
第80回東近江がん診療セミナー
令和7年9月4日(木)17:30〜
9月のがんセミナーは、がん薬物療法を受ける患者さんについて取り上げました。
第1部では、製剤主任の土江先生から、外来で化学療法を受ける患者さんに対し、薬剤師が患者さんのオリエンテーションでお話されている内容についてお話いただきました。
お話の内容は「副作用の発現時期」「ICIの副作用はいつ起こる?」「内服抗がん剤の飲み忘れ時の対応」「曝露対策について」の4つで、特にICI(免疫チェックポイント阻害薬)の副作用については、髪の毛が抜けるや吐き気といった患者さんがイメージしている副作用と違って、投与後何日も経過して出てくる場合や、副作用とは判断しにくい症状もあって、患者さんやご家族への説明を丁寧に行い、早期発見に結びつけるような働きかけが重要ということで、時間を割いて詳しく説明がありました。
第2部ではがん薬物療法看護認定看護師の平塚看護師より、看護師の役割についてお話いただきました。
がん薬物療法を実施する患者さんに対し、「薬の種類が多すぎてよくわからない」「抗がん剤によって副作用が違うというが・・・」「退院時のアドバイスへの対処」といった多くの看護師が不安に感じることについて、「がん薬物療法の特徴」「がん薬物療法に使用される薬の種類と特徴」「がん薬物療法における看護のポイント」の3つのテーマで詳しくお話がありました。特に「看護のポイント」では、患者さんが医師や薬剤師の説明をどこまで理解しているかを確認したうえで、その患者さんに応じた対処の方法や、家庭のこと、仕事のこと、お金のこと、副作用のことなど患者さんによって異なる気がかりに、看護師としてできるアドバイスの事例など、これまでの看護の中で得た学びを実践に役立てる非常にわかりやすい内容でした。
次回『第81回東近江がん診療セミナー』は10/2(木)の開催予定(内容未定)です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で通常第1木曜日に開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

製剤主任 土江先生

薬剤部長 服部先生

がん薬物療法看護認定看護師 平塚看護師

外来看護師長 國渓師長
第79回東近江がん診療セミナー
令和7年7月3日(木)17:30〜
7月のがんセミナーは、肺癌の治療について取り上げました。
第1部では、呼吸器外科医師の尾崎先生より『肺癌術後補助化学療法から再発後の治療について』と題して、肺癌の周術期治療を中心に解説していただきました。
肺癌の病期分類はⅠA〜ⅢBまでに分類され、ⅠA/ⅠBでは手術(+術後化学療法)ⅡA/ⅡB、ⅢA、ⅢBの一部では術前化学療法+手術+術後化学療法or放射線化学療法、ⅢBは化学療法が適応となるようで、病期が幅広く、適応を決めるのが難しいそうです。今回のテーマは肺癌術後補助化学療法ですが、手術を先行して術後に化学療法をやるのかいいのか、術前に化学療法をやるのがいいのか、外科医の中でも意見がわかれるそうで、治療方針は慎重に検討すべきとのこと。手術で取れることがわかっている患者さんに術前治療をすることで、過剰な治療になったり、副作用によって治療機会を逃してしまうことになったりして、判断が難しいそうです。
第2部では『患者の家族の願いを叶える看護〜院内でのフォトウェディング実現のための多職種連携〜』として、第1部で症例提示のあった患者さんの看護について発表がありました。
この発表は、治療の甲斐むなしく、終末期を迎えた患者さんの娘さんがウェディングドレス姿を見せてあげたいと、前撮りの日に院内でフォトウエディングが挙げた経緯を辿ったものでしたが、他の患者さんに影響のないように動線を確保したり、点滴を外した姿で写真が撮れるように調整したり、部屋の飾り付けをしたり、看護師が起点となって関係部署と連絡をとりあいながら実践した事例でした。患者さんやご家族が喜ぶ様子を目にできたことは、「やってよかった」と看護師自身の感動につながり、やりがいや患者に寄り添う看護について再確認できた、との言葉が印象的でした。
次回『第80回東近江がん診療セミナー』は9/4(木)の開催予定(内容未定)です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で通常第1木曜日に開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

