高度な手術技術と研究成果を融合し、安全で質の高い肝胆膵外科診療を提供します
滋賀医科大学 肝胆膵外科チームでは、肝臓癌、膵癌、胆道癌、転移性肝腫瘍などの肝胆膵疾患に対する専門診療を行っています。
開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術を適切に組み合わせるとともに、研究によって得られた知見を日常診療へ還元し、安全性と根治性の両立を目指しています。
【他院で手術が難しいと言われた方へ】
当科の特徴
難治性肝胆膵疾患に対し、高難度手術・集学的治療・臨床研究を通じて最善の治療を追求しています。
【日本肝胆膵外科学会高度技能専門医修練施設A認定施設】
当科は肝胆膵高難度手術を年間50例以上実施する高度技能専門医修練施設Aに認定されています。
【高難度肝胆膵手術に対応しています】
肝胆膵外科手術は外科治療の中でも特に高度な専門性を必要とします。
当科では肝切除、膵切除、胆道再建を伴う手術をはじめ、主要血管へ進展した腫瘍に対する動脈・門脈合併切除再建など、高度な技術を要する手術にも対応しています。
また、症例に応じてロボット支援手術などの低侵襲手術や人工血管を用いた一時的バイパスなどを活用し、最適かつ安全な手術の実施に努めています。
【研究成果を診療へ還元しています】
当科では、膵液瘻や胆汁漏などの術後合併症の低減、安全な手術手技の確立、周術期管理の改善を目的とした研究を継続しています。これらの研究成果は国内外の学術誌や学会で発表するだけでなく、手術手技や周術期管理の改善に活かされ、より安全な肝胆膵外科診療につながっています。
【患者さんごとに最適な術式を選択します】
開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術にはそれぞれ利点と限界があります。
当科では手術方法ありきではなく、病状や解剖学的条件、患者さんの全身状態を総合的に評価し、最適な治療方法を選択しています。
【多職種による集学的治療】
肝胆膵癌の治療では外科治療だけでなく、化学療法や放射線治療を含めた総合的な治療戦略が重要です。
当科では消化器内科、放射線科、病理診断科などと連携し、多職種カンファレンスを通じて患者さんごとの治療方針を検討しています。
【主な対象疾患】
・肝細胞癌
肝細胞癌は肝臓に発生する癌で、B型・C型肝炎、脂肪肝、アルコール性肝障害などを背景に発症します。治療には手術、ラジオ波焼灼療法、血管内治療、薬物療法などがあり、病変の大きさや数、肝機能を総合的に評価して治療方針を決定します。また、近年は免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬を中心とした薬物療法の進歩により、初診時には切除不能と判断される肝細胞癌であっても、治療効果が得られた後に根治を目指した肝切除(Conversion surgery:コンバージョン手術)を検討できる場合があります。当科では消化器内科と密に連携し、薬物療法の導入・継続・効果判定を積極的に行い、手術の可能性を適切な時期に再評価しています。他院で切除が難しいと言われた進行肝細胞癌についても、消化器内科、放射線科と連携し、多職種カンファレンスで治療方針を検討し、薬物療法、血管内治療、外科治療を組み合わせ、患者さんごとに最適な治療戦略を提案します。
・転移性肝腫瘍
手術を行う転移性肝腫瘍の原因は大腸癌が最も多く、手術の成績が最も良好です。また転移性肝腫瘍は複数個できることがあり、手術が難しいとされますが、抗がん剤を使用することで、手術が可能となる場合もあります。切除の可能性を診断するためには専門的な知識が必要であるため、肝臓外科専門施設でなければ、本当は手術できる状態なのに手術できないと判断される場合があります。当科では、多発転移肝がんであっても、さまざまな工夫を用いて切除を行っており、日本で施行している施設が少ないアルプス(ALPPS)手術にも取り組んでいます。
・膵癌
膵癌とは、膵臓から発生した悪性腫瘍で、膵癌の家族歴、糖尿病、慢性膵炎などとの関連が指摘されています。治療は、膵癌の進行度や患者さんの健康状態によって異なりますが、術前抗癌剤を施行したのちに手術で取り切ることが最も効果的な治療法です。当科では症例に応じてロボット支援手術にも対応しています。また、手術で取り切れないと判断した場合には抗癌剤の使用が優先されますが、抗癌剤治療の効果が極めて良好で切除可能となった場合には、Conversion surgery(コンバージョン手術)を積極的に検討しています。Conversion surgeryは主要血管を巻き込んでいることが多く非常に高難度な手術となりますが、当科では患者さんの状態に応じて動脈・門脈合併切除を含めた手術をご提案させていただきます。
