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公開講座
Shigeo Yura, Hiroaki Itoh, Norimasa Sagawa, Hiroshi Yamamoto, Hiroaki Masuzaki, Kazuwa Nakao, Makoto Kawamura, Maki Takemura, Kazuyo Kakui, Yoshihiro Ogawa, Shingo Fujii
Role of premature leptin surge in obesity resulting from intrauterine undernutrition.
Cell Metabolism 2005;1(6):371-378 PMID: 16054086

胎生期における低栄養環境に起因する成長後の肥満発症には、成長期の「レプチンサージの早期化」が重要な役割をはたす
【要旨】
欧米の先進国のみならず、わが国においても食生活、生活スタイルの欧米化に伴い生活習慣病の増加が看過できない社会問題となっています。とりわけ肥満は生活習慣病の悪化要因として重要であり、その発症機序の解明は遺伝素因や生活習慣の変化を中心に精力的に進められています。
近年の疫学的研究から、第二次世界大戦前後の飢餓を妊娠中に経験した母親から出生した児が、成人後に肥満や生活習慣病を高率に引き起こすことが明らかとなり、Developmental Origins of Health and Diseases(DOHaD:成長過程における栄養障害や環境因子の作用に起因する疾患の発生)という概念が提唱されるようになりました。さらに2,500g未満の低出生体重児は成人後に肥満発症率が高いという疫学報告もあります。
近年本邦では早期産児や2500g未満の低出生体重児の割合が増加し、若年女性の痩せ願望や不規則な食生活などもあって、正期産児においても出生体重の低下傾向が指摘されています。そのためこれらの低出生体重児や子宮内発育制限児(IUGR児)が、将来高率に肥満などの生活習慣病を発症する可能性が危惧されます。
上記のような疫学的データは最近の動物実験でも裏付けられて来ましたが、その具体的な機序はほとんど解明されていませんでした。

本研究では、マウス母獣に摂食制限を加えることでIUGRのモデルを作成し、生まれた新生仔の成長後に高脂肪食を負荷したところ、正常対照群に比べて有意に肥満度が亢進しました。このマウスモデルでは、新生仔期のcatch-up期(IUGR児が正常児の体重に追いつく時期)に一致して肥満制御ホルモンであるレプチン産生の一過性の亢進の早期化を認めたため、この現象を「premature leptin surge;レプチンサージの早期化」と名付けました。正常マウスの新生仔にレプチンを投与して「レプチンサージの早期化」を引き起こしたところ、高脂肪食負荷により同様に肥満が加速したことから、この現象は肥満のDOHaDにおいて中心的な役割を果たすことが想定されました。さらに「レプチンサージの早期化」は、マウス視床下部においてレプチンの感受性を低下させ、かつNeuropeptide Y (NPY)あるいはCocaine- and amphetamine-regulated transcript (CART)などエネルギー代謝調節を司る神経ニューロンの発達に影響を及ぼすことが明らかとなりました。これらの変化は結果として、高脂肪食負荷に対する熱産生の上昇を抑制し、肥満を加速することを解明しました。本研究は、胎生期の低栄養が成長後の高脂肪食など生活習慣にともなう肥満発症のリスク因子となる機序を、世界で初めて具体的に解明したものです。本研究によりDOHaDによる肥満の機序の一端が解明されたことから、今後の予防あるいは治療戦略を開発する端緒となることが期待されます。

文責 外科学講座、山本 寛(京都大学との共同研究)
 
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