〒520-2192 大津市瀬田月輪町
滋賀医科大学
生化学・分子生物学講座
分子病態生化学部門 
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過去のメッセージ

令和5年4月

当Webサイトを見に来て頂きありがとうございます。当研究室の最新の成果や研究内容についてご紹介したいと思います。

昨年度も留学生の方々が、研究室のスタッフと共に頑張ってくれて研究成果を出すことができました。バングラデシュから文科省国費留学生として来日しているMd Rasel Molla君が、筆頭著者として単量体GTPアーゼRhoAの血管平滑筋での新たな作用を突き止めてくれ、Commun Biol誌(Molla MR, et al. Commun Biol. 2022; 5: 1071)に発表することができました。血管平滑筋でRhoAが欠損すると、大動脈瘤ができやすくなることをマウスのみならず、ヒトでも示すことができました。この3月には、無事学位、博士(医学)を取得しました。今後は米国NIHで研究を続ける予定です。

同様に、マレーシアから文科省国費留学生として来日しているJoanne Ern Chi Sohさんは、心臓でのRhoAの作用を研究し、心筋細胞でRhoAが欠損すると、心臓老化が急速に進行することを発見しました。これもマウスおよびヒトで実証することができました。本研究成果はJ Biol Chem誌(Soh JEC, et al. J Biol Chem. 2023; 299: 102993)に掲載されると共に、日本循環器学会にて国際留学生YIA最優秀賞を受賞しました。当研究室から国際留学生YIA最優秀賞は2年連続での受賞です。

 RhoAの心血管系における作用機序の研究は今後も引き続き行っていく予定です。循環器疾患では、これ以外にもトランスレーショナル研究を目指してカニクイザルを用いた解析も行っています。例えば、低密度リポタンパク質(LDL)受容体欠損症は、若年時から高度な動脈硬化、心臓を栄養する冠動脈が狭窄・閉塞する狭心症・心筋梗塞が生じる難治性の脂質異常症を引き起こしますが、カニクイザルでCRISPR/Cas9ゲノム編集によりそのモデルの作出に成功しています。現在、論文を投稿し、投稿先科学誌からの要望により論文修正を行っているところです。今年度中には、論文を公表できる予定です。また、抗がん薬ドキソルビシンは、優れた抗がん作用を持つものの、心毒性があり、投与量が制限されています。このドキソルビシン心筋症に対する新たな治療戦略もカニクイザルを用いて検討しています。

さらに、以前より行っているがん微小環境、浸潤・転移に関する研究も継続・発展させていきたいと考えています。具体的には、男性での罹患率が最も多い前立腺がんに着目し、このがんが浸潤・転移して難治性となる場合の分子メカニズムや対処方法の検討です。前立腺は全体として比較的予後が良いがんであるものの、遠隔転移などがあると極端に予後が悪くなります。その格差が大きいため、問題となることがしばしばあります。当研究室で見出したがんを抑制する分子ストマチン(Rahman NIA, et al. Cancer Res. 2021; 81: 2318-2331)を中心に今後解析をしていく予定です。

おそらくどの研究室でも大学院生が研究を進める最も大きな原動力になっていると思います。当研究室では海外・国内を問わず大学院生を受け入れています(現在、海外からの留学生がやや多い)。当研究室の研究に興味を持っていただけましたら、いつでもメール(E-mail: hqbioch2@ “@以下に belle.shiga-med.ac.jpをつけて下さい”)でコンタクトを取っていただけたら幸いです。研究室の見学希望も大歓迎で随時受け付けています。どうぞよろしくお願い申し上げます。  

 

 令和5年4月

扇田 久和

 

令和4年4月

昨年度は当研究室としてうれしい実績がいくつか出ました。マレーシアから文科省国費留学生として留学していた大学院生が、昨年度学位を取得した大学院生の中で最優秀の論文を発表したとして学長賞を受賞しました。本学の研究医養成コースに入り当研究室で研究を行ってくれていました学生さんが研究成果を発表し、学長より養成コース修了証を受領しました。さらに、バングラデシュから来日している文科省国費留学生の大学院生が、3月12日に行われました日本循環器病学会国際留学生YIA発表会での優れた発表により、見事、YIA最優秀賞に輝きました。それぞれの大学院生、医学部生の方々、誠におめでとうございます。

