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最新研究論文の紹介
2017年1月17日 更新
Hisamatsu T, Miura K, Arima H, Kadota A, Kadowaki S, Torii S, Suzuki S, Miyagawa N, Sato A, Yamazoe M, Fujiyoshi A, Ohkubo T, Yamamoto T, Murata K, Abbott RD, Sekikawa A, Horie M, Ueshima H; Shiga Epidemiological Study of Subclinical Atherosclerosis (SESSA) Research Group.
Smoking, Smoking Cessation, and Measures of Subclinical Atherosclerosis in Multiple Vascular Beds in Japanese Men.

J Am Heart Assoc. 5(9). pii: e003738, 2016. doi: 10.1161/JAHA.116.003738.


喫煙習慣は全身の血管で動脈硬化の進展に影響する〜滋賀動脈硬化疫学研究SESSAより〜

 

 滋賀動脈硬化疫学研究(Shiga Epidemiological Study of Subclinical Atherosclerosis, SESSA)は滋賀県草津市住民より無作為に抽出された一般集団を対象に実施している動脈硬化と認知症およびその関連要因に関する疫学研究である。

 本研究は、生涯喫煙量(pack-year)や禁煙期間を含めた詳細な喫煙習慣と、冠動脈、頚動脈、大動脈、および末梢動脈における潜在性動脈硬化との関連を明らかにすることを目的とした。

 滋賀県草津市住民から無作為に抽出された、2006-2008年の調査に参加した、心血管病の既往のない健康な40-79歳の男性1019名を対象とした。

 対象者のうち、32%が現在喫煙者、50%が過去に喫煙していたが禁煙した人、18%が生涯非喫煙者であった。冠動脈石灰化・頚動脈肥厚・大動脈石灰化増加およびAnkle-Brachial Index(ABI)の低下に対する調整オッズ比は、生涯非喫煙者と比較して、禁煙者(頚動脈肥厚1.9倍、大動脈石灰化2.6倍)、現在喫煙者(冠動脈石灰化1.8倍、頚動脈肥厚1.9倍、大動脈石灰化4.3倍、ABI5.2倍)の順で大きく、特に現在喫煙者は全ての動脈硬化指標と強い関連を認めた。また生涯喫煙量(pack-year=1日に吸う箱数×喫煙年数)が増加するにしたがい、冠動脈石灰化・頚動脈肥厚・大動脈石灰化増加およびABI低下の調整オッズ比はより大きくなった。また、禁煙期間が長いほど冠動脈石灰化・頚動脈肥厚・大動脈石灰化増加およびABI低下の調整オッズ比は非喫煙者に近づいた。

 喫煙習慣と動脈硬化性疾患(心筋梗塞や脳梗塞)との関連については世界中の疫学研究から示されてきたが、今回、日本人男性において全身の様々な部位の潜在性動脈硬化を測定し、詳しい喫煙習慣との関連を分析した。その結果、潜在性動脈硬化リスクは、生涯喫煙量の多い喫煙者ほど大きく、早期に禁煙した禁煙者ほど小さいことが明らかとなり、これは冠動脈・頚動脈・大動脈・末梢動脈のいずれの部位の指標でみても同様であった。これらの指標は、部位が異なるだけでなく、血管の石灰化、血管内膜・中膜の肥厚、血流の障害といった、動脈硬化が血管に及ぼす異なる側面を反映している。今回の結果は、喫煙が全身の血管において動脈硬化を進展させる(=悪化させる)という明瞭な結果であった。動脈硬化による心臓病や脳卒中を予防するためには、先ずタバコを吸い始めないこと、また、喫煙者では出来るだけ早く禁煙して動脈硬化が進むのを予防することが大切であることを示した。なお、本報告は日本・アジアからは初めてのものであり世界的に見ても貴重である。


文責 社会医学講座(公衆衛生学) 三浦 克之

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