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弁膜症、心筋症、心筋炎、
心臓腫瘍、先天性疾患について

心臓弁膜症

心臓弁膜症とは、心臓にある大動脈弁・僧帽弁・三尖弁・肺動脈弁の4つの弁のうち、一つあるいは複数に不具合が起き、その機能が損なわれる病気です。心臓弁膜症には大きく2つのタイプがあります。弁が開きにくくなり血液の流れが悪くなる狭窄症と、閉じにくくなり血流が逆流する閉鎖不全症です。

主な原因

  1. 先天的なもの
  2. 動脈硬化
  3. リウマチ熱など

しばらくは無症状であることも多く、息切れを感じても高齢者は「年だから」と勘違いして病気を見落とすこともあります。その間にも悪化するにつれ心臓のポンプ機能が低下し、動悸や呼吸困難、むくみといった心不全を引き起こします。

診断方法

  1. 心臓エコーで弁の開閉の状態を把握
  2. 定期的な経過観察

軽傷のうちは内服薬で良い状態を維持できますが、重度になると手術が必要となります。手術方法としては、弁を取り替える弁置換術、縫い縮めたりして作り変える弁形成術のほか、血管から新しい弁を挿入して留置するTAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)など、胸を開いて心臓をとめることなくできる治療もあります。

高齢化社会の中、心臓弁膜症の患者さんは増加傾向にあります。心臓弁膜症は自然に治ることはないので、進行・重症化する前に早期の診断と治療をすることがとても大切です。

感染性心内膜炎

感染性心内膜炎は、血液中に入り込んだ細菌が心臓の弁や心膜に感染し、疣贅(細菌の塊)が形成されることで弁の機能不全などが引き起こされる病気です。健康な心臓に細菌などが感染することはまれですが、心臓弁膜症や先天性心疾患、人工透析をしている方、人工弁置換術後の方などが発症しやすいと傾向にあります。また、抜歯ななどの歯科治療や歯周病により発症することもあります。血液に入ってきた細菌が弁に付着して形成された疣贅によって長時間にわたり炎症が続き、弁を破壊していきます。また、細菌が血流にのって全身に広がると敗血症を引き起こすこともあります。典型的な症状としては持続する発熱です。また、弁が破壊されることによる心不全症状として息切れなどが見られます。

診断方法

  1. 血液検査
  2. 心エコー検査

治療方法

  1. 適切な抗生剤の長期投与が必要
  2. 壊れた弁を切除して人工弁に取りかえる弁置換術
  3. 弁の形を整える弁形成術

抗生剤治療で効果が少ない場合や弁破壊による心不全がある場合、疣贅による塞栓の危険性が高いと判断された場合は、壊れた弁を切除して人工弁に取りかえる弁置換術、あるいは弁の形を整える弁形成術が必要になります。

長引く発熱があるとき、肺炎などと間違われるなど心臓弁膜症は診断が難しい病気といえますので、心臓を専門とする医師による診断が大切です。

また、歯科治療や歯周病による感染性心内膜炎を防ぐために、日頃から口の中を清潔に保ち、歯周病予防に努めることも大切です。

心筋症

心筋症とは、心筋が損なわれ、血液を全身に送るポンプ機能が低下する病気です。

心筋症には次の2つがあります。

続発性心筋症

心筋梗塞や弁膜症など他の心臓病に引き続いて起こるなど原因がはっきりしている。

特発性心筋症

はっきりとした原因がわからない。

  1. 肥大型心筋症
  2. 拡張型心筋症

特発性心筋症に、肥大型心筋症と拡張型心筋症などがあります。

肥大型心筋症

心筋が肥大して左心室の拡張機能が低下する病気です。症状としては息切れ、動悸、めまい、失神などです。

拡張型心筋症

心筋が拡大して左心室の収縮力が低下する病気です。症状としては呼吸困難などです。一部は進行性で心臓移植が必要になるような重症なタイプもあります。

診断方法

  1. 胸部レントゲン検査
  2. 心電図検査
  3. 心エコー検査
  4. 心臓カテーテル検査
  5. 心臓MRI
  6. 心臓CTなど

治療方法

  1. 薬による対症療法が中心
  2. 手術療法

薬によるコントロールで生活の質を落とさず、上手に付き合っていける場合もあります。またそれに加えて手術療法が検討される場合もあります。

先天性心疾患

生まれつきの心臓の構造が通常と異なることによる心疾患の総称です。赤ちゃんの頃に診断され大人になって治療が行われる場合や、大人になってから不整脈や心不全症状などを契機に診断される場合、手術後長年経過してから症状が現れる場合などがあります。

