Yasushi Itoh, Hiroichi Ozaki, Hideaki Tsuchiya, Kiyoko Okamoto, Ryuzo Torii, Yoshihiro Sakoda, Yoshihiro Kawaoka, Kazumasa Ogasawara, Hiroshi Kida |
A vaccine prepared from a non-pathogenic H5N1 avian influenza virus strain confers protective immunity against highly pathogenic avian influenza virus infection in cynomolgus macaques. |
Vaccine.2008 Jan 24;26(4):562-72. PMID: 18164788 |
|
カニクイザルを用いたH5N1型高病原性鳥インフルエンザウイルスワクチンの開発と有効性の検証 |
【要旨】 従来H5N1型高病原性鳥インフルエンザウイルス感染は主に鳥の感染症でしたが、それが人に感染し死亡する例が報告されています。H5N1型ウイルスの抗原は現在人で流行しているインフルエンザウイルス(H3N2とH1N1)の抗原と異なるので、現行のワクチンはH5N1型ウイルスに有効ではありません。従って、H5N1型のワクチンを開発することが必要です。そこで我々は、カモに由来するH5N1型弱毒ウイルス株からH5N1型用ワクチンを新しく作製し、有効性を検証することとしました。しかし実際のウイルス感染を伴う臨床試験を人では行うことができないので、人に免疫反応が近いと考えられるカニクイザルを用い、本学動物生命科学研究センターのバイオセーフティレベル3施設において、H5N1型高病原性鳥インフルエンザウイルスの感染実験を行い、次の結果を得ました。
- インフルエンザウイルスワクチンを接種していないサルにH5N1型高病原性鳥インフルエンザウイルスを感染させると、40度を越す発熱と食欲減退が見られ、ウイルスが感染後7日目まで検出されました。
- 我々が作製したワクチンを接種したサルに高病原性鳥インフルエンザウイルスを感染させると、発熱や食欲減退は見られず、ウイルスは感染後2日目まで検出され、それ以降は検出されませんでした。
以上の結果から、今回作製したワクチンはH5N1型高病原性鳥インフルエンザウイルス感染防御に有効であることが確かめられました。
引き続きカニクイザルを用いて、免疫増強剤を併用するなど、少ない量でより長期間有効なワクチンの開発を進めたいと考えています。また、H5N1型以外の高病原性鳥インフルエンザウイルスに対するワクチンも開発する予定です。
文責 病理学講座(疾患制御病理学部門) 伊藤 靖 |
|