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公開講座
Yoshihiko Shimizu, Dean Thumkeo, Jeongsin Keel, Toshimasa Ishizaki, Hiroko Oshima, Masanobu Oshima, Yoichi Noda, Fumio Matsumura, Makoto M. Taketo, Shuh Narumiya
ROCK-I regulates closure of the eyelids and ventral body wall by inducing assembly of actomyosin bundles
J. Cell Biol.2005;168(6):941-953 PMID: 15764699

ROCK- Iは胎児期の眼瞼閉鎖、生理的臍帯ヘルニア閉鎖を制御する
【要旨】
分子細胞生物学は生物の体を構成する物質の構造や働きを解明することによって生命現象の本質を理解しようとする学問です。我々は分子細胞生物学的実験手法をもちいて1996年に発見されたRho associated coiled-coil forming protein kinase (ROCK)という遺伝子の働きを明らかにし、それらの知見を治療や創薬に生かしたいと考えています。

Rhoはアクチン細胞骨格の再編成を介して、細胞運動・接着・細胞質分裂など多くの細胞反応の調節分子として機能しています。ROCKはこのRhoにより活性化され、Rhoによるアクチン細胞骨格の再編成を中継する分子であることがin vitroで示されていました。アクチンは細胞膜直下の主要な細胞骨格であり、真核細胞の形態変化、細胞運動に不可欠なものであることから、ROCKの生体内での重要性が予想されていました。実際、現在までROCK特異的阻害薬であるY-27632を用いて数多くのROCKの生体内での機能が解明されてきました。ROCKは高血圧症、気管支喘息、脳血管攣縮、血小板機能、細胞の悪性化、癌浸潤に関与することが国内外の数多くの研究者により証明され、Y-27632の治療への応用が期待されています。

一方、これまで発生におけるROCK-Iの役割はほとんど明らかにされていませんでした。われわれは哺乳類の発生においてROCK-Iが果たす役割を調べるために、ROCK-I遺伝子を破壊したROCK-Iノックアウトマウスを作成しました。ROCK-Iノックアウトマウスは胎児期の眼瞼閉鎖、生理的臍帯ヘルニア閉鎖に異常をきたし、新生児期に死亡するという表現型を示しました。胎児期の眼瞼閉鎖、生理的臍帯ヘルニア閉鎖にはアクチン細胞骨格がそれぞれの場所でバンドリング(アクチンがクロスリンクして太くなること)が必要であること、ROCK-Iノックアウトマウスではこのバンドリングが正常に行われないために眼瞼閉鎖、生理的臍帯ヘルニア閉鎖が正常に行われないことがわかりました。すなわち、ROCK-Iは発生時期の生体内においても、バンドリングという、アクチン細胞骨格の再編成に関与していることが明らかとなりました。また、生理的臍帯ヘルニアの閉鎖異常(ヒトにおいては新生児臍帯ヘルニア)という予後の悪い疾患の原因のひとつがROCK-Iであることも判明しました。

本研究が評価されたのは、1) ノックアウトマウスを作成してROCK-Iの働きを直接的に証明したこと、2) 予想されていたROCK-Iの生体内でのアクチン細胞骨格再編成を証明したこと、3) ROCK-Iが新生児臍帯ヘルニアの原因遺伝子のひとつであることを証明したこと、と考えています。


文責 滋賀医科大学大学院4年生(産科学婦人科学講座)清水 良彦
 
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