一方、カニクイザルを用いた研究では、家族性高コレステロール血症(FH)の原因となる低密度リポタンパク質受容体を欠損した遺伝子改変サルを作製することに成功し、特許を出願しました(特願2021-135524)。ホモFHは幼少期から重度の高コレステロール血症により、通常は生活習慣病などが原因で中年以降に発症する冠動脈疾患などの重篤な心血管障害を若年で発症し、治療に難渋します。厚労省の難病にも指定されています。今後はこのカニクイザルモデルを用いて、出来れば製薬会社などと共同で新たな治療法を開発していきたいと考えています。

本年5月には、私が例会長を務めます第68回日本生化学会近畿支部例会を本学で開催致します。新型コロナウイルスが蔓延している間の学会は、ほとんどがWeb学会になっていました。Web学会では遠方の学会場に出向くことなく研究室や自宅から学会の講演を聴けるなどのメリットはありますが、人と人とのつながりが薄くなってしまったように感じます。現在、新型コロナウイルス感染状況はやや下火になっているようですので、これが再燃しないことを期待して、支部例会は本学での現地開催をメインとする予定です。一方、上記のようなWeb学会のメリットもありますので、Webの併用も致します。

毎年申し上げていますが、本研究室では大学院生(博士課程)を随時募集しています(案内はこちら)。研究室の見学も歓迎です。昨今、大学院博士課程に進学する学生は全国的に減少しておりますが、当研究室では大学院生を受け入れられる余地がありますので、当研究室の研究に興味を持たれた方は是非連絡を頂けたらと思います。


 令和4年4月

扇田 久和

令和3年4月

滋賀医科大学で2011年4月に研究室を立ち上げてからちょうど10年が経過しました。この間様々なことがございましたが、研究室を継続してこられたのも研究室メンバーの協力と関係者の皆様からのご支援のお陰と存じます。まずはじめに厚く御礼申し上げます。

当研究室では、循環器疾患およびがんの病態に関するシグナル伝達研究を大きな柱にしております。マレーシアから文科省国費留学生として来日している大学院生のがんばりにより、がんの増大・進展を抑制する細胞内分子として「ストマチン」を見出し、その抗腫瘍メカニズムを明らかにしました。本成果は本年3月にCancer Research誌に公表でき、プレスリリース記者説明会も行いました。今後この成果をさらに発展させ、様々ながんに対するストマチンの抗腫瘍作用機構を解明しつつ、トランスレーショナル研究を目指していきたいと考えています。

循環器疾患領域では、高血圧を引き起こすホルモンであるアンジオテンシンIIを分解する酵素DPP3について、本年2月、高血圧治療に向けた特許を取得することができました(発明の名称:高血圧の予防又は治療用医薬[特許6831128号])。また、以前より研究を進めていますRhoファミリー単量体GTPaseシグナルの心血管系に対する作用機構について興味深い結果が得られました。近いうちに論文化していきたいと思います。さらに、本学の独自研究の1つであるカニクイザルを用いた研究に関して、マウスなどの小動物では解析が困難な生活習慣病、心不全のメカニズム解析と新規治療開発に向けた試みを続けています。

本年度4月から、当研究室の研究者(今後、大学院に進学予定)が増え、この様な時期ではありますが、6月〜10月にかけてさらに海外から研究者が来日する予定で準備を進めています。本HPのメンバー紹介欄をご覧頂けましたら分かりますように、大学院生はほとんどが海外からの留学生です。日本人の大学院生を断っているわけでは全くなく、全国的に日本人の博士課程大学院進学は減少しているようです。この様な状況となっている原因として、大学院生への経済的サポートの小ささや博士の学位取得後のキャリアパスの難しさなど様々な要因が考えられると思いますが、そのまま放置しておくと日本の基礎(医学)研究は衰退し、今後大きな問題になると思います。政府、文科省には、実用的応用研究のみならず基礎研究への支援も増やして頂けることを期待したいと思います。本研究室では大学院生(博士課程)を随時募集しています(案内はこちら)。

