私たちが興味を持っていること

私たちがテーマにしている神経幹細胞を中心に、現在進行中のプロジェクトを示します。

Research Map

プロジェクト紹介

 
DNAの脱メチル化機構

 マウスで胎生7.5~8.5日に神経幹細胞が誘導される正にその時期に、Notchシグナルの標的であるHes5遺伝子のプロモーターが脱メチル化を受け、Notchシグナルが伝わるようになることを証明しました (Nat Neurosci 2011)。このDNA脱メチル化にはGlial cells missing (Gcm) 遺伝子が関わっており、ゲノム複製を必要としない能動的脱メチル化であることも示しました。DNAの能動的脱メチル化の分子機構には判っていないことが多いですが、受精直後にも重要な働きをしていると考えられており、これからも精力的に研究を進めていきます!発表論文の詳細はこちら

 
未分化神経幹細胞の誘導機構

 ES細胞のような多能性幹細胞から神経幹細胞が誘導されるメカニズムを研究する過程で、神経系に分化しつつもまだ大きな分化能力を保っている段階があることを発見し、このステージを未分化神経幹細胞と名付けました (Neuron 2001)。このような性質をもった細胞はepiblast段階の胚にも存在することも報告しました (Genes & Dev 2004)。発表論文の詳細はこちら

 
神経幹細胞の誘導・維持の分子機構

 神経幹細胞は胎生期の脳で大量の神経細胞・グリア細胞を産みだします。分化した細胞を大量に産生しつつも、自分自身を未分化な状態で維持する(これを自己複製能と呼ぶ)ためには特別なメカニズムが必要です。ここにNotchシグナルが働いていることを報告しました(Genes & Dev 2002)。上で述べた未分化神経幹細胞から神経幹細胞が誘導される際にも、Notchシグナルの活性化が必要です (Genes & Dev 2004)。また、胎生期には脳が領域ごとに異なる機能を担うために複雑に分化していきますが、神経幹細胞の段階ですでに大まかな領域特異性があることも報告しました(Development 2002)。発表論文の詳細はこちら

 神経幹細胞は胎生期のみならず成体の脳でも維持されていますが、動物の一生に亙って自分自身を維持するためには、増殖と分化のバランスをうまく調節する必要があります。増殖とは、すなわち細胞分裂の積み重ねであり、1回の細胞周期にかかる時間の制御が重要です。神経幹細胞の細胞周期は胎生期に延長していき、成人の脳では遂に非常にゆっくりとしか分裂しなくなると考えられています。この”非常にゆっくりとしか分裂しない”という性質は、さまざまなタイプの幹細胞において、遺伝子変異のリスクを減らす意義があるのだろうと、推測されています。私たちは、神経幹細胞の細胞周期と分化を統合的に制御する因子として、Bre1aを発見しました。(J Neurosci 2014)。発表論文の詳細はこちら

 
オリゴデンドロサイト誘導の分子機構

 胎生期の神経幹細胞は、神経細胞に引き続いてオリゴデンドロサイトを産生します。一部のオリゴデンドロサイトはSonic hedgehog (Shh) の影響下で脳や脊髄の腹側から発生してきますが、大脳皮質(背側)のオリゴデンドロサイトの起源はよくわかっていません。私たちは、背側のオリゴデンドロサイトが出生前後の限られた時期に、限局した部位で産生されていることを見いだしました(Cerebral Cortex 2015)。現在はこの時期のこの部位で働いている因子の同定を進めています。発表論文の詳細はこちら

 
ストレスや薬物負荷による神経幹細胞の動態変化の解析

 成体脳の脳室下層や海馬歯状回に存在する神経幹細胞は安定に維持されていますが、慢性ストレス下ではその数が減少することを示しました (J Neurosci Res 2007)。興味深いことに、この神経幹細胞の減少は自然には回復しませんが、抗うつ薬の投与によって正常まで回復しました。成体脳の神経幹細胞の維持には、脳内のセロトニン系が深く関わっていることも明らかにしました。発表論文の詳細はこちら

 C型肝炎などの治療に使われているインターフェロンαは、副作用としてうつ病を発症しやすいことが、大きな問題点でした。私たちはこの弱点を逆手に取り、インターフェロンαの慢性投与によるうつ病モデルマウスの作製に取り組みました。このマウスでは、抑うつ状態を示唆する行動の変化とともに、脳室下層や海馬歯状回の神経幹細胞が減少していました (Stem Cell Reports 2014)。発表論文の詳細はこちら

 
情動・気分形成における成体脳の神経幹細胞ー神経細胞新生システムの役割

 成体脳の神経幹細胞ー神経細胞新生システムの役割や機能については、まだ分からないことが多くありますが、動物の情動や気分にも深く関与すると考えられています。私たちは、躁うつ病の治療に用いられる気分安定薬が神経幹細胞に直接作用し、神経幹細胞の自己複製能を亢進させることを発見しました(Stem Cells 2008)。また、ここにはNotchシグナルの活性化も関わっていることも示しました。現在はその分子メカニズム、特に最近注目のエピジェネティック機構との関連を調べているところです(論文準備中)。このような研究が、気分障害などの精神疾患の病態解明や新しい治療薬の開発に役立つことを期待しています。発表論文の詳細はこちら

 
糖鎖と幹細胞機能

 細胞膜上に発現するタンパク質や脂質の多くは糖鎖を持っています。細胞間の情報のやり取りを考えたとき、大きな空間を占有する糖鎖は、無視できないの役割を担っていると考えられます。ES細胞や神経幹細胞では、LewisX抗原という3つの糖鎖からなる構造が、未分化性と深い関わりのあることが知られていました。私たちは、幹細胞におけるLewisX抗原の生合成に関わる新規α1,3-フコース転移酵素遺伝子 Fut10 を同定し、この遺伝子の過剰発現系やノックダウンを用いて機能を解析してきました(J Biol Chem 2013)。今後はさらに、幹細胞の未分化性(stemnessと呼ばれる)に関与するLewisX抗原含有糖タンパク質を同定し、LewisX抗原の有無によってタンパク質の機能がどのように修飾されるのかを解明していきたいと考えています。糖鎖に関連する発表論文の詳細はこちら




 

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