2011年9月12日
更新 |
Hagiwara T, Mukaisho K, Nakayama T, Sugihara H, Hattori T. |
Long-term proton pump inhibitor administration worsens atrophic corpus gastritis and promotes adenocarcinoma development in Mongolian gerbils infected with Helicobacter pylori. |
Gut. 2010 Nov 20. [Epub ahead of print] PMID: 21097844 |
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ヘリコバクター・ピロリ感染スナネズミにおいて、PPI長期投与は萎縮性胃炎を憎悪させ腺癌の発生を促進する |
【要旨】
Helicobacter pylori(H. pylori)感染患者にProton pump inhibitor(PPI)を長期投与すると、胃体部の萎縮性胃炎が増悪するとの報告がある。我々はH. pylori感染スナネズミにPPI長期投与を行い、胃粘膜におこる変化を組織学的に検討した。
各群15匹のスナネズミを4群に分類した。OPZ+HpグループとHpグループにはH.pylori(ATCC43504)を感染させ、OPZ+HpグループとOPZグループにはPPI(Omeprazole)を投与し、コントロールグループは無処置とした。PPIは1日約100 mg/kgを摂取するように餌に混ぜて6ヶ月間投与した。PPI投与開始時期は、炎症が胃体部にまで波及し始めるH.pylori感染6ヶ月後とした。
スナネズミを屠殺後、胃を大弯切開し、胃底腺領域を6等分、幽門腺領域を3等分し、計9分割した。6切片の胃底腺領域に対して、HE染色標本を用いて組織学的に萎縮の割合を測定し、スコア化した。胃底腺領域における壁細胞の完全な欠如をもって萎縮と判定した。粘膜下に発生する異型のない腺管を異所性腺管とし、それとは異なり核異型と構造異型を伴う腺管を腺癌と定義した。
【結果及び考察】OPZ+Hpグループでは、Hpグループに比べ、より強い胃底腺領域の萎縮を認めた。異所性腺管はOPZ+Hpグループ(15/15匹)とHpグループ(14/15匹)に認められた。一方、高分化型腺癌がOPZ+Hpグループ(9/15匹)とHpグループ(1/15匹)に認められ、その他の群では、腺癌の発生は認めなかった。
以上よりH. pylori感染状態では、PPI長期投与により萎縮性胃炎の悪化がおこり、腺癌の発生を促進する可能性があることが示唆された。これらの結果から、PPI長期投与を考慮する場合には、まず、H. pyloriの有無を検査し、陽性であれば除菌後にPPIの長期投与することが望まれると結論した。
文責 病理学講座 分子診断病理学部門 向所 賢一 |