今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。

 令和3年4月

扇田 久和

 

令和2年4月

現在、全世界で新型コロナウイルス感染(COVID-19)が蔓延しており、日本でも感染者数が日々増加しています。社会生活にも大きな影響を及ぼしており、本学でも入学式は中止され、授業の開始が延期されました。COVID-19に対する候補治療薬の検討、新規治療薬およびワクチンの開発が鋭意進められています。一方、COVID-19が、現時点で、重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)ほどの致死率にはなっていないものの、かぜ症候群のコロナウイルス感染症よりも重篤になる原因については不明です。また、世界の各地域においてCOVID-19による致死率に違いがありますが、このことについてもよく分かっていません。これらの不明点を解明するには、直接、患者さんの症状などを観察し解析するだけでなく、ウイルスの分子レベルでの研究、すなわち、基礎医学的な研究が必要です。当研究室ではウイルスに関する直接の研究は行っておりませんが、基礎研究の成果は思わぬところで別の研究に結びついたり、役に立ったりすることが良くあります。コロナウイルスを含むウイルスのヒトへの感染には、ウイルスのタンパク質とヒトのタンパク質との結合が重要です。様々なタンパク質の性質やその設計図となる遺伝子解析などの生化学的な解析は当研究室でメインで行っているもので、それをこれからも継続して行っていきます。

当研究室ではこの1年間に2人の博士課程大学院生を迎えました。1人はマレーシアからの文科省国費留学で昨年秋に入学しました。約半年間、熱心に心臓の機能に関する研究を進め、既に興味深い結果が得られてきました。さらに研究を発展させられるようサポートしています。4月からは、以前より国内で生活していましたベトナムからの留学生が入学しました。ベトナムでは循環器を中心とした内科医師として働いていましたので、その知識と経験を活かしつつ基礎医学に関する研究を始めてもらい研究成果が挙がることを期待しています。

昨年度は、業績集にありますように、心血管系疾患の基礎研究に関する成果(FASEB J、Sci Repなど)、がんの浸潤・転移に関する総説(Cancers)を公表することができました。研究成果の一部はプレスリリースも行っています。これらは当研究室のスタッフ、大学院生の頑張りの賜物です。上述のように、本年度はCOVID-19の世界的な広がりという大きな問題がありますが、地道な研究活動の継続が大切だと思います。大学院生(博士課程)は引き続き随時募集(案内はこちら)しております。若手の大学院生・研究者とベテランスタッフが協調し、相互に刺激し合うことで、これからも独自の研究を高いレベルで進めていく所存です。

 令和2年4月

扇田 久和

 

平成31年4月

当研究室では、主に「循環器疾患」「がん」の生化学的解析に力を入れて研究を行っています。「がん」については、特に、がんの浸潤・転移のメカニズムに着目しています。その理由として、がん死は現在の日本で最多の死因ですが、その約90%は“がん転移”が原因であるからです。昨年度(2018年度)は、マレーシアから来日して大学院生として研究を行ってくれましたKhusni君が、共同研究者の方々の協力を得て、EMP1という分子が、がんの浸潤・転移を促進することとその分子メカニズムをOncogene誌(論文はOpen Accessです)に報告しました。この成果は新聞やテレビニュースでも取り上げて頂きました。Khusni君(と研究スタッフ)の頑張りにより早期に研究成果がまとまり論文を公表できたことで、Khusni君は通常4年かかる大学院博士課程を3年で修了し、博士(医学)の学位を取得することが出来ました。これは、滋賀医科大学で2人目の快挙です。改めてKhusni君の学位取得をお祝いすると共に、今後の活躍を期待したいと思います。EMP1以外の別分子についても、がん細胞の性質を制御する非常に興味深い結果を得ています。さらなるメカニズム解明を行い、その結果を基にした臨床応用が可能になればと考えています。

