医学古書常設展示 滋賀医科大学附属図書館

河村文庫と守一堂文庫

  論語に「温故知新」という言葉がある。学問においても、このことは重要である。欧米の多くの医学関係の大学附属図書館では、医学に関する古典が展示されている一隅があって、無言のうちに医学の発達の歴史を物語るものとして、見る人に深い感動を与えている。
  わが国の医学は、古くは西の方、大陸より伝わってきたと云われているが、16世紀に入って、ポルトガル人、スペイン人などの来朝とともに、当時ルネッサンスの影響を受けて新たに勃興しつつあった近世ヨーロッパの医学が直接日本に伝えられ、さらに17世紀には、主としてオランダ人を介して西洋医学が輸入され、わが国における実証的医学の発展の基礎が築かれた。わが国の医学が今日の発展をきたした蔭には、多くの先人達の並々ならぬ努力があったことを忘れてはならない。
  滋賀医科大学附属図書館においては、創設当初より医学史に関する資料の蒐集を計画していたが、幸い滋賀県内で代々医業を営んでおられる河村家及び安倍家の御好意により、両家に伝わる2500点を超える多数の古医書、古文書、古書、医療器具などの御寄贈を受けることができたのは、私達にとって大きな喜びである。それらの中には、医学史的にみても価値の高いものが多く含まれており、その一部は附属図書館1階の展示コーナーに展示されていて、図書館を訪れる人達の注目を集めている。これらの資料は、河村文庫守一堂文庫として整理保存され、「滋賀医科大学古書目録」が刊行されている。
  江戸時代におけるわが国、ことに滋賀県下の医療事情を知る貴重な資料として、医学史に興味をもつ方々の参考になれば幸いである。

       脇坂行一(滋賀医科大学元学長)
      「滋賀医科大学古書目録」序文より

                     


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Last update: 11/18/96