Shiga University of Medical Science >ENGLISH
国立大学法人:滋賀医科大学
大学紹介 講座・施設 入試情報 教育・研究 産学連携 国際連携 学生生活 附属病院

滋賀医科大学TOP > 教育・研究 > 最新研究論文の紹介 > これまでの紹介論文

TOPへ
公開講座
Chih-Yen Chen, Akio Inui, Akihiro Asakawa, Kazunori Fujino, Ikuo Kato, Chih-Chuan Chen, Naohiko Ueno, Mineko Fujimiya
Des-acyl Ghrelin Acts by CRF Type 2 Receptors to Disrupt Fasted Stomach Motility in Conscious Rats
Gastroenterology 2005;129(1):8-25 PMID: 16012930

デスアシルグレリンは脳のCRF2型受容体を介して胃の空腹期運動を抑制する
【要旨】
グレリンは、成長ホルモン放出促進因子受容体の内因性リガンドとしてラットとヒトの胃から同定された新しいペプチドです。摂食行動をコントロールするペプチドのほとんどが視床下部で産生される事が知られていますが、末梢臓器で産生され脳の受容体に作用して摂食をコントロールするペプチドとしては唯一レプチンが知られていました。グレリンはまさに末梢臓器で産生され、脳に作用して摂食行動をはじめ多彩な中枢作用を発揮するペプチドで、このペプチドの発見で「末梢臓器が脳の機能をコントロールする」という脳腸相関の新しい局面が展開する事になりました。

グレリンは28個のアミノ酸よりなるペプチドで、3番目のセリン残基の側鎖は、炭素原子数8個の脂肪酸であるオクタン酸によってアシル化されています。グレリンは強力な成長ホルモン分泌促進作用を有し、食欲、体重調節、消化管運動調節、不安発現、循環器調節、糖代謝、脂肪生成、学習、記憶など、多彩な生理作用を発揮する事が知られています。一方、オクタン酸が付加されていない(アシル化されていない)グレリン分子(デスアシルグレリン)は、血液中の全グレリン量の90%以上を占めているにもかかわらず、その生理作用はほとんど知られていませんでした。

本研究によって、デスアシルグレリンは摂食行動を抑制し、消化管運動に対しては胃の空腹期運動を抑制するという、グレリンと拮抗する作用がある事を初めて明らかにしました。これらの反応を起こす情報伝達経路は全く異なっており、グレリンは胃から分泌されて胃壁内の迷走神経知覚線維終末の受容体に作用して、神経性に脳内に入力し視床下部の弓状核にあるNPYニューロンを介して摂食や消化管運動を亢進させると考えられます。一方、デスアシルグレリンは胃から血液中に分泌され脳血管関門を通過して直接脳内に入り、視床下部の室傍核にあるCRFやウロコルチンニューロンに作用して、CRF2型受容体を介して摂食や消化管運動を抑制する事が本研究によって明らかになりました。

脳内のCRF受容体はストレス反応に関連した受容体で、本研究によってストレスで起こる消化管の機能不全や摂食障害に対する治療薬の開発が進むものと考えています。

文責 解剖学講座 藤宮 峯子
 
Page Top
 
交通・アクセス キャンパスマップ 関連リンク お問い合せ先 サイトマップ このサイトについて
  Copyright(C)2005 Shiga University of Medical Science All Rights Reserved.