「循環器疾患」に関しては、元々私は循環器専門医として臨床に従事していたこともあり、動脈硬化、心不全、不整脈と幅広く当該領域の基礎研究を行っています。動脈硬化、心不全について、モデル動物としてマウスを用いるだけでなく、ヒトに近い霊長類カニクイザルを活用した研究を行っています。滋賀医科大学は、多くのカニクイザルを飼育しており、それを研究に利用できる大きな特色があります。昨年度は、心不全モデルカニクイザルの作製に成功し、CRISPR/Cas9ゲノム編集技術を活用した脂質異常症動脈硬化モデルカニクイザルが出生しました。今後、これらのサルモデルを用いて動脈硬化、心不全に関する詳細な分子メカニズムを解明していく予定です。さらに、共同研究などを通じて出来るだけ多くの研究者、企業にサルモデルの有用性をアピールしていきたいと考えています。不整脈研究では、若年者の突然死に関わるブルガダ症候群の遺伝子解析を学内・学外の研究者の方々と共同で行っており、新たに見出した遺伝子変異について学会で発表し、論文にまとめているところです。

今年度は当研究室のスタッフで人事異動があり、若い人材が入ってきてくれました。若い柔軟な発想で、力強く研究を進め、新たな時代を担える人材に育って欲しいと思います。昨今、基礎医学研究を実施する環境が資金・人材を含めて難しくなってきていると感じますが、オリジナリティーの高い研究成果を出すことで、この困難な環境を乗り越えていきたいと考えています。その中心となってもらえる大学院生を随時募集しています(募集方法はこちらです)。今年度もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 平成31年4月

扇田 久和

 

平成30年4月

昨年度(2017年度)より当研究室での新たな試みとして、カニクイザルを用いた循環器疾患/生活習慣病の研究に取り組んでいます。滋賀医科大学は霊長類のカニクイザルを基礎医学実験に利用できる日本(世界的に見ても)有数の研究施設です。具体的には、(1)心不全モデルの作製、(2)脂質異常症モデルの作製を、動物愛護に十分留意しつつ行っています。特に、(2)のモデル作製には、動物生命科学研究センターのご協力の下、最新の遺伝子改変技術を活用して研究を進めています。

基礎医学実験ではこれまで、哺乳類での個体反応を見るために、マウスをモデル動物として使用することが多く行われてきました。マウスは個体サイズが小さいこと(時として、短所にもなりますが)、ライフスパンが短いこと、10匹前後の多数の胎仔を妊娠できることなどから、実験動物として扱いやすいのがその理由として考えられます。しかし、マウスで見られた反応や実験結果について、トランスレーショナル研究としてヒトへの応用を目指す際には、十分注意する必要があります。例えば、血行動態(特に、脈拍数)や脂質代謝システムは、マウスとヒトでは大きく異なります。このようなことが、基礎研究の成果を臨床応用するのにしばしば非常な困難をもたらしている原因(いわゆる"Death valley")につながるのではないでしょうか。

この困難を解決する一つの手段として、ヒトに近い霊長類を実験モデル動物として使用することは有用であると思われます。上記(1)、(2)のモデル動物作製は世界初の試みでもあり、サイエンスとしても大きな意義があると考えています。マウスをモデル動物として用いる場合と逆の短所はあるものの、カニクイザルでのモデル動物作製に成功できれば、新規候補薬の前臨床における最終的な作用効果確認や安全性確認などに大きく貢献できることが期待されます。
 このような新しい試みに、是非、若い研究者の方と一緒に取り組んでいけたらと考えています。現在、当研究室には海外から来日した大学院生、ポスドクが研究に励んでくれていますが、国内からの大学院生、ポスドクも入ってきて頂きたいと強く思っています。本学大学院への応募方法はこちらをご覧ください。直接のお問い合わせも歓迎致します(連絡先は、左記ご覧ください)。今年度も、本学の研究環境の特長を活かして、本研究室独自の研究を推進していく所存です。

 平成30年4月

扇田 久和

平成29年4月

中国から海外客員研究員として来日し、本学の大学院博士課程を修了したPang Xiaolingさんが、2017年3月に晴れて医学博士を取得することが出来ました。Pangさんは私が本学に着任して研究室を立ち上げてから最初の大学院生です。心から博士号の取得をお祝いしたいと思います。

