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最新研究論文の紹介
2012年1月18日 更新
1.Kojima A, Kitagawa H, Omatsu-Kanbe M, Matsuura H, Nosaka S.
Ca2+ paradox injury mediated through TRPC channels in mouse ventricular myocytes.
Br J Pharmacol 2010 Dec; 161:1734-1750.   PMID: 20718730

Transient Receptor Potential Canonical チャネルを通るCa2+の流入が心筋のカルシウムパラドックス傷害の発生に関わっている。
【要旨】
 心臓をいったんCa2+を含まない溶液で短時間灌流した後に再びCa2+を含む溶液で灌流すると、急激な細胞内Ca2+濃度の上昇とそれに起因する細胞拘縮、電気的・機械的活動性の消失、ミトコンドリアへのCa2+蓄積、細胞内タンパク質(ミオグロビン、LDH、CPK)の逸脱等を特徴とするカルシウムパラドックス傷害が発生する。一方、狭心症や急性心筋梗塞などの虚血性心疾患では、虚血心筋への血流が再開されたときに、同様の細胞内Ca2+過負荷を特徴とする心筋虚血再灌流傷害が発生し、その原因の一つとしてカルシウムパラドックス傷害の関与が示唆されている。
 本研究論文では、このカルシウムパラドックス傷害の発生に関わる分子・細胞内機構を明らかにする目的で、共焦点レーザー顕微鏡を用いた細胞内Ca2+イメージング法、パッチクランプ法および免疫細胞化学法を単離マウス心室筋細胞に適用して、検討を行った。その結果、1) カルシウムパラドックス傷害の発生に、近年心臓不整脈や心肥大に関わることが明らかにされているTransient Receptor Potential Canonical (TRPC) チャネル(その中でも特にTRPC1アイソフォーム)を通るCa2+の流入が関与していること、2) そのTRPCチャネルの活性化には、Ca2+を含まない溶液で灌流中に発生する筋小胞体内のCa2+含量の減少が寄与していること、が明らかとなった。
 本研究は、心筋虚血再灌流傷害の発生にTRPCチャネルを介するCa2+流入が関わっているという新しい可能性を示唆したものである。

文責  麻酔学講座  小嶋 亜希子

2.Kojima A, Kitagawa H, Omatsu-Kanbe M, Matsuura H, Nosaka S.
Sevoflurane protects ventricular myocytes from Ca2+ paradox-mediated Ca2+ overload by blocking the activation of transient receptor potential canonical channels.
Anesthesiology 2011 Sep; 115:509-522.

セボフルランはTransient Receptor Potential Canonical チャネルの活性化を抑制することにより,カルシウムパラドックスを介するCa2+過負荷から心室筋細胞を保護する。
【要旨】
 セボフルラン、イソフルランなどの吸入麻酔薬は、心筋虚血再灌流傷害の発生を抑制することが知られており、この作用は,周術期にみられる吸入麻酔薬の心筋保護作用として注目されている。
 本研究論文では、セボフルランのもつ心筋保護作用の分子基盤を明らかにする目的で、心筋虚血再灌流傷害の一因であるカルシウムパラドックス傷害を実験モデルとして、それに対するセボフルランの効果を検討した。単離マウス心室筋細胞を用いて、共焦点レーザー顕微鏡による細胞質内と筋小胞体内のCa2+濃度の計測、およびパッチクランプ法によるTRPCチャネル電流の記録を行った。その結果、1) 臨床使用濃度(3%)のセボフルランはカルシウムパラドックスの発生を大きく抑制すること、2) セボフルランは筋小胞体リアノジン受容体からのCa2+リークを抑制し筋小胞体内Ca2+含量を保持すること、3) セボフルランはTRPCチャネルに対して直接にブロック作用をおよぼすこと、が明らかとなった。
 本実験結果により、セボフルランは、1) TRPCチャネル活性化のトリガーである筋小胞体内Ca2+含量の減少を抑えること、および2) TRPCチャネルに直接ブロック作用をおよぼすこと、の2つのメカニズムを介してカルシウムパラドックスの発生を抑制すると考えられた。このように、セボフルランはTRPCチャネルの活性化に対して抑制作用をもち、この作用がセボフルランのもつ心筋保護効果の分子基盤の一つであると考えられた。

文責  麻酔学講座  小嶋 亜希子
 
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