さざなみ42(図書館報) 滋賀医科大学附属図書館

競 争 と 共 生

附属図書館長 前 田 敏博

平成9年6月1日付けで図書館長となりました。
前任の挾間先生が副学長に転ぜられましたのでその後任となりました。典型的なコンピューター音痴の私には情報センターたるべき図書館の長は全くの不向きと思ったのですが,何も知らない人が良いとのことで任命されました。
マルチメディアセンター長も兼ねております関係上,情報化時代の図書館の将来,大学の将来を皆様に考えて頂くべく,毎週のように会議をしてもらっています。この頃のコンピューターの変遷の速さを考えると,10年後を予想することは無理であるにせよ,数年先ぐらいの見通しは持って現在の難局を切り抜けたいと思っています。
私がこの大学に正式に任命されたのは1975年でしたから,もう二十年以上が経ち残りは1年余りとなりました。最も若かった私が最年長となってしまいました。人生の3分の1を過ごした最も愛する滋賀医大の将来を考える立場に,私が立たされた事を苦しみながらも喜んでいます。12年前の「しゃくなげ 19号」に書いた文章をみますと,私達の研究室から比良や比叡山を眺めるとありますが,その山々も今は見えません。看護学科の建物ができたからです。世の中は刻々と変わりつつあるのです。今,医者や医科大学は,氷河の時代を迎えようとしていると云われます。『どうせ行政改革もできないことだし,じっとしてれば嵐は過ぎていくさ』と考えている人のなんと多いことでしょう。減少する人口,増加する医療費,打ち続く定員削減等々を考えてみて下さい。そんなに簡単に過ぎて行く嵐ではないのです。大袈裟に云えば大学存亡の危機なのです。
私をイソップの物語の狼少年だと云う人達が多いようですが,そうであっても構いませんから皆さん本気で考えて下さい。
皆さんが学び,研究し,患者さんと接しているこの大学の将来を本気で考えましょう。何度も云うようですが,私は後1年で消えて行きます。しかし滋賀医大は末広がりに大きくなって欲しいのです。私達はしゃくなげ会の会員をはじめとする県下の人々とともにこの大学を作ったのです。この大学の将来を考えるのは私達の義務ではないでしょうか。図書館,マルチメディアセンターの将来を考えるにはどうしても大学の将来を考えずにはおれないと思います。百家争鳴こそがのぞまれる姿ではないでしょうか。
私の考えを述べさせて頂くならば題にしました『競争と共生』こそが今後私達がとるべき姿であると思います。競争なき社会は必ず堕落します。しかし競争の結果が喧嘩になっては困るのです。そんな社会も必ず亡びます。
最近『地球共生系』と云う言葉がはやります。例えば私達の祖先は数万年から数十万年にわたって原人や旧人と同時代に共存していたことが化石証拠から知られています。かつて駆除することだけが最大の目的と云っていた寄生虫でさえ,最近ではその存在の必要性が論ぜられています。地球上の生物は大古の昔から競争と共生をして来たのです。その結果進化したのです。
私達の大学も進化して欲しいのです。
皆様のいろいろなご意見を図書館,マルチメディアセンターは心から待っています。

(まえだ としひろ)


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滋賀医科大学附属図書館
Last updated: 1998/2/17