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公開講座
2010年4月21日 更新
Ikuo Tanibuchi, Hiroyuki Kitano and Kohnosuke Jinnai
Substantia nigra output to prefrontal cortex via thalamus in monkeys. I. Electrophysiological identification of thalamic relay neurons.
J Neurophysiol 102:2933-2945, 2009. PMID: 19692504
サル黒質-視床-前頭前野投射の単一細胞レベルでの同定
【要旨】
霊長類の大脳基底核-視床-前頭前野(PFC)投射に関してほとんど研究報告がなく不明な点が多い。この研究ではニホンザルの黒質網様部(SNr)から視床背側内側核(MD)・前腹側核(VA)を経由して前頭皮質(FRC)へ至る黒質-視床-皮質投射の電気生理学的特性や投射の局在性について調べた。

最初に、FRC刺激に対する逆行性応答とSNr刺激に対する順行性抑制性反応を観察することによりSNr入力を受ける単一視床-皮質投射ニューロンを同定した。次に、これら視床-皮質投射ニューロンが記録されたMD・VA内の領域を刺激して同部に投射する単一黒質-視床投射ニューロンを見出した。SNr刺激に対する視床皮質ニューロンの順行性応答の潜時は、視床刺激に対する黒質-視床投射ニューロンの逆行性応答の潜時に近似していた。

以上の所見より、SNrから単シナプス性に抑制性入力を受けFRCへ投射するニューロンが視床MD・VAに存在することが単一細胞レベルで実証された。投射の局在性については、MD吻側外側部のニューロンはSNr尾側外側部から入力を受けPFCの主溝より腹側部へ投射していたが、VAニューロンはSNrの吻側〜尾側の広範な領域から入力を受けFRCの種々の領野へ投射していることが明らかになった。この経路は、Alexanderら(1986)によって存在が予測されていた大脳皮質-基底核-視床ループの一部を構成していると考えられる。

文責 生理学講座(統合生理学) 谷渕育夫・陣内皓之祐
 

Ikuo Tanibuchi, Hiroyuki Kitano and Kohnosuke Jinnai
Substantia nigra output to prefrontal cortex via thalamus in monkeys. II. Activity of thalamic relay neurons in delayed conditional go/no-go discrimination task.
J Neurophysiol 102:2946-2954, 2009. PMID: 19692503
サル黒質-視床-前頭前野投射の認知機能
【要旨】
ニホンザルにおける黒質-視床-前頭前野(PFC)投射の視覚認知機能について研究を行った。黒質網様部(SNr)から単シナプス性の抑制性入力を受けPFCへ投射する視床背側内側核(MD)・前腹側核(VA)単一ニューロンの遅延go/no-go弁別課題に関連した発射活動を調べた。

この課題では、一番目の刺激(S1)と二番目の刺激(S2)が遅延期間を挟んで緑色あるいは赤色LEDでランダムに呈示された。サルは、同色のS1-S2(緑-緑、あるいは赤-赤)が呈示されたときはレバーを挙げることが要求され(go試行)、異なる色のS1-S2(緑-赤、あるいは赤-緑)呈示ではレバーを挙げずに保持することが求められた(no-go試行)。課題に関連した顕著なニューロン活動は、刺激の色に無関係にgoを意味するかno-goを意味するかによって異なる反応を示すS2に関連した反応であった。このようなS2関連反応を示すニューロンはMD吻側外側部(rostrolateral MD)に密に分布し、SNr尾側外側部(caudolateral SNr)から単シナプス性抑制性入力を受け、PFCの主溝より腹側の領野(PSv)へ投射していた。

以上の結果は、caudolateral SNr-rostrolateral MD-PSv投射が視覚刺激の行動上の意味をコードする信号を伝達していることを示唆するものであり、PSvで観察される同様のニューロン活動はこの経路を介した信号に起因していると考えられる。PSvに相当するPFC領野、rostrolateral MDやSNrに病変を有する患者ではutilization behavior(視覚的・触覚的に呈示されたものを自分の意志とは無関係に無意識に利用してしまう症状)・ imitation behaviorなどの症状が出現し、日常経験する刺激に対して適切な行動ができなくなることが知られている。このような症状の病態生理を明らかにする上でcaudolateral SNr-rostrolateral MD-PSv投射の機能の解明は有益な所見を提供するものである。

文責 生理学講座(統合生理学) 谷渕育夫・陣内皓之祐
 
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