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最新研究論文の紹介
2016年12月12日 更新
Sumimoto H, Takano A, Teramoto K, Daigo Y.
RAS-Mitogen-Activated Protein Kinase Signal Is Required for Enhanced PD-L1 Expression in Human Lung Cancers. *

PLOS ONE. 2016, 11(11): e0166626. Doi: 10.1371/journal.pone.0166626.


肺癌の異所性PD-L1発現におけるRAS-MAPKシグナルの役割を解明

 (*大学活性化経費および学長裁量経費支援研究)

 Programmed cell death ligand 1 (PD-L1)はマクロファージや樹状細胞などの免疫細胞に加え、血管内皮細胞及び上皮細胞などの正常細胞上に発現し、抗原に感作されたT細胞上に発現するprogrammed cell death 1 (PD-1)のリガンドとしてT細胞受容体シグナルを抑制する機能を持ち、過剰なT細胞性免疫応答のブレーキとして重要な分子である。一方、肺癌を含む様々な悪性腫瘍におけるPD-L1の異所性発現は、宿主による抗腫瘍免疫応答からの逃避機構として働くことが知られている。

 ヒト肺癌細胞株パネルにおいて、PD-L1陽性細胞ではPD-L1陰性細胞と比べて有意にKRASまたはEGFR遺伝子変異の頻度が高いことから、これらに関連する下流シグナル(RAS-MAPK、STAT3、PI3K-AKT)のPD-L1発現機構における役割を解析した。結果、RAS-MAPKシグナルがPD-L1発現を誘導する主要な因子の一つであり、一方、STAT3シグナルは一部の肺癌細胞でPD-L1発現に関わることが明らかとなった。また、PD-L1陽性ヒト肺癌細胞株と陰性株の網羅的遺伝子発現解析データを用いたSupervised cluster解析およびGene Set Enrichment Analysis (GSEA)解析では、PD-L1陽性細胞でMAPKの下流分子を含む細胞運動・接着に関わる遺伝子群の発現やシグナル経路の活性化が認められた。

 MAPKシグナルを制御する分子の活性化は、細胞増殖・運動など癌の悪性形質に深く関わるが、一方で癌細胞におけるPD-L1発現を介した免疫逃避機構にも関与する可能性が示唆され、新たな治療戦略に基づいた癌の分子療法を開発する上で重要な知見と考えられた。


文責 臨床腫瘍学講座・腫瘍内科・腫瘍センター  醍醐 弥太郎

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