Makoto Urushitani, Samer Abou Ezzi, Akinori Matsuo, Ikuo Tooyama, Jean-Pierre Julien |
The endoplasmic reticulum-Golgi pathway is a target for translocation and aggregation of mutant superoxide dismutase linked to ALS. |
FASEB J 2008 July, 22: 2476-2487. PMID: 18337461 |
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小胞体-ゴルジ分泌系への変異SOD1の輸送とアグリゲート形成は家族性筋萎縮性側索硬化症の病態に関与する
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【要旨】
背景) 家族性筋萎縮性側索硬化症(ALS)の20%にスーパーオキシドジスムターゼ1 (superoxide dismutase 1; SOD1)の突然変異が存在しますが、変異SOD1による選択的運動ニューロン死のメカニズムは依然不明です。我々は以前、細胞質タンパクである変異SOD1が神経分泌タンパクであるクロモグラニンと結合して細胞外分泌されること、細胞外の変異SOD1がミクログリアの活性化や運動ニューロン死を起こすことを発見し(Urushtiani et al, Nat Neurosci 2006)、さらに細胞外の変異SOD1を標的とした免疫療法に成功しました(Urushitani et al, PNAS 2007)。しかし、本来細胞質タンパクであるSOD1の細胞内局在については一定の見解が得られておらず、分泌系に入る機序も不明でした。
目的と方法) 今回、細胞質タンパクであるSOD1が小胞体(ER)-ゴルジ分泌系から分泌される分子メカニズムを解明するため、培養細胞を使ったlive cell imaging, 変異SOD1トランスジェニックマウスの組織を使ったタンパク化学的実験、さらにラット肝臓ミクロソーム分画を用いたin vitro translocation実験を行いました。
結果) EGFP標識をしたSOD1(野生型、変異型)を神経系の不死化細胞(neuro2a細胞)に遺伝子導入し、24時間後ATPの存在下にジギトニン処理をして細胞質タンパクをwash-outした後に共焦点レーザー顕微鏡で観察すると、野生型・変異型ともにSOD1が小胞様構造内に残存しており、ゴルジマーカーとの共局在を示しました。さらに変異SOD1トランスジェニックマウスの脊髄ライセートを、スクロース密度勾配遠心分離法と、iodoxanolを用いたFloating超遠心分離法によってSOD1がER-Golgi分画にあることを証明しました。また、細胞成分分画した脊髄ライセートをchemical cross-linkingした後SOD1抗体を用いてWestern blottingしたところ、変異SOD1を含むアグリゲートがミクロソーム分画で最も著明であることを発見しました。さらに組み換えSOD1タンパクが銅/亜鉛が配位しないアポ状態で、ATP存在下でラット肝臓ミクロソームに取り込まれることを示しました。
結論) 以上の結果はミスフォールドした変異SOD1がER-Golgi分泌系に入ることとALSの病態に関与することを生化学に証明したもので、ALSの病態の理解、治療法開発に寄与するものと考えられます。
文責 分子神経科学研究センター 漆谷 真 |
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