2013年7月31日 更新 |
Akiko Kojima, Hirotoshi Kitagawa, Mariko Omatsu-Kanbe, Hiroshi Matsuura, Shuichi Nosaka, |
Sevoflurane Protects Ventricular Myocytes Against Oxidative Stress-Induced Cellular Ca2+ Overload and Hypercontracture |
Anesthesiology 2013 Sep; 119:606-20. |
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セボフルランは活性酸素による心筋傷害を抑制して虚血再灌流傷害から心臓を保護する |
虚血に陥った心筋を救済するためには冠状動脈の血流の再開(再灌流)が必須であるが,この虚血心筋の再灌流は必ずしも心機能の回復につながるとは限らず,逆に不整脈(再灌流不整脈),収縮機能の回復遅延(stunned myocardium),さらには心筋細胞死(reperfusion-induced cell death)等のさまざまな傷害を伴うことが知られている(心筋虚血再灌流傷害)。
一方,セボフルラン,イソフルラン,デスフルランなどの吸入麻酔薬は虚血再灌流傷害から心筋を保護することが知られている。本研究は,心筋虚血再灌流傷害の発生に密接に関与すると考えられている活性酸素(過酸化水素)による細胞内Ca2+過負荷を実験モデルとして用いて,セボフルランの心筋保護作用を検討したものである。
その結果,過酸化水素は 1) 筋小胞体リアンジン受容体(RyR2)からのCa2+リークを促進すること,2) Ca2+/カルモジュリン依存性タンパクキナーゼ(CaMKII)の活性化を介してL型Ca2+電流(ICa,L)を増強することにより心筋細胞に不可逆的なCa2+過負荷を誘発し細胞死を惹起することがわかった。臨床使用濃度のセボフルランは,RyR2からのCa2+リーク,CaMKIIの活性化,ICa,Lの増強,のいずれに対しても抑制作用を発揮して,過酸化水素によるCa2+過負荷の発生を抑えて心筋細胞を保護することがわかった.。
結論:心筋虚血再灌流傷害は,主に心筋細胞のCa2+輸送タンパク質(RyR2,ICa,L)やその調節因子(CaMKII)の機能が亢進して細胞内Ca2+ホメオスターシスの破綻をきたすことが原因と考えられた。また,セボフルランはこれらのCa2+輸送タンパク質ならびにその調節因子に作用して細胞内Ca2+制御機構を正常化することにより,心筋細胞を虚血再灌流傷害から保護すると考えられた。このセボフルランの作用は,虚血性心疾患の心筋保護薬の開発に新たな情報を提供する可能性がある。
文責 麻酔学講座 小嶋 亜希子 |
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