昨年度1年間の主な研究成果を振り返ってみますと、Pangさんとスタッフが協働して研究していたペプチド分解酵素ジペプチジルペプチダーゼIII(DPP III)の高血圧に対する効果や、Zankov特任助教が中心となって解析していた心筋細胞介在板に存在するアファディンの心不全に対する作用機構をそれぞれ解明できました。これらは欧米の有力科学専門誌に掲載され、学内のシンポジウム発表で最優秀賞(若鮎賞)を獲得するなど、研究室全体のアクティビティーは上がってきています。それぞれの研究内容についてはプレスリリースも行い(こちら)、NHKのニュースや新聞の報道でも取り上げてもらいました。

本年度はこれらの成果を更に発展させ、生活習慣病やがんに関する基礎研究を着実に前進させていきたいと考えています。特に、生活習慣病関連では、本学の特色研究リソースであるカニクイザルを用いた研究を新たに行っていく予定です。動脈硬化の進展や心臓の機能に関して、マウスなどの小動物と、霊長類のヒトやサルとでは大きく異なっている点もあり、今後、トランスレーショナル研究や臨床応用を視野に入れた場合、霊長類での実験結果は非常に重要なものになります。動物生命科学研究センターの協力を仰ぎながら、世界初の遺伝子改変生活習慣病モデルサルの作製にも取り組んでいきます。

引き続き、大学院生、研究生を募集しています。上記の研究あるいはこちらの研究に興味のある方は是非ご連絡を頂ければと思います(メールは、hqbioch2 以下、@belle.shiga-med.ac.jpをつけて下さい)。随時相談を受け付けています。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 平成29年4月

扇田 久和

平成28年4月

本研究室(分子病態生化学部門、旧:生化学II)は、当大学の開学4年後の昭和54年に開設されました。この開設時より37年間、本研究室で教育・研究に携わってこられました上山久雄先生が3月末で定年退職を迎えられました。本当にお疲れ様でした。4月からは、新しく佐藤朗先生が大阪大学より准教授として着任されました。

私が本研究室に赴任してから5年が経ち、教室のスタッフは順次全員が入れ替わって、本年度からは新しい体制で生化学の研究・教育を行っていくことになります。ある意味で、節目の年になります。昨年度は、大学院生のPang Xiaolingさんが、日本循環器病学会の国際留学生YIAを受賞するなど、最近の研究成果が評価されつつあります。これもひとえに、スタッフの先生方の頑張り、サポートの賜物と思います。YIA受賞研究を含め、現在、複数の論文を投稿中ですが、これらを一つずつ確実に、ジャーナルにアクセプトされるようにして行く予定です。また、4月からの新大学院生としてKhusni Aminさん(文科省国費留学生)が入ってくれました。私が赴任した当初と比べると研究室内の人員が少しずつ増えています。これらの仲間と共に研究をさらに発展させていく所存です。

当研究室のメイン研究テーマは、「循環器」と「がん」の領域です。現在の日本で、がん、循環器疾患で亡くなられる方は、それぞれ総死亡数の30%弱を占め、2大死因ともいえます。高齢化に伴いこれらの疾患に罹患される方は年々増加しています。したがって、がんや循環器疾患に対する研究は非常に大きな意義があります。いわば、“研究し甲斐”のある分野とも言えます。

これらの研究領域の基礎医学研究に興味のある方は、是非、一度研究室に訪ねてきて頂ければと思います。メール(hqbioch2 以下、@belle.shiga-med.ac.jpをつけて下さい)でのご相談も受け付けています。まずは気楽な気持ちでコンタクトを頂ければ幸いです。

