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公開講座
Kawakami T, Okamoto K, Ogawa O, Okada Y.
XIST unmethylated DNA fragments in male-derived plasma as a tumor marker for testicular cancer.
LANCET 2004;363:40-42. PMID: 14723995

X染色体不活化遺伝子(XIST)非メチル化DNA による精巣癌の診断
【要旨】
精巣腫瘍の発生頻度は決して高いものではないが、20-30歳台の青年男子に発生する悪性腫瘍としては最も頻度の高いものである。化学療法の進歩により転移性精巣腫瘍患者においても80%以上の治癒率が得られるようになってきた。しかし、21世紀に入ってもさまざまな形で精巣腫瘍の診断の遅れとそれによる悲劇が存在することが指摘されている(LANCET 2002)。こういった精巣腫瘍を取り巻く背景を考えるとき、特異性の高い精巣腫瘍マーカーを探索することは極めて重要な課題と考えられる。 今回われわれのグループは従来の固形癌の報告とは異なる非メチル化という精巣腫瘍に特徴的なエピジェネテイックスの特性を逆に利用し、特異的DNA腫瘍マーカーとして応用できる可能性を示した。女性においては2個あるうちの1個のX染色体は不活化を受け、男性においては活性型X染色体が1個のみ存在する。このX染色体の不活化機構を制御する遺伝子として、XIST遺伝子(X染色体不活化遺伝子)が知られ、本来女性にのみ発現がみられる。このXIST遺伝子の発現制御機構はメチル化によっている。すなわちX染色体不活化遺伝子(XIST)の非メチル化DNAは女性にしか存在せず、男性の体細胞には存在しないものである。

われわれは本来女性にしか存在しないX染色体不活化遺伝子(XIST)の非メチル化DNAがヒト精巣腫瘍組織遺伝子に恒常的に存在することを示した。さらにX染色体不活化遺伝子(XIST)の非メチル化DNA断片が精巣腫瘍患者の血清で検出されることを示した。このことは男性患者血清においてX染色体不活化遺伝子(XIST)の非メチル化DNA断片が検出されれば精巣腫瘍の存在が示唆され、新たな腫瘍マーカーとしての意義があると考えられる。

本報告は世界で初めてDNAの非メチル化断片を腫瘍マーカーとして応用できる可能性を示唆した論文であり、本来女性にしか存在しないDNA断片を腫瘍マーカーとして用いるというユニークな発想から得られた成果である。

文責 泌尿器科学講座 岡本 圭生
 
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