本日ここに、令和5年度滋賀医科大学卒業式を挙行できますことは、本学にとって大きな喜びであります。

本日、学士の学位を得て卒業される医学部医学科120名、医学部看護学科57名の皆さん、ご卒業おめでとうございます。6年間または4年間の学業を終えてこの日を迎えられたことに、心より敬意を表します。

ここに至ったのは、もとより皆さんの努力によるものでありますが、同時にこれまで皆さんを育て支えてくださったご家族の方々、そして皆さんを指導し励ましてこられた教職員や友人のおかげでもあります。そのことに、改めて感謝していただきたいと思います。

さて、卒業される皆さんの在学中には新型コロナウイルス感染症が蔓延し、学生生活が一変しました。当初は、未知のウイルスによる感染症が世界中に猛威を振るうなか、医療も混乱を極め、社会全般にさまざまな行動制限がなされました。このような状況下において、本学としても授業や課外活動を制限せざるを得ず、オンライン講義や見学型実習に切り替えるなどの対応を行ってまいりました。特に、看護学科の皆さんにとっては、入学式が急遽開催中止となり、その後の半年間は大学キャンパスの立ち入り制限にともない、授業はすべてオンラインとなり、新たな友人たちと学生生活を共に過ごすことができず、長い間不安を感じながら過ごされたことと思います。

その後も感染の波が繰り返すなかではありましたが、徐々に普段の生活を取り戻しながら、同じ環境下で学ぶ友人と日々切磋琢磨し、医学科の皆さんは共用試験CBT・OSCEをはじめさまざまな試験に合格するとともに、1年半にわたる臨床実習:クリニカルクラークシップを完遂され、また看護学科の皆さんは臨地実習や看護学研究に粘り強く取り組まれるなど、それぞれ本日の卒業式に臨まれるまで成長されたことに、敬意を表します。このような厳しい状況における皆さんの努力と経験は、今後の人生において大きな糧となり、また医療者として感染症に対する知識と実践力を育む機会があったことが、皆さんの大きなアドバンテージになることを期待しております。

ところで、卒業を迎えた皆さんの今の思いはどのようなものでしょうか。本日は、皆さんが入学した年に思いを綴った「入学に際しての決意書」が返却される日でもありますが、おそらく入学の時の決意に恥じない成長をされ、この日を迎えられたことと思います。学長の私も、皆さんの決意書にあらためて目を通しましたが、特に看護学科の皆さんは、半年間のキャンパス閉鎖の後にようやく直接大学に来られた10月に記載された決意書であり、その間の苦労を乗り越えた後の新たな思いに感銘を受けました。皆さんの入学時の希望は、助産師をめざす人、保健師をめざす人、特定の診療科における臨床医を目指す人、研究を行いたい人、ITを活用できる医療者を目指す人、地域医療で滋賀県に貢献したい人などさまざまです。しかしながら、多くの皆さんが共通して思い描いていた医療者の姿は、確かな知識と技術を身につけること、そして患者さんと同じ目線で寄り添うことができること、この2つを兼ね備えた医師と看護師の姿でした。この医療者像は世代を超えて、また国を超えて、あるべき医師と看護師の基本形であると確信しておりますが、入学してからの学生生活の中で、皆さんはその思いを、ますます強められたのではないでしょうか。

本学を含め、医療従事者を目指す学生には、特に社会からの大きな期待と同時に、厳しい目も注がれています。自分とは異なる立場の人を含めて、お互いを尊重する生活態度の涵養は、医療従事者を志す者にとっては極めて重要なことであり、皆さんは在学中にさまざまな場で経験を重ねながら学んでこられたことと思います。これからは社会人として医療の現場に出て行かれますので、常に相手の立場を尊重し思いやることの重要性を、あらためて肝に銘じてください。そして、患者さんに寄り添う頼りがいのある医療者となることを目指す純粋な心構えを、これからも決して忘れないでください。  

一方、国家試験を終えたばかりの皆さんは、医学と看護学の広い範囲における知識の量に関しては、先輩たちも凌ぐほどの高いレベルにあります。しかし、これから皆さんが進んでいく専門領域においては、あくまでも入口の知識であり、各専門領域においてはまだまだ知らないことばかりです。例えば、医師の場合には臨床研修が2年間、専門医研修が最低でも3年間、そして大学院での研究や留学、あるいは診療を継続するにおいても疫学統計研究の基盤は身につけてほしいと思いますので、本当に頼りがいのある専門医になるためには、今後10年近くを要すると思います。このように、これからの10年間は、自分自身をレベルアップさせる大切な期間であると同時に、新たな領域や環境にチャレンジできる貴重な期間でもあります。ぜひとも、何事にも前向きに取り組んでいただき、将来的には再び、本学のリソースを有効に利用していただくことを望んでおります。そして、4月から滋賀県で研修・勤務を始める方、県外で研修・勤務を始める方など、皆さんの進路はさまざまですが、将来はいろいろな分野で滋賀県の医療に貢献していただくことを期待しております。

最後に、滋賀医科大学は本年10月に開学50周年を迎えます。現在、それを記念した各種事業を計画・実施しており、その一環として中庭や学生食堂をリニューアルするとともに、卒業生が集うことができる同窓会スペースとして「湖医会ラウンジ」を新設します。また、今後は毎年秋に、ホームカミングデーを開催する予定です。本学からは開学以来、7,000人を超える卒業生・修了生が巣立ち、滋賀県はもとより全国、そして世界で活躍しています。その先輩たちに続く皆さんのこれからの活躍が、本学のますますの発展を支えるとともに、後輩たちにとって大きな励みになります。ぜひ皆さんには、卒業後も本学に立ち寄っていただき、後輩たちに本学卒業生としての誇りを伝え、伝統を受け継いでいただきたいと思います。本学はこれからも、いつでも皆さんを歓迎します。

皆さんの前途が希望に満ちた輝かしいものであることを心から祈念して、お祝いの言葉といたします。

令和6年3月8日           
 国立大学法人滋賀医科大学長 上本 伸二