鈴木 春満 博士研究員

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2007年3月   東京工科大学 バイオニクス学部バイオニクス学科 卒業。
2009年3月   京都大学大学院 理学研究科生物科学専攻 修士号取得
2014年12月 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科
                   細胞生物学専攻 博士(バイオサイエンス)取得
2015年1月より現職。

 これまで、奈良先端科学技術大学院の塩坂貞夫教授のもとで、ニューロプシンシグナルを受容するパルブアルブミン陽性抑制神経細胞に着目し、主に形態学的な変化を観察してきました。細胞外プロテアーゼ、ニューロプシンが統合失調症脆弱因子Neuregulin1を切断し、その切断断片がErbB4受容体を活性化することが知られています。切断されたNeuregulin1によるErbB4受容体を活性化が、パルブアルブミン陽性抑制性神経細胞特異的にGABA伝達を促進し、結果として興奮性神経細胞を制御していることがわかりました。

 通常飼育下で、ニューロプシン欠損マウスを野生型と比較したところ、ニューロプシン欠損マウスでは、歯状回の顆粒細胞層とCA3の錐体細胞層でパルブアルブミン陽性終末の免疫反応性が著しく低下していました。

 自発運動可能なランニングホイールを設置した飼育環境では、海馬のニューロプシンmRNAの発現が上昇することが知られており、実際、野生型マウスでは自発運動によってパルブアルブミン陽性終末の免疫反応性が上昇しました。一方、予想に反して、ニューロプシン欠損マウスにおいても、自発運動によってパルブアルブミン陽性終末の免疫反応性の上昇が観察されました。

 この結果として、ニューロプシンは環境刺激依存的にパルブアルブミン陽性終末を調節していること、パルブアルブミン陽性終末の調節にはニューロプシン非依存性の経路があることが明らかになりました。この研究の一部は、下記に示した Frontiers in Cellular Neuroscience 誌に掲載されました。

 今後は、神経幹細胞が胎児期だけでなく成体脳でも未分化能を保っているメカニズムや、気分安定薬や抗うつ薬が成体脳の神経幹細胞や神経・グリア先駆細胞に対する作用などを明らかにし、これまで研究してきたパルブアルブミン陽性抑制神経細胞をからめて、精神疾患の理解に結びつくような研究をしていきたいと考えています。


Selected publications

  • Suzuki H, Kanagawa D, Nakazawa H, Tawara-Hirata Y, Kogure Y, Shimizu-Okabe C, Takayama C, Ishikawa Y, Shiosaka S (2014) Role of neuropsin in parvalbumin immunoreactivity changes in hippocampal basket terminals of mice reared in various environments. Front Cell Neurosci 8, 420
  • 鈴木春満 (2012) 細胞外プロテアーゼ. 脳科学辞典 (担当編集委員 河西春郎) DOI:10.14931/bsd.1636