脈からカテーテルを進め、左心耳の入口に閉鎖デバイスを留置する治療です。 全身麻酔で行い、治療時間は約1時間です。術後45日程度は抗凝固薬を継続し、その後多くの方は抗血小板薬のみに移行できます。

どちらの治療が適しているかは、出血のリスク・脳梗塞のリスク・生活状況などをもとにハートチームで検討します。

LAAOの治療イメージ

LAAOの治療イメージ(1:カテーテルを左心耳へ 2:ワイヤーで左心耳の奥へ 3:閉鎖デバイスを留置)

提供:トーアエイヨー 心臓・血管病アトラス

1. 足の付け根の静脈からカテーテルを進め、心房中隔を越えて左心耳の入口まで到達します。

2. 柔らかいワイヤーを目印に、カテーテルを左心耳の奥まで安全に進めます。

3. 左心耳の入口で閉鎖デバイスを傘のように開いて留置し、入口をふさぎます。

LAAOの治療動画(提供:ボストンサイエンティフィックジャパン)

抗凝固薬療法との比較

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LAAO抗凝固薬
脳梗塞予防同等同等
出血リスク術後45日以降は低減継続的にあり
内服の負担抗凝固薬中止可能※生涯内服が必要
侵襲性カテーテル手技が必要内服のみ
入院期間4〜5日入院不要
適応出血リスクが高い患者
抗凝固薬を飲んでいても脳梗塞を起こした患者
一般的な心房細動患者

※将来的に脳梗塞リスクが高いと判断された方や、過去に抗凝固薬を飲んでいても脳梗塞を起こした方は、抗凝固薬が継続になる場合があります。

入院から退院までの流れ

← 左右にスクロールできます →

入院当日
入院
手術の1〜2日前に入院
術前検査(採血・心電図など)
手術当日
手術
LAAO施行(約1時間)
術後は一般病棟に帰室
術後1日目
経過観察
穿刺部の止血確認
術後検査(採血・心電図など)
術後2日目以降
退院
抗凝固薬を継続

退院後の外来通院

術後45日ごろに経食道心エコーでデバイスの状態を確認し、抗血栓薬の調整を行います。 術後1年にも経食道心エコーでデバイスの状態を確認します。ふだんの診療はかかりつけの先生と連携しながら行います。

起こりうる合併症

デバイス塞栓(1%未満) 左心耳の形や大きさは人によってさまざまで、デバイスの固定が不十分な場合に外れて血流に流されることがあります。治療前のCT・エコーで慎重にサイズを選択します。
デバイス関連血栓(2〜5%) デバイスの表面が自分の組織(内皮)で覆われるまでの数か月間は、表面に血栓が付着することがあります。この期間は抗血栓薬を継続して予防します。治療が必要となるのは約2%です。
デバイス周囲リーク(軽度を含め10〜30%) 左心耳の入口は正円ではなく複雑な形をしているため、デバイスとの間にわずかなすき間が残ることがあります。多くは軽度で問題になりません。
心タンポナーデ(1%未満) 左心耳の壁は非常に薄いため、カテーテルやデバイスの操作で傷がつくと、心臓の周囲に血液がたまり心臓を圧迫することがあります。心房中隔穿刺の際にも起こりえます。
脳卒中(1%未満) 手技中にカテーテルの周囲にできた血栓や、心臓内にもともとあった血栓が血流に乗って脳へ運ばれることがあります。
血管損傷・出血(大出血は1%未満) 足の付け根の静脈にカテーテルを挿入するため、穿刺部位から出血したり、血のかたまり(血腫)ができたりすることがあります。

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担当医師

術者
小澤 友哉
小澤 友哉
循環器内科
藤居 祐介
藤居 祐介
循環器内科
浅田 紘平
浅田 紘平
循環器内科
岡本 寛樹
岡本 寛樹
循環器内科
西川 拓磨
西川 拓磨
循環器内科
湊屋 卓美
湊屋 卓美
循環器内科
画像担当(心エコー)
林 篤志
林 篤志
循環器内科
岡本 寛樹
岡本 寛樹
循環器内科

