Keizo Kanasaki, Kristin Palmsten, Hikaru Sugimoto, Shakil Ahmad, Yuki Hamano, Liang Xie, Samuel Parry, Hellmut G. Augustin, Vincent H. Gattone Jr, Judah Folkman, Jerome F. Strauss, Raghu Kalluri |
Deficiency in catechol-O-methyltransferase and 2-methoxyoestradiol is associated with pre-eclampsia. |
Nature. 2008 May 11. [Epub ahead of print] PMID: 18469803 |
|
【要旨】
Pre-eclampsia(PE: 子癇前症)の詳細は不明で特異的治療法は確立していない。金崎らは、catechol-O-methyltransferase (COMT)ノックアウトマウスが妊娠時にPE様症状を呈することを見出した。COMTはカテコールアミンを不活化するのみでなく、estradiolから2-methoxyestradiol (2-ME)を産生する。2-MEは、hypoxia-inducible factor (HIF)-1αの強力な阻害因子であり、正常妊娠後期で急激に血中濃度が上昇する。そこで金崎らは、2-ME欠乏によって、HIF-1αおよびそのHIF-1αによって調節をうける胎盤虚血に起因する可溶性物質(soluble Fms-like tyrosine kinase-1 (sFLT-1)など)が無秩序に発現することがPEの主病態であると考えた。事実、野生型に比し妊娠COMTノックアウトマウスにおいて、血漿2-ME濃度は著明に低下しており、2-ME投与により妊娠COMTノックアウトマウスの胎盤虚血により惹起されるHIF-1α, sFLT-1発現の低下とともにPE様症状は改善した。さらに、ヒトにおいても、PE例では正常妊娠者に比し、血漿2-ME濃度低下していること、胎盤COMT蛋白発現が低下していた。現在、統合失調症など精神神経疾患との相関が知られているCOMT蛋白の安定性に関与する機能的遺伝子多型について、PEにおける血漿2-ME濃度低下や胎盤COMT発現低下に関与しているか否か大規模臨床サンプルを用いた解析が行われており、新たなPEの予知・診断・治療法が明示されるものと確信している。
金崎啓造先生は本学12期生で、現在アメリカの Beth Israel Deaconess Medical Center で活躍中です |
|