本年度もどうぞよろしくお願い申し上げます。

 平成28年4月

扇田 久和

平成27年4月

この4月で、医学部卒業後働き始めてからちょうど20年になりました。また、私が滋賀医科大学に赴任して丸4年になりますが、1つの大学・施設に4年以上在籍したのはこれが初めてです。医師・研究者の世界は流動性が高いことが多いですが、このことを身を持って体験してきました。これからは少し腰を落ち着けて研究・教育に携わっていきたいと考えています。
 以下は、昨年(2014年)11月号の滋賀県医師会報『私のコーヒーブレイク』欄に寄稿した一文です。滋賀県医師会より転載許可を頂きましたので、本年度のメッセージとして載せたいと思います。


基礎医学について想う

医学部卒業後は内科(循環器内科)の臨床に従事しておりましたが、紆余曲折があり現在は、「生化学」の研究と教育を行っています。縁があり、約3年前より滋賀医科大学で勤務しております。医師会に所属の先生方のほとんどは臨床医でいらっしゃると思いますので、私の立場は少し異色かもしれません。そのような立場もあり、これまで医師会の活動にほとんど貢献できておらず、申し訳ない気持ちでおります。この度、本欄に寄稿する機会を頂きましたので、個人的な感想・意見が多分に入っていますが、生化学を含めた基礎医学の研究と教育の現状の一部を述べたいと思います。
 生化学と言いますと、糖や脂質などの代謝に関する難しい化学式がたくさん出て来て、取っつきにくい嫌な科目だ、というのが昔も今も変わらない大多数の医学生の印象かもしれません。実際、私も恥ずかしながら、医学生の時は生化学の講義に挫折し、代謝マップの暗記は試験直前に無理矢理という状態でした。何とか試験に合格し、これで難しい化学式とは一生おさらばできると思っていました。それが、今では曲がりなりにも生化学を教える立場になっているのですから、世の中何が起こるか分かりません。この様な経験を踏まえて、講義では極力化学式は出さないようにし、出来るだけ、生化学を臨床の病態・疾患と近づけて話をするようにしているのですが、学生達の様子を見ていると、“難しいなあ”という雰囲気の顔に多く出会うので、まだまだ改善の余地ありかと考えさせられます。
 昨今のSTAP細胞騒動以来、基礎研究が何かと注目を集めています。この騒動の問題点については今回は触れませんが、世間から見れば、研究は曖昧さの入る余地の全くないものと考えられがちですが、実際のところはそうでないことがほとんどです。得られた実験結果からどのように結論を出すかについては、しばしば悩まされます。Aという結果からはCという結論になるが、そうすると、Bという結果と合わない・・・などということが日常的に起こってきます(この辺り、診療で患者さんの症状全てに合致する診断が付けられない時のもどかしさに似ているようにも思います)。歴史的に見ても、メンデルは自分の仮説に合わない結果を切り捨てて遺伝の法則を導き出したと言われています。研究をやっていくには、どこかで物事を割り切って前に進める突破力も大切かもしれません。
 近年、マスコミなどの影響もあり、華々しい研究に大型の研究予算がつき、それ以外の研究での予算の獲得が難しくなっていることや、アカデミックポストの減少などによる身分・経済的な不安定さから、地道な基礎研究に対する“お金”、“人”共に極めて厳しい状況になっています。この様な現状ではあるものの、たとえ小さなことでも世界で初めて“発見”できたり、“証明”できたりすることが基礎研究の醍醐味です。すぐには役立たない“発見”や“証明”かもしれませんが、将来、臨床応用などに大きく発展していく可能性を夢見て、今後も基礎研究の研鑽に励み、“発見”や“証明”を積み挙げていきたいと思います。

平成27年4月

扇田 久和

平成26年4月

本年度よりスタッフの一部が入れ替わり、研究室が新しい体制になりました。研究室および研究者個人の活性化のためにも、人員の適度な流動性は好ましいと考えています。また、医学部学生1名が登録研究医として当研究室に所属することになりました。本学の研究医養成コースの登録研究医についてはこちらをご覧下さい。医学部の講義・実習は全て必修であり、毎日、朝から夕方までぎっしりとカリキュラムが組まれています。その上で、医学研究にも取り組もうという意欲は素晴らしいものです。今後どのような道を進むにしても、医学・医療分野で仕事をする限り、研究(少なくともそのマインド)は必須のものであると思います。