よくある質問

治療中や治療後に痛みはありますか?
全身麻酔で行うため、治療中に痛みは感じません。治療後は足の付け根の穿刺部に軽い痛みや違和感が出ることがありますが、通常は数日で落ち着きます。また、治療中に経食道心エコーの管を口から入れるため、治療後にのどの痛みや違和感が出ることがありますが、通常は数日で落ち着きます。
治療後、抗凝固薬はやめられますか?
術後45日目ごろに経食道心エコーでデバイスの状態を確認し、問題がなければ多くの方は抗凝固薬を中止し、抗血小板薬へ移行できます。ただし、抗凝固薬の内服中に脳梗塞を発症した方は、多くの場合中止できません。
デバイスはずっと入れたままですか?
はい。デバイスは数か月かけて自分の組織(内皮)に覆われ、体になじみます。取り出す必要はありません。
心房細動そのものは治りますか?
この治療は脳梗塞の予防を目的としたもので、心房細動そのものを治す治療ではありません。脈の治療(薬やカテーテルアブレーション)は別途検討します。
MRI検査は受けられますか?
受けられます。閉鎖デバイスはMRI対応で、条件を満たせばMRI検査が可能です。検査の際は、デバイスが入っていることを医療機関にお伝えください。
費用はどのくらいかかりますか?
LAAOは健康保険が適用されます。高額療養費制度により、自己負担額は所得に応じた上限までとなります。詳しくは当院の医事課・ソーシャルワーカーにご相談ください。
より詳しく 高額療養費制度によるLAAOのひと月の自己負担額(概算)
70歳以上の方
所得区分ひと月の自己負担
現役並み所得III(年収約1,160万円〜)約27万円
現役並み所得II(年収約770万〜1,160万円)約18万円
現役並み所得I(年収約370万〜770万円)約10万円
一般(年収約156万〜370万円)約5.8万円
住民税非課税の方約1.5〜2.5万円
69歳以下の方
所得区分ひと月の自己負担
ア(年収約1,160万円〜)約27万円
イ(年収約770万〜1,160万円)約18万円
ウ(年収約370万〜770万円)約10万円
エ(年収〜約370万円)約5.8万円
オ(住民税非課税の方)約3.5万円
※当院の実際の医療費(診療報酬点数の平均値)から概算した金額で、入院期間や治療内容により変動します。食事代・差額ベッド代などは別途かかります。

ASD閉鎖術

経カテーテル的心房中隔欠損閉鎖術 — Transcatheter Atrial Septal Defect Closure

心房中隔欠損症(ASD)とは

心臓の左右の心房を隔てる壁(心房中隔)に生まれつき穴が開いている病気です。 穴を通じて左心房から右心房へ血液が流れ込み、右心系への負担が増加します。 成人になってから息切れや不整脈で発見されることもあります。

心房中隔欠損症のイラスト:左右の心房を隔てる壁(心房中隔)に穴が開き、血液が左心房から右心房へ流れ込む

治療方法

心房中隔欠損症の治療には、大きく「薬物治療(保存的治療)」と「侵襲的治療(手術治療)」があります。

  • 薬物治療(保存的治療) — 心不全症状や不整脈に対するお薬による治療です。ただし、壁の穴そのものを塞ぐことはできません。
  • 侵襲的治療(手術治療) — 穴を閉じる治療で、外科手術とカテーテル閉鎖術の2つがあります。

外科手術は、人工心肺を用いて心臓を止め、穴を直接縫い合わせるかパッチで閉鎖する手術です。穴の場所や大きさなどでカテーテル手術が困難な症例が主な適応となります。

カテーテル閉鎖術は、胸を切開せず、足の付け根の静脈からカテーテルで閉鎖栓を運び、穴を両側から挟んで閉鎖する治療です。経食道心エコーまたは心腔内エコーでガイドしながら行います。