呼吸器外科医師 尾崎先生

副院長 目片先生

南5病棟 村瀬看護師

南5病棟 林師長
第78回東近江がん診療セミナー
令和7年6月5日(木)17:30〜
6月のがんセミナーは、腹水について取り上げました。
第1部では、外科医師の髙尾先生より『腹水の病態と治療』と題して、腹水の原因や原因疾患、治療方法について解説していただきました。腹水には、大きく「漏出生腹水」と「滲出性腹水(炎症性腹水)」があり、これらは原因疾患により分類されること、治療には水分、塩分制限を行う一般的治療と、利尿薬やアルブミン製剤による薬物療法があり、改善しない場合は、腹水穿刺排液とアルブミン製剤を補充する方法や、腹膜頸静脈シャント術、腹水濾過濃縮再静注法(CART)などが適用となることなどをお話いただきました。
第2部では、臨床工学技士の速水主任より『CART治療について』詳しく説明していただきました。CARTとは、おなかに針を刺して溜まった腹水を抜き、細菌、がん細胞や血球成分を取り除き、アルブミンなどの有用成分が濃縮された腹水を点滴で戻す治療法です。(旭化成メディカルHPより引用)臨床工学技士として30年間CART業務に携わってきた中での変化や、CART後の発熱と処理速度の相関性や、再静注前のNSAIDsやステロイド使用の有効性等についてお話をしていただきました。
第3部では、がんの終末期の患者さんに2度のCARTを実施し、患者さんが望む最期を迎えるために多職種で連携した症例を南3病棟の磯部看護師に発表していただきました。
セミナー後の質疑では、患者さんが在宅に移行した場合の腹水コントロールをどうするかが問題提起されました。患者さんの状況により課題は違いますが、引き続きがんセミナーでも検討していきたいと思います。
次回『第79回東近江がん診療セミナー』は7/3(木)の開催予定(肺癌の症例提示)です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

外科医師 髙尾先生

臨床工学技士 速水主任

南3病棟 磯部看護師

外科医長 山口先生

南3病棟 北井師長
第77回東近江がん診療セミナー+第92回ひがしおうみ☆栄養塾
令和7年5月15日(木)17:30〜
毎年恒例で5月のがんセミナーは、ひがしおうみ☆栄養塾とのコラボ企画で「がん悪液質治療薬」をテーマに開催しました。
がん悪液質とは「通常の栄養サポートでは完全に回復することができず、進行性の機能障害に至る、骨格筋量の持続的な減少(脂肪量減少の有無を問わない)を特徴とする多因子性の症候群」と定義されています。(Fearon K,et al.Lancet Oncol.2011;12(5):489-495.)
がん悪液質は進行がん患者の80%に認められ、体重減少と食欲不振といった典型的な症状に加えて、化学療法の効果の減弱、副作用や治療中断の増加、さらには生存率にまで影響を及ぼします。がん患者における体重減少は、その程度に応じて予後を悪化させるため積極的な治療が必要とされています。(日本がんサポーティブケア学会「がん悪液質ハンドブック」より)
しかしながら、これまで国内ではがん悪液質の治療薬はありませんでしたが、第1部の講演では2021年にがん悪液質の治療薬として承認されたアナモレリンについて、対象となるがん種や適応条件、禁忌などについて勉強をしました。
悪液質には、「前悪液質」「悪液質」「不応性悪液質」の3つのステージがあり、早期からの栄養サポートを行っていくことが重要とされており、第2部では、当院薬剤部によるアナモレリン投与症例における開始時期と効果について、日本栄養治療学会近畿支部第16回学術集会で発表された演題に加え、関連する論文3編が紹介されました。
次回『第78回東近江がん診療セミナー』は6/4/(木)の開催予定(CART:腹水濾過濃縮再静注法)です。
★がんセミナーは会場とZoomの併用で開催。Zoom参加をご希望の方は、東近江総合医療センター地域医療連携室(E-mail:402-chikirenkei@mail.hosp.go.jp)までメールをお願いします。

小野薬品工業(株) 安部様

主任薬剤師 大住先生

伊藤明彦先生