「研究紹介」ページにも記載しておりますが、当研究室では「循環器疾患」「がん」に関連するシグナル伝達を中心とした基礎研究を行っています。昨年度は、少ないながらも当研究室が主体となった論文を報告することが出来ました。本年度は、上にも述べましたが、研究室の体制が新しくなったこと、また、研究室の設備・環境についてもほぼ整ってきたことより、さらに研究活動を活性化していきたいと考えています。「メンバー紹介」欄をご覧頂きましたら分かりますように、当研究室の規模は大きくありません。その意味で、私を含めた研究室メンバーの一人ひとりが全力で仕事をすると共に、当研究室ではカバーできない研究内容については、大学内外の他の研究室との共同研究を積極的に進めています。

最近、基礎医学研究分野では人材の減少が問題となっています。その背景は単純ではないと思いますが、一因として、基礎医学研究の魅力が十分に伝わっていないのかもしれません。講義中を含め、機会があるごとに、基礎医学研究の魅力・必要性を説明していきたいと思います。当研究室は医科大学の中にあることを生かして、研究のための研究ではなく、医学・医療の発展の基盤となる基礎医学研究を今後とも目指したいと考えています。「循環器疾患」「がん」の研究に興味を持っておられる、特に、大学院進学を希望しておられる方は、是非、お気軽に左記の当研究室の連絡先までご連絡下さい。

平成26年4月

扇田 久和

平成25年5月

本研究室も私が赴任してから、3年目に入りました。昨年度のメッセージでは、「現在行っている研究プロジェクトをよりスピードアップして進展させていきたいと考えています」と述べましたが、実際、昨年度には本研究室から複数の論文を発表することが出来ました。また、学会発表も頻繁に行っており、研究プロジェクトは着実に進展させていくことが出来ている思います。このような成果を上げられたのも、研究室スタッフの皆さんの努力のお陰と感謝しております。

また、SUMS(滋賀医科大学Shiga University of Medical Scienceの略)プロジェクトの一環として、本学と国際交流協定を締結している中国医科大学から海外留学生が昨年11月に来日し、本研究室で研究を行っています。本年度から大学院生となり、さらに研究を続けてくれることになりました。私が本学に赴任してから最初の大学院生です。大学院生の間に研究を完成させ、無事学位を取得して欲しいと考えています。

研究室内の老朽化した実験設備・機器についても昨年度、かなりのものを入れ替えました。最新の実験機器もいくつか導入しました。ハード面における研究室内の充足度はほぼ十分になったのではないかと自負しております。今後はこれらの機器を用いて、さらに研究の質の向上も目指したいと思います。

本研究室では、当ホームページの“研究紹介”欄にもありますように、「循環器」「がん」領域を中心にチャレンジングなテーマで基礎研究を行っております。その研究キーワードは、「細胞接着」「シグナル伝達」「遺伝子解析」です。このような研究に興味を持っておられる方の参加を是非お待ちしております。本研究室の規模はそれほど大きくありませんが、スタッフは皆、経験豊富ですので、大学院生・研究生で基礎研究の初心者の方には、基本からきめ細やかにサポート致します。昨年度からは文科省のサポートのもと、本学において医学部生を対象とした研究医養成コースがスタートしました。医学部生にとって、医学部の勉強の上に研究を行うのは大変ですが、若い間に研究マインドを持つことはこれからの医療に大いに役立つと思います。上記の研究に関心を持ってもらえましたら、気軽に本研究室を覗きに来て下さい。

今後も研究室のスタッフ一同、研究室の、ひいては、日本・世界の研究の発展に全力を尽くしていく所存です。どうぞよろしくお願い致します。

平成25年5月

扇田 久和

平成24年4月

2012年4月で私が当研究室へ赴任してから1年が経ちました。この度、当研究室のホームページをリニューアルすることになり、このメッセージ欄も更新することに致しました。この1年間は、学生講義・実習への対応、新たな研究プロジェクトの立ち上げ、研究室内の整備など多くの作業がありましたが、研究室スタッフ皆さんの多大な協力により比較的スムーズにこれらの作業を行うことが出来たと思います。スタッフの皆さんに感謝を申し上げます。