どちらの治療が適しているかは、穴の大きさ・位置・穴のふちの状態などをもとにハートチームで検討します。

カテーテル閉鎖術と外科手術の比較

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カテーテル閉鎖術外科手術
傷の大きさ足の付け根に数mm胸骨正中切開または小切開
人工心肺不要必要
入院期間4〜5日2〜3週間
適応の範囲欠損孔が38mm以下で、穴のふちが十分にある方全ての形態に対応
閉鎖成功率95%以上ほぼ100%

カテーテル閉鎖術の治療イメージ

ASD閉鎖術の手順1

1. 足の付け根の静脈からカテーテルを進め、心房中隔の穴を通して左心房へ入ります。

ASD閉鎖術の手順2

2. 左心房側で閉鎖栓の円盤(ディスク)を開きます。

ASD閉鎖術の手順3

3. カテーテルを手前に引いて円盤を心房中隔に密着させ、右心房側の円盤を開きます。

ASD閉鎖術の手順4

4. 2枚の円盤で穴を挟み込むように閉鎖し、カテーテルから切り離して留置します。

提供:トーアエイヨー 心臓・血管病アトラス

ASD閉鎖術の治療動画(提供:日本ライフライン株式会社)

入院から退院までの流れ

← 左右にスクロールできます →

入院当日
入院
手術の1〜2日前に入院
術前検査(採血・心電図など)
手術当日
手術
閉鎖術施行(約1〜2時間)
術後は一般病棟に帰室
術後1日目
経過観察
穿刺部の止血確認
術後検査(採血・心エコー検査など)
抗血小板薬を内服開始
術後2日目以降
退院
外来フォローへ

退院後の外来通院

退院後は、術後1か月・6か月・1年を目安に外来を受診していただき、心エコーで閉鎖栓の状態を確認します。 抗血小板薬は約6か月間の内服を予定し、外来で調整します。ふだんの診療はかかりつけの先生と連携しながら行います。

起こりうる合併症

デバイスの脱落・塞栓(1%未満) 穴のふち(閉鎖栓を引っかける周りの壁)が薄い・足りない場合や、サイズが合っていない場合に、閉鎖栓が外れて血流に流されることがあります。治療前のエコーで適応を慎重に評価します。
心タンポナーデ(心びらん)(1%未満) 閉鎖栓のふちが心房の壁や大動脈にわずかに接触し続けると、時間をかけて壁がすり減って(びらん)出血することがまれにあります。術後も定期的なエコーで確認します。
脳卒中(1%未満) 手技中にカテーテルやデバイスの周囲にできた血栓などが血流に乗って脳の血管に流れることがまれにあります。
血管損傷・出血(1%未満) 足の付け根の静脈にカテーテルを挿入するため、穿刺部位から出血したり、血のかたまり(血腫)ができたりすることがあります。