・膵嚢胞性腫瘍
膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、漿液性嚢胞腫瘍などに分類されますが、IPMNやMCNは良性のものから悪性のものまで存在することが知られています。そのため、良性か悪性かを慎重に診断することが重要となります。その診断には、CT検査やMRI検査、さらには超音波内視鏡検査、内視鏡的逆行性膵管造影などが必要です。滋賀医科大学医学部附属病院では消化器外科、消化器内科及び放射線科と連携して診断治療にあたっており、適切な時期に手術加療を行っています。
・膵神経内分泌腫瘍
膵神経内分泌細胞から発生した腫瘍で、比較的まれな疾患です。基本的には、進行は比較的緩やかですが、急激に進行して肝臓などへ転移するものもあり、注意が必要です。また、遺伝性のものも存在しており、他疾患の合併に注意が必要です。診断は、CT検査や超音波検査などがあります。また転移の有無の検索では、MRI検査やソマトスタチン受容体シンチを行います。治療は、外科的切除や、分子標的薬、抗癌剤、血管内治療(肝動脈塞栓術)、放射線治療(PRRT)などがあり、患者さんの状態に応じて手術を提案させていただきます。
・胆道癌
胆道(肝内胆管、肝外胆管、胆嚢、十二指腸乳頭部)から発生した悪性腫瘍です。褐色尿、皮膚の黄染などで気付かれることが多いです。治療は、胆道癌の進行度や患者さんの健康状態によって異なります。手術が最も効果的な治療法であり、肝切除や膵切除、肝膵同時切除など患者さんの状態に応じて最適な手術を提案させていただきます。手術で取り切れないと判断した場合には、手術ではなく抗癌剤の使用が優先されますが、抗癌剤治療の効果が極めて良好で切除可能となった場合には、患者さんの状態に応じて動脈・門脈合併切除を含めた最適な手術をご提案させていただきます。
肝胆膵外科手術について
肝切除術および膵切除術は解剖学的な複雑性に加え、経験が必要な手技も含まれており、高難度手術とされています。また術後合併症も高率とされており、なかには生死にかかわる重篤なものも含まれます。手術のみならず、術後合併症にも安全に対応する必要があり、専門施設での治療をお勧めいたします。滋賀医科大学医学部附属病院では、普段から消化器外科、消化器内科、放射線科と密に連携を取り情報を交換しており、あらゆる合併症に対して安全かつ迅速な対応が可能となっております。
肝切除術および膵切除術は高難度手術をより安全に確実に行うことができる認定を受けた施設で施行されるべき手術です。滋賀医科大学医学部附属病院は、日本肝胆膵外科学会高度技能専門医修練施設A(肝胆膵高難度手術50例/年以上)に認定されており、肝胆膵外科学会が認定した高度技能専門医および内視鏡外科学会が認定した技術認定医のもとで手術を行っております。
【主な術式】
・肝切除術
肝切除では、腫瘍学的因子のみならず、患者さんの状態や肝臓の元気度(肝予備能)も加味して検討が必要です。
また肝臓はたくさんの血管が通っている臓器であり、肝臓を大きく切除する肝切除術は、高度な技術が必要となり、高難度手術とされています。特に腹腔鏡手術は開腹手術と比較して手術の難易度が高いため認定施設でのみ手術が認められています。当科では日本内視鏡外科学会の技術認定医(肝臓)及び日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医が中心となって、最新の画像処理技術を用い(シミュレーション・ナビゲーション)、腹腔鏡やロボット支援下での手術を行っています。
巨大肝癌に対する肝右葉切除(右副腎合併切除、下大静脈合併切除再建)
腹腔鏡下肝左葉切除術 肝実質切離後
切除不能肝細胞癌に対する薬物治療奏功症例におけるシミュレーション画像を用いた肝前区域切除(コンバージョン手術)
術中ナビゲーションを用いた腹腔鏡下肝切除術
術前シミユレーション画像
・膵頭十二指腸切除術
