Tomoya Terashima, Hideto Kojima, Mineko Fujimiya, Kazuhiro Matsumura, Jiro Oi, Manami Hara, Atsunori Kashiwagi, Hiroshi Kimura, Hitoshi Yasuda, and Lawrence Chan. |
From The Cover: The fusion of bone-marrow-derived proinsulin-expressing cells with nerve cells underlies diabetic neuropathy. |
Proc Natl Acad Sci U S A.2005 Aug 30;102(35):12525-30
PMID: 16116088 |
|
糖尿病性神経障害は神経細胞と異常骨髄細胞との細胞融合により生じる
|
【要旨】 我々は膵島新生を目的とする糖尿病の遺伝子治療法開発の過程で、未治療糖尿病動物の肝臓内にインスリンを産生する不思議な細胞を見いだした(Nat Med 2003)。この細胞は骨髄由来で、ホルモン作用をほとんど持たない僅かのプロインスリンを産生し、肝臓だけでなく多くの臓器内へ侵入していた(PNAS 2004)。しかも、強力な細胞障害遺伝子TNFαを発現するという奇妙な特徴を有していた。そこで、糖尿病合併症への関与を疑い、代表である糖尿病性神経障害についてげっ歯類を用いて詳細な検討を行った。この細胞は座骨神経や脊髄後根神経節へと遊走し、神経細胞と細胞融合することにより、神経の機能障害や細胞死を生じさせていることを見いだした。培養細胞を用いた実験においても糖尿病で出現するプロインスリンを発現する神経細胞はほとんどすべてが異常骨髄細胞との融合細胞であって、この細胞のみにカルシウムホメオスタシスの異常やアポトーシスが生じていた。これらの事実は糖尿病合併症の成因を根本から考え直すことと同時に、確実な治療法開発への期待を示すものである。
文責 小島 秀人(生化学分子生物学講座・分子遺伝医学部門) |
|