さざなみ43(図書館報) | 滋賀医科大学附属図書館 |
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新着図書案内
母を看取るすべての娘へ
森津純子 著 朝日新聞社、1997.WY 200 Mor |
筆者は、ホスピス医として、死の瞬間に立ち会ってきた。「死というものは、決して絶望だけでなく、小さな希望のひかりも秘めている。」と言っている。
大腸ガンを患った母が、病院をきらい、家で看護することになった。筆者は、看護中、感情にふりまわされながらオロオロするばかりの娘、批判的で常に模範生でいようとする医者、ただ成りゆきをつめたく客観的に見守っている観察者という3人の自分を生み出したと述べている。医師として、医学的知識や経験をもとに、母を説得しようとする。しかし、検査や治療を拒む母を目の前にすると、娘として不安になったり、冷静でいられなくなってしまう。観察者は、母親の病状の進行状況を把握し、筆者の葛藤する心の心理状態を分析しているのである。
介護の間、絶えずこの葛藤が起こっている。そして、筆者の中では、看取ったあとも、「医師」と「娘」の葛藤は続いている。
(図書課情報管理係) |
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音楽療法−ことばを超えた対話−レスリー・バント著
稲田雅美 訳 ミネルヴァ書房、1997.WB 550 Bun |
本書は、Leslie Bunt著 MUSIC THERAPY : An art beyond
words, London : Routledge, 1994の全訳である。
著者は、英国における近代音楽療法の創始者Juliette
Alvinの指導を受け、1977年に音楽療法士となり、以来音楽療法士養成課程の教員として教育研究活動に尽力し、1985年、音楽療法分野における英国で最初のPh.D学位を取得した。
「さて本書の内容は、音楽療法の概説書としての広範さと、Buntという一人の音楽療法士のとりくみを紹介し考察する専門書としての深さとが共存している。音楽の潜在力やクライエントの反応についての描写はすべて、豊かな音楽性に裏づけられた実践をとおしてのみ語ることのできる奥深さがある。また全章を通じて譜例を用いた解説がまったく存在しないにもかかわらず、読み手の心の内には彼が用いた音や音楽が快く響きわたる。
Buntは、音楽療法の基本は相互作用にあることを一貫して論じている。それは、人間どうしの相互作用と、一人の人間の内面的な相互作用の両方を意味する。生理学的にどんなによい影響を及ぼす音を見い出すことができても、また、どんなに響きの豊かな音楽を手に入れても、それらを人と人とのつながりのなかであるいはつながりを形成するために、さらには自己統合のために使わなければ音楽療法としての意味はないと彼は考える。」
−(訳者あとがき)より−