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滋賀医科大学
生化学・分子生物学講座
分子病態生化学部門 
TEL: 077-548-2162(研究室)
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部門長メッセージ

私が本学分子病態生化学の教授として赴任してきましたのが、東日本大震災が起こった直後の2011年4月でした。この4月で赴任後13年になります。少し先の話になりますが、無事定年まで本学に勤められるとすると後12年ありますので、研究室を主宰する期間としては折り返し地点を少し越えた時期(昨年2023年9月末がちょうど中間点でした)になります。

現在、スタッフ2名(准教授、講師(学内))と大学院生(博士課程)6名(外国人4名、日本人2名)で研究を進めておりますが、彼らの頑張りでこれまで多くの研究プロジェクトを完成させることができ、また、現在も複数の研究プロジェクトを遂行できています。深く感謝したいと思います。

昨年度のトピックスとしては、長年取り組んできました遺伝子改変カニクイザルに関する研究成果を論文としてまとめ公表できたことです(Sato A, et al. Sci Rep. 2023; 13: 15649)。具体的には、低密度リポタンパク質(LDL)受容体遺伝子の発現を欠損させたカニクイザルを世界で初めて作製でき、その解析を行いました。LDL受容体は血中脂質代謝に極めて重要な分子で、この分子の発現が欠損している疾患として家族性高コレステロール血症(FH)が知られています。FHにはLDL受容体の発現が約半分だけ減少しているヘテロ接合体と、全く発現しないホモ接合体があります。特に、FHホモ接合体では幼少期より非常に血中コレステロール値が高くなり、若くして動脈硬化が急速に進展し、心臓を栄養する血管<冠動脈>が詰まってしまう心筋梗塞など重篤な病気が起こりやすくなり、若年者の死亡もしばしば見られます。FHホモ接合体は厚労省の難病に指定されている疾患です。

FH病態モデル動物は国内外でこれまでにいくつか作製されておりますが、今回、当研究室で新規に作製したLDL受容体欠損カニクイザルは、血液検査などの結果から、難病のFHホモ接合体の病態を最も反映したモデル動物と考えられます。FHホモ接合体患者さんの治療は薬剤抵抗性で難渋することが多く、有効な薬剤の開発が強く要望されています。今後はこのLDL受容体欠損カニクイザルを活用してFHに対する新薬の開発に取り組んでいく所存です。

当研究室では、上述のようなカニクイザル研究だけでなく、細胞内シグナル伝達機構の異常によって生じる心臓病、血管病、がんの研究にも大いに注力しています。これらの研究に興味を持って従事してくれる大学院生を随時募集しています。お気軽に左記連絡先にコンタクトください。


 令和6年4月

扇田 久和

 

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