各項目にカーソルを合わせる(タップする)と、詳しい説明が表示されます。

担当医師

術者
浅田 紘平
浅田 紘平
循環器内科
画像担当(心エコー)
林 篤志
林 篤志
循環器内科
岡本 寛樹
岡本 寛樹
循環器内科

よくある質問

治療中や治療後に痛みはありますか?
治療中は麻酔を行うため、痛みはほとんど感じません。治療後は足の付け根の穿刺部に軽い痛みや違和感が出ることがありますが、通常は数日で落ち着きます。また、治療中に経食道心エコーの管を口から入れるため、治療後にのどの痛みや違和感が出ることがありますが、通常は数日で落ち着きます。
閉鎖栓はずっと入れたままですか?
はい。閉鎖栓は数か月かけて自分の組織に覆われ、心臓の一部としてなじみます。取り出す必要はありません。
治療後、運動はいつからできますか?
多くの方は退院後まもなく日常生活に戻れます。激しい運動は術後1か月程度を目安に、主治医と相談しながら再開してください。
治療後に飲む薬はありますか?
デバイスが組織に覆われるまでの間の血栓予防として、抗血小板薬を約6か月間内服していただきます。
MRI検査は受けられますか?
受けられます。閉鎖栓はMRI対応で、条件を満たせばMRI検査が可能です。検査の際は、閉鎖栓が入っていることを医療機関にお伝えください。
費用はどのくらいかかりますか?
ASD閉鎖術は健康保険が適用されます。高額療養費制度により、自己負担額は所得に応じた上限までとなります。詳しくは当院の医事課・ソーシャルワーカーにご相談ください。
より詳しく 高額療養費制度によるASD閉鎖術のひと月の自己負担額(概算)
70歳以上の方
所得区分ひと月の自己負担
現役並み所得III(年収約1,160万円〜)約27万円
現役並み所得II(年収約770万〜1,160万円)約19万円
現役並み所得I(年収約370万〜770万円)約10万円
一般(年収約156万〜370万円)約5.8万円
住民税非課税の方約1.5〜2.5万円
69歳以下の方
所得区分ひと月の自己負担
ア(年収約1,160万円〜)約27万円
イ(年収約770万〜1,160万円)約19万円
ウ(年収約370万〜770万円)約10万円
エ(年収〜約370万円)約5.8万円
オ(住民税非課税の方)約3.5万円
※当院の実際の医療費(診療報酬点数の平均値)から概算した金額で、入院期間や治療内容により変動します。食事代・差額ベッド代などは別途かかります。

PFO閉鎖術

経カテーテル的卵円孔開存閉鎖術 — Transcatheter Patent Foramen Ovale Closure

卵円孔開存(PFO)とは

卵円孔は胎児期に左右の心房をつないでいた穴で、通常は出生後に自然に閉じます。 しかし、成人の約25%で完全に閉鎖しておらず、これを卵円孔開存(PFO)と呼びます。 多くは無症状ですが、静脈系の血栓(主に足にできた血栓)がPFOを通過して脳に飛んでいく可能性があり、脳梗塞(奇異性脳塞栓症)の原因となることが知られています。

卵円孔開存(PFO)の位置と、右心房から左心房へ通り抜けた血栓が脳へ流れるイメージ

提供:アボットメディカルジャパン

治療方法

PFOに関連する脳梗塞の再発予防には、大きく「薬物治療(保存的治療)」と「侵襲的治療(手術治療)」があります。

  • 薬物治療(保存的治療) — 抗血小板薬や抗凝固薬で脳梗塞の再発を予防します。
  • 侵襲的治療(手術治療) — 足の付け根の静脈からカテーテルを挿入し、PFOに閉鎖栓を留置して穴を閉じる治療(PFO閉鎖術)です。薬物治療と組み合わせることで再発予防効果を高めます。

どちらの治療が適しているかは、脳神経内科と連携し、PFOが脳梗塞の原因である可能性や再発リスクをもとに検討します。

PFO閉鎖術の治療イメージ

PFO閉鎖術の手順1

1. 足の付け根の静脈からシース(管)を挿入し、右心房からPFOを通して左心房側へ進めます。

PFO閉鎖術の手順2

2. カテーテルの先端まで閉鎖栓を進め、左心房側のディスクを傘のように開きます。

PFO閉鎖術の手順3

3. 左心房側のディスクを心房中隔に近づけます。

PFO閉鎖術の手順4

4. 右心房側のディスクを傘のように開きます。

PFO閉鎖術の手順5

5. カテーテルから閉鎖栓を切り離し、本体のみを心臓の中に留置します。

提供:アボットメディカルジャパン

PFO閉鎖術の治療動画(提供:アボットメディカルジャパン)