さて、本年度は昨年度に築いてきました土台を足場に、現在行っている研究プロジェクトをよりスピードアップして進展させていきたいと考えています。研究プロジェクトの詳細については「研究紹介」欄に譲りますが、本研究室では、循環器疾患、がんの生化学的な病態解析をメインに行いつつも、各スタッフがそれぞれ興味を持って進めている研究課題についても出来るだけサポートしていきたいと思います。これまでの医学研究の歴史から見ても、研究の芽はどのようなところから大きく成長するか分かりません。生命医科学研究の範疇から外れない限り研究の裾野は広い方が良いと考えています。

本年の2月および4月から、新しく特任助教の研究スタッフが当研究室での研究に加わってくれました。昨年から、少しずつ研究室の人員も増えてきておりますが、まだまだ若い医師の先生方、大学院生の方の参加がなく、随時募集しております。昨年度のメッセージ欄にも同様のことを書きましたが、これからますます基礎医学研究の重要性は高まってくると思います。当研究室の研究に興味を持たれた方は、是非気軽にご連絡を頂けましたら幸いです。

当研究室は本大学の開学に近い頃より存在しますが、上述のように、私が赴任してから1年しか経っていないという意味では駆け出しの研究室であると考えられます。これから当研究室に入って来られる方には、現スタッフと共同して研究室を主体的に作っていくという面白さが体験できると思います。このようなことは、古い研究室や大規模な研究室では体験できない貴重なものです。皆さんと一緒に新たな研究室を作り、新たな研究成果を世に出していきたいと思っています。多くの方の参加をお待ちしています。

平成24年4月

扇田 久和

部門長メッセージ−滋賀医科大学分子病態生化学部門着任にあたって

平成23年4月より、本講座を主宰することになりました。本講座は昭和54年に生化学第二講座として本学に設置され、その後、分子病態生化学と名称変更し、現在に至っております。

私は平成7年に大阪大学医学部を卒業後、内科および循環器内科の臨床医療に携わっておりましたが、大学院入学以後は動物モデルを用いた虚血心筋や心不全の生理学的・薬理学的研究、低分子量Gタンパク質を中心としたシグナル伝達機構の研究、および、細胞接着に関する生化学的・細胞生物学的研究といった基礎医学研究に従事して参りました。

今後は、これまでに行ってきたことを基盤に、現代日本の主要な死因であるがん、心血管疾患をターゲットとして、新たな角度からこれらの病態の解明および新規治療の開発に向けた基礎医学研究に取り組んでいきたいと考えています。

私自身、医学部卒業後は臨床医の道を歩んでおりましたが、大学院で基礎医学に触れ、その研究で得られる新たな発見や面白さ(時に、厳しさ)を経験できたことが、その後、基礎医学研究を継続していくきっかけになりました。これまで基礎医学研究を行ったことのない臨床医の先生方には、是非、基礎医学にも目を向けて頂きたいと思います。一度、基礎医学研究を体験することでその醍醐味が味わえると思います。また、数年間その体験を積むことで研究マインドを体得でき、今後、臨床医に戻ってもこれまで以上に広い視野を持てるはずです。

現在、本講座は私を含め総勢5名の小さな所帯ですので、これから新たに当研究室に来られる方には、基本からきめ細やかな指導が行えます。また、本講座は医学部の中にありますが、基礎医学研究の展開には多様なバックグラウンド人材、ユニークな発想を持った人材が必要と考えておりますので、医学部以外の理系学部出身の方の参加も大いに歓迎致します。

最後になりましたが、いろいろな物事を行うに当たって私は「人の和」が最も大切であると考えています。研究はオリジナリティーが重要ですが、研究の過程では「人の和」すなわちチームワークなくして前に進まないと思います。その意味で、本講座は小さいが故、融通が利きチームとして仕事を進めやすい環境です。若い医師の先生方、大学院生の方、我々と共に新しい基礎医学研究を始めてみませんか。

平成23年4月

扇田 久和