成人にみられる先天性心疾患には次のようなものがあります。

心房中隔欠損症

右心房と左心房を分けている壁である心房中隔に穴が開いている状態

心室中隔欠損症

右心室と左心室を分けている筋肉の壁である心室中隔に穴が開いている状態

動脈管開存症

出生後に閉じるべき動脈管がうまく閉鎖せず残存した状態

ファロー四徴症

胎児期に肺動脈と大動脈を分ける壁がうまく形成されなかったことにより、心室中隔欠損・大動脈騎乗・漏斗部および肺動脈の狭窄・右室肥大の4つの特徴を持つ

子供の頃は無症状で、学校検診などで指摘されて経過観察とされていた場合でも、加齢とともに呼吸困難や動悸などの心不全症状が出現してくることがあります。

治療方法

  1. 薬物治療
  2. 穴を縫い合わせたり、穴にパッチを縫い付けたりする手術療法
  3. カテーテル治療など

疾患の種類や重症度に応じて治療が異なるため、心臓の専門の医師の診察と適切な治療を受けることが大切です。

心臓腫瘍

心臓腫瘍とは心臓にできる腫瘍で、比較的まれな病気です。良性腫瘍と悪性腫瘍があり、良性腫瘍の代表例は粘液腫と呼ばれるものです。悪性中皮腫、悪性リンパ腫など心臓から腫瘍ができる原発性悪性腫瘍と、他臓器の悪性腫瘍が心臓に転移して起こる転移性心臓腫瘍があります。 症状としては、発熱、体重減少、倦怠感、ふらつき、めまい、失神などです。検査には心エコー検査、心臓CT、心臓MRIがあります。 また、腫瘍の正確な組織診断には、切除して初めて診断に至る場合もあります。治療法としては、良性腫瘍の場合、腫瘍に対する有効な薬剤は現在のところないので、腫瘍を切除する手術が有効です。

心筋炎

心筋炎とは心臓の筋肉に炎症が発症した状態で、軽症のものから、心臓のポンプ機能が低下する心不全や致死的不整脈を発症する重症例まで様々です。経過や重症度に応じて慢性・急性・劇症型に分類されます。

急性心筋炎の原因

  1. ウィルス感染症
  2. 細菌、真菌、薬物、膠原病などの病気など様々

急性心筋炎の原因で、特に多いとされるのがウィルス感染症をきっかけに発症する場合です。

初期の症状

  1. 発熱や咳、喉の痛みといった風邪症状
  2. 腹痛、下痢などの胃腸症状
  3. 倦怠感
  4. 吐き気など
進行すると呼吸困難や血圧低下、動悸、失神などが現れます。

急性心筋炎の検査

  1. 血液検査
  2. 心電図
  3. 胸部レントゲン写真
  4. 心エコー図検査
  5. 心臓カテーテル検査
  6. 心筋生検等

急性心筋炎の治療

  1. 人工呼吸器
  2. 大動脈バルーンパンピング(IABP)
  3. 経皮的心肺補助装置(PCPS)
  4. 人工心臓(LVAS)

非常に短い時間の中で劇的に症状が悪化する劇症型の場合には、急激に心臓ポンプ機能が低下し、発症後数時間から数日で全身状態が悪化します。迅速な治療を必要とします。

心筋炎はウイルス感染症をきっかけとして発症することが多いため、現れる症状は風邪の症状や胃腸炎症状など、判別しやすい症状がみられないことも多く、専門医による診察、検査による早期診断が重要です。

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