入院から退院までの流れ

← 左右にスクロールできます →

入院当日
入院
手術の1〜2日前に入院
術前検査(採血・心電図など)
手術当日
手術
PFO閉鎖術(約1時間)
術後は一般病棟に帰室
術後1日目
経過観察
穿刺部の止血確認
術後検査(採血・心エコー検査など)
抗血小板薬を内服開始
術後2日目以降
退院
外来フォローへ

退院後の外来通院

退院後は、術後1か月・6か月・1年を目安に外来を受診していただき、心エコーで閉鎖栓の状態を確認します。 脳梗塞の再発予防については脳神経内科とも連携してフォローします。

起こりうる合併症

デバイスの脱落・塞栓(1%未満) 閉鎖栓の固定が不十分な場合に、外れて血流に流されることがあります。治療前のエコーで適応を慎重に評価します。
心タンポナーデ(心びらん)(1%未満) 閉鎖栓のふちが心房の壁や大動脈にわずかに接触し続けると、時間をかけて壁がすり減って(びらん)出血することがまれにあります。術後も定期的なエコーで確認します。
脳卒中(1%未満) 手技中にカテーテルやデバイスの周囲にできた血栓などが血流に乗って脳の血管に流れることがまれにあります。
血管損傷・出血(1%未満) 足の付け根の静脈にカテーテルを挿入するため、穿刺部位から出血したり、血のかたまり(血腫)ができたりすることがあります。

各項目にカーソルを合わせる(タップする)と、詳しい説明が表示されます。

担当医師

術者
浅田 紘平
浅田 紘平
循環器内科
画像担当(心エコー)
林 篤志
林 篤志
循環器内科
岡本 寛樹
岡本 寛樹
循環器内科

よくある質問

治療中や治療後に痛みはありますか?
治療中は麻酔を行うため、痛みはほとんど感じません。治療後は足の付け根の穿刺部に軽い痛みや違和感が出ることがありますが、通常は数日で落ち着きます。また、治療中に経食道心エコーの管を口から入れるため、治療後にのどの痛みや違和感が出ることがありますが、通常は数日で落ち着きます。
治療後に飲む薬はありますか?
デバイスが組織に覆われるまでの血栓予防として、抗血小板薬を一定期間内服していただきます。期間は患者さんの状態に応じて調整します。
閉鎖栓はずっと入れたままですか?
はい。数か月かけて自分の組織に覆われ、体になじみます。取り出す必要はありません。
仕事や運動はいつから再開できますか?
多くの方は退院後まもなく日常生活や仕事に戻れます。激しい運動の再開時期は主治医とご相談ください。
MRI検査は受けられますか?
受けられます。閉鎖栓はMRI対応で、条件を満たせばMRI検査が可能です。検査の際は、閉鎖栓が入っていることを医療機関にお伝えください。
費用はどのくらいかかりますか?
PFO閉鎖術は健康保険が適用されます。高額療養費制度により、自己負担額は所得に応じた上限までとなります。詳しくは当院の医事課・ソーシャルワーカーにご相談ください。
より詳しく 高額療養費制度によるPFO閉鎖術のひと月の自己負担額(概算)
70歳以上の方
所得区分ひと月の自己負担
現役並み所得III(年収約1,160万円〜)約26万円
現役並み所得II(年収約770万〜1,160万円)約18万円
現役並み所得I(年収約370万〜770万円)約9万円
一般(年収約156万〜370万円)約5.8万円
住民税非課税の方約1.5〜2.5万円
69歳以下の方
所得区分ひと月の自己負担
ア(年収約1,160万円〜)約26万円
イ(年収約770万〜1,160万円)約18万円
ウ(年収約370万〜770万円)約9万円
エ(年収〜約370万円)約5.8万円
オ(住民税非課税の方)約3.5万円
※当院の実際の医療費(診療報酬点数の平均値)から概算した金額で、入院期間や治療内容により変動します。食事代・差額ベッド代などは別途かかります。

