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最新研究論文の紹介
2012年3月21日 更新
Morino K, Petersen KF, Sono S, Choi CS, Samuel VT, Lin A, Gallo A, Zhao H, Kashiwagi A, Goldberg IJ, Wang H, Eckel RH, Maegawa H, Shulman GI
Regulation of Mitochondrial Biogenesis by Lipoprotein Lipase in Muscle of Insulin Resistant Offspring of Parents with Type 2 Diabetes
Diabetes 2012 in press (April)   PMID: 22368174

インスリン抵抗性患者に観察される骨格筋リポプロテインリパーゼ活性低下がミトコンドリア機能を低下させる
 糖尿病発症早期には骨格筋におけるインスリンの作用不全(インスリン抵抗性)が観察されるが、そのメカニズムとして、骨格筋細胞内に高脂肪食や運動不足といった環境因子によって異所性に脂肪が蓄積する事によりインスリン細胞内情報伝達が障害される可能性が示唆されている。異所性脂肪蓄積の原因として肥満や運動不足のみならずミトコンドリアの機能不全の存在を報告されている。本研究では、インスリン抵抗性被検者で観察される骨格筋ミトコンドリア機能低下の原因を探求する目的で、インスリン抵抗性被検者の筋生検サンプルでDNA micro arrayを行い、mRNA発現を健常者と比較した。その結果、250遺伝子に有意な差を認めた。脂肪酸酸化の遺伝子群はインスリン抵抗性被検者で有意に低下していた。そこで、骨格筋培養細胞を用いて上記250遺伝子に対してRNAiによる遺伝子knock downによる網羅的な検索を行い、新規ミトコンドリア調節因子を探索した結果、Lipoprotein Lipase (LPL)を同定した。LPL発現はインスリン抵抗性被検者でmRNA、タンパク発現ともに有意に低下しており、ミトコンドリア密度とLPL発現が相関する事も確認された。LPLが2型糖尿病で低下する事は古くから知られており、高脂血症の原因の一つと考えられるが、我々の研究結果はLPL低下がミトコンドリア機能異常の原因である可能性を示唆している点において新たな発見である。培養細胞において、LPL RNAiによる遺伝子ノックダウンはミトコンドリア密度・蛋白質・酸化能を低下させた。細胞内への脂肪流入自体がミトコンドリアを調節していると考え、脂肪取り込みの重要な因子であるCD36(fatty acid transporter)をRNAiで処理したところ、LPL同様にミトコンドリアを減少させた。我々はPPARDが骨格筋細胞内の脂肪流入センサーであると考え、PPARDもRNAiで処理したところミトコンドリアの減少が確認された。
結論:インスリン抵抗性被検者で観察されたミトコンドリア密度低下の原因としてLPLの関与が示唆された。LPL-CD36-PPARD経路が骨格筋への脂肪流入の程度を感知し、ミトコンドリア・脂肪酸酸化を調節している可能性がある。本研究は糖尿病発症機序解明や肥満治療への新たなアプローチへと発展する可能性がある。

文責  糖尿病内分泌内科  前川 聡
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