解剖学的に複雑な領域で、さらに消化管を使ってつなぎ直し(再建といいます)が必要となるため、高難度手術とされています。一般的に術後合併症が多い術式とされており、これは 10%以上にものぼる膵液瘻(膵液が腹腔内に漏れ出すること)が大きく関係しています。もともと膵臓自体が非常に柔らかな組織であることに加え、膵液に含まれる消化酵素は、腸液や胆汁が混じることで活性化され、この活性化した膵液がおなかの中に漏出すると、膿瘍を形成したり、動脈壁が破綻して仮性動脈瘤を形成することがあります。
これらの合併症は生死にかかわる重篤なものです。膵癌診療ガイドラインでも多くの膵臓手術を手掛けている病院(ハイ・ボリューム センターといいます)で手術すべきと書かれています。ハイ・ボリューム センターの定義はいろいろありますが、年間の膵切除術 20例以上が一つの目安となります。
当科では、通常の膵頭十二指腸切除術だけでなく、動脈や門脈を合併切除するより高難度な手術も手掛けています。初診時に切除不能であっても、化学療法が非常によく効き完全切除が可能となれば、身体の状態も考慮したうえで、日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医が中心となって積極的に外科的切除を行っております。
膵頭十二指腸切除術 切除後
膵頭十二指腸切除術 再建後
一時的門脈バイパスを置いた膵頭十二指腸切除術
動脈門脈合併切除を伴う膵頭十二指腸切除
・膵体尾部切除術
患者さんの状態、腫瘍の根治性などを総合的に判断して、開腹手術や腹腔鏡手術、ロボット支援手術を提案させていただいています。
当科では日本内視鏡外科学会の技術認定医及び日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医が中心となって、開腹手術、腹腔鏡やロボット支援での手術を行っています。
膵体尾部切除術
膵尾部癌に対する腹腔鏡下膵体尾部切除術
膵体部癌に対するロボット支援腹腔鏡下膵体尾部切除術( Triangle郭清)
・肝切除+胆道再建
非常に大きな肝切除が必要となりますので、残肝の予備能が不足している場合には経皮的門脈塞栓術を行い、残肝容量を増加させ安全な手術ができるよう対応しています。
この手術も解剖学的に複雑な領域で、さらに消化管を使ってつなぎ直し(再建といいます)が必要となることがあるため、高難度手術とされています。当科では日本肝胆膵外科学会の高度技能専門医が中心となって手術を行っています。
肝左葉尾状葉切除、胆道再建
【肝胆膵外科スタッフ】
当科には日本肝胆膵外科学会高度技能専門医をはじめ、肝胆膵疾患の診療に精通した医師が中心となって診療にあたっています。
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このような患者さんは当科へご相談ください
・肝臓癌と診断された
・膵癌と診断された
・胆道癌(胆管癌、胆嚢癌)と診断された
・転移性肝腫瘍について相談したい
・他院で手術が難しいと言われた
・セカンドオピニオンを希望している
Q&A
Q. 他院で手術が難しいと言われました。診てもらえますか?
病状によっては高度な血管再建を伴う手術や集学的治療が選択肢となる場合があります。まずは紹介状や検査・画像データをご準備のうえご相談ください。
Q. ロボット手術は受けられますか?
当科ではロボット支援手術に対応しています。病状や腫瘍の位置などを総合的に評価し、最適な術式を選択しています。
Q. セカンドオピニオンは可能ですか?
可能です。現在の主治医の先生にご相談いただき、紹介状や検査・画像データをご準備ください。
Q. 膵癌や肝臓癌でも手術できますか?
膵癌、肝臓癌のいずれにおいても、進行度や全身状態によって最適な治療方針は異なります。当科では外科治療だけでなく化学療法や放射線治療を含めた集学的治療を行っており、それぞれの状態に応じた最適な治療を提案させていただきます。
Q. 血管に接した癌でも手術できますか?
病状によっては動脈や門脈の合併切除再建を伴う手術を検討することがあります。まずは当科外来でご相談ください。
Q. 入院期間はどれくらいですか?
疾患や手術内容によって異なります。診察時に詳しくご説明いたします。
患者さんへ
肝胆膵疾患の治療には高度な専門性や高度な設備などが求められます。
私たちは多職種と協力し、最新の知見と確かな技術をもとに、一人ひとりの患者さんに最適な治療を提供できるよう努めています。
不安なことやご心配なことがあれば、お気軽にご相談ください。
(文責:前平博充 最終更新日:2026年6月21日)