PTMC

経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術 — Percutaneous Transvenous Mitral Commissurotomy

僧帽弁狭窄症とは

心臓の左心房と左心室の間にある僧帽弁が変性することで弁が狭くなり、血液が流れにくくなる病気です。 主にリウマチ熱の後遺症として起こります。 進行すると息切れ、動悸、心房細動などの症状が現れます。

正常の僧帽弁とリウマチ性僧帽弁狭窄症(左心房側から見た3D経食道心エコー画像)

正常の僧帽弁(左心房側からの3D心エコー画像)

正常の僧帽弁
弁は薄くしなやかで、拡張期には弁口(破線)が大きく開き、血液がスムーズに流れます。

リウマチ性僧帽弁狭窄症(左心房側からの3D心エコー画像)

リウマチ性僧帽弁狭窄症
弁が厚く硬くなり、前尖と後尖のつなぎ目である交連部(矢印)が癒合して、弁口(破線)が「魚の口」のように細く狭くなっています。

治療方法

僧帽弁狭窄症の治療には、大きく「薬物治療(保存的治療)」と「侵襲的治療(手術治療)」があります。

  • 薬物治療(保存的治療) — 息切れやむくみなどの症状を和らげるお薬や、心房細動を合併している場合の抗凝固薬による治療です。ただし、狭くなった弁そのものを広げることはできません。
  • 侵襲的治療(手術治療) — 外科手術(弁置換術など)とカテーテル治療(PTMC)の2つがあります。

外科的僧帽弁置換術は、人工心肺を用いて心臓を止め、狭くなった僧帽弁を切除して人工弁に置き換える手術です。 胸の中央の骨を切開する胸骨正中切開のほか、より小さな切開(5〜7cm程度)で行うMICS(低侵襲心臓手術)で実施することもあります。 弁の石灰化が高度な場合や僧帽弁逆流を合併している場合に選択されます。

PTMC(経皮経静脈的僧帽弁交連裂開術)は、胸を切開せず、足の付け根の静脈からカテーテルを進め、バルーン(風船)を僧帽弁まで運んで膨らませ、癒着した弁の合わせ目を裂いて広げる治療です。 治療時間は約1〜2時間です。

どちらの治療が適しているかは、弁の状態(石灰化の程度や僧帽弁逆流の合併の有無)などをもとにハートチームで検討します。

PTMCと外科手術の比較

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PTMC外科的僧帽弁置換術
傷の大きさ足の付け根に数mm胸骨正中切開または小切開
人工心肺不要必要
入院期間5〜7日程度2〜3週間
治療効果狭さを和らげる(改善は外科手術より小さく、再び狭くなることがある)根治的
適応弁の変性が比較的軽い場合
僧帽弁逆流が軽度の場合
石灰化など弁の変性が強い場合や
僧帽弁逆流が高度の場合も対応可能

PTMCの治療イメージ

PTMC手順1

1. 足の付け根の静脈からカテーテルを挿入し、心房中隔を越えてガイドワイヤーを左心房へ進めます。

▶
PTMC手順2

2. ガイドワイヤーに沿って、折りたたんだバルーンカテーテルを左心房へ進めます。

▶
PTMC手順3

3. バルーンを僧帽弁に通し、先端側だけを膨らませて弁口に引っかけ、位置がずれないように固定します。

▶
PTMC手順4

4. バルーン全体を膨らませて、癒合した弁の交連部を裂開し、弁の開きを広げます。心エコーで弁の開きと逆流を確認しながら、必要に応じて段階的に拡張します。

提供:東レ

PTMCの治療動画(提供:東レ)

入院から退院までの流れ

← 左右にスクロールできます →

入院当日
入院
手術の1〜2日前に入院
術前検査(採血・心電図など)
手術当日
手術
PTMC施行(約1〜2時間)
術後は一般病棟に帰室
術後1日目
経過観察
穿刺部の止血確認
術後検査(採血・心エコー検査など)
4〜6日目
退院
外来フォローへ

退院後の外来通院

退院後は、術後1か月・6か月・1年を目安に外来を受診していただき、心エコーで弁の開き具合を確認します。年月とともに再び弁が狭くなる(再狭窄)ことがあるため、その後も定期的な経過観察が大切です。 心房細動を合併している方は抗凝固薬の内服を継続し、外来で調整します。ふだんの診療はかかりつけの先生と連携しながら行います。

起こりうる合併症

僧帽弁逆流の悪化(2〜3%) バルーンで弁を広げる際、本来裂けてほしい交連部(弁の合わせ目)以外の弁組織が裂けてしまうと、逆流が生じ・悪化することがあります。高度の場合は外科手術が必要になることがあります。
心房中隔欠損の残存(2%) 心房中隔穿刺で開けた小さな穴が一時的に残ることがあります。血行動態に影響しない大きさで、多くは自然に閉鎖します。
脳卒中(1〜2%) 僧帽弁狭窄症では左心房内に血栓ができやすく、手技中に血栓が剥がれて脳へ流れることがあります。治療前に経食道心エコーで血栓がないことを必ず確認します。
心タンポナーデ(1〜2%) カテーテルを左心房へ進めるための心房中隔穿刺の際に、心臓の壁を傷つけると心臓の周囲に血液がたまることがあります。
血管損傷・出血(1%未満) 足の付け根の静脈にカテーテルを挿入するため、穿刺部位から出血したり、血のかたまり(血腫)ができたりすることがあります。

各項目にカーソルを合わせる(タップする)と、詳しい説明が表示されます。

担当医師

術者
浅田 紘平
浅田 紘平
循環器内科
画像担当(心エコー)
林 篤志
林 篤志
循環器内科
岡本 寛樹
岡本 寛樹
循環器内科

よくある質問

治療中や治療後に痛みはありますか?
治療中は麻酔を行うため、痛みはほとんど感じません。治療後は足の付け根の穿刺部に軽い痛みや違和感が出ることがありますが、通常は数日で落ち着きます。また、治療中に経食道心エコーの管を口から入れるため、治療後にのどの痛みや違和感が出ることがありますが、通常は数日で落ち着きます。
治療の効果はどのくらい続きますか?
多くの方で長期間効果が持続しますが、年月とともに再び弁が狭くなる(再狭窄)ことがあります。定期的な心エコーで経過を確認し、必要に応じて再治療や手術を検討します。
治療後に飲む薬はありますか?
心房細動を合併している方や一定以上狭窄が残存した方は、脳梗塞予防のため抗凝固薬の内服を継続していただきます。
費用はどのくらいかかりますか?
PTMCは健康保険が適用されます。高額療養費制度により、自己負担額は所得に応じた上限までとなります。詳しくは当院の医事課・ソーシャルワーカーにご相談ください。
より詳しく 高額療養費制度によるPTMCのひと月の自己負担額(概算)
70歳以上の方
所得区分ひと月の自己負担
現役並み所得III(年収約1,160万円〜)約26万円
現役並み所得II(年収約770万〜1,160万円)約18万円
現役並み所得I(年収約370万〜770万円)約9万円
一般(年収約156万〜370万円)約5.8万円
住民税非課税の方約1.5〜2.5万円
69歳以下の方
所得区分ひと月の自己負担
ア(年収約1,160万円〜)約26万円
イ(年収約770万〜1,160万円)約18万円
ウ(年収約370万〜770万円)約9万円
エ(年収〜約370万円)約5.8万円
オ(住民税非課税の方)約3.5万円
※当院の実際の医療費(診療報酬点数の平均値)から概算した金額で、入院期間や治療内容により変動します。食事代・差額ベッド代